とあるドMは神を喰らう - deer

とりあえず褒めれば胸以外立派に育つ

支部長殿が他の支部へ出張に行っている間の任務は平和そのものだった。イレギュラーなアラガミが現れないことに感動したのは思い出に新しい。それをソーマに伝えれば、無言で頭を撫でられた。
そんな日々を過ごしていると、再び榊博士に呼び出される。今度はコウタとアリサと橘副隊長の四人で任務に行くことになった。あくまで普通の任務としてカモフラージュしてあるそうだが、どうも怪しい気がする。危険なことはさせないさ。そんな言葉を信じて良いのか疑わしいところであるが、任務である以上引き受けるしかないのだ。
出撃までの間に作った雪だるまにマフラーを着せる。廃寺に行くなら暖かい格好をしろとソーマに押しつけられたのだが、雪だるまの方が寒そうなので仕方ないだろう。

「ソーマに叱られるぞ?」

「その時は庇ってくれ親友」

「俺がソーマに勝てるわけねえだろ!」

私の親友は随分と頼りない。叱られたらご飯をとびきりしょっぱくしてやろう。絶対怒られますね。どうやってもソーマに怒られてしまうらしい。私より雪だるまの方が似合っていると思うんだが。そうね、この子寒そうだもの。橘副隊長だけは味方になってくれるようだった。
そんな時間を過ごして出撃する。ヴァジュラとシユウの討伐だったが、先にヴァジュラを発見したので私とアリサで奇襲をかける。活性化時に飛ばした雷球がアリサに当たりかけて思わずその間に入ったが、タワーシールドを展開する暇もなく、思い切り弾き飛ばされてしまった。
前が見えない状況で膝をついたが、どうにか立て直して前足に聖獣刀を突き刺す。痛みに仰け反ったところに一斉にバレットを叩き込めば、シユウと合流される前に倒すことが出来たが、無茶をしたことを三人から叱られ続けることになった。

「何であんな無茶するんですか!!」

「すまない」

「怪我したんだから下がれよ!!」

「すまない」

「せめて視界が元に戻るまでは休みなさい!」

「申し訳ございません」

シユウが見つかるまでひたすら謝り続ける。顔から思い切りくらったせいで顔の左側が火傷と切り傷で血まみれになってしまったようで、顔を傷つけたことを一番怒られてしまった。
橘副隊長に応急処置を受けて、引きつるような痛みに興奮しながら辺りを見れば、階段の奥で捕喰しているシユウを発見したので、両腕を結合崩壊させるべく飛びかかった。

「良いですか、シユウの腕を壊したところで空は飛べません」

千切れないだろうかと引っ張ろうとすればアリサに止められる。空に憧れない豚はただの豚なんだ。色々惜しいですけどそれも嘘ですからね。最近コウタに教えてもらったばかりの情報も嘘だったらしい。
真実はいつも一つじゃないのか...いや、真実はいつも一つだ。もうどれが正解なのか分からない。とりあえず素材を回収しようと神機を変形させたが、ここで聞こえるはずのない声でそれを止められた。

「榊博士!?」

どうしてここにと言うアリサにとにかく今は隠れて欲しいと物陰へ移動する榊博士。それに従い、建物の影に身を潜めたが、後ろから肩を掴まれた私には憐れみの視線しか送られなかった。

「説明してもらおうか」

榊博士の護衛として来たソーマに顎を掴まれる。大きなガーゼの貼られた顔では何を言っても意味がない気がするのだが、説明しなくてはソーマは離してくれなさそうだ。

「ヴァジュラの雷球を顔からくらったんだ」

「馬鹿だな」

「すまない」

顔まで傷つけてんじゃねえよ。辛そうに私の顔を撫でるソーマに返す言葉も見つからない。血の滲んだガーゼに益々ソーマの顔が険しくなった。

「さて、そろそろ時間だよ」

榊博士の言葉にシユウの残骸を見れば、白い何かがその上に舞い降りる。シユウを貪るそれに飛び出せば、綺麗な色の瞳と目が合った。

「イタダキマス」

口元や腕を赤く染めて言うのは人間の言葉だった。イタダキマシタ?過去形になったそれに首を傾げれば、相手も同じように首を傾げていた。

「ごちそうさまだ」

「ゴチソウサマダ?」

「ごちそうさま」

「ゴチソウサマ!」

真似をするように繰り返すので、正しい言葉を教えてみる。いただきます。ごちそうさま。イタダキマス!ゴチソウサマ!おお、偉いな。エライ?ああ、偉いぞ。その頭を撫でれば嬉しそうに跳ねる。
これと仲良くなるとは君たちのリーダーは流石だね。いや、肝座りすぎでしょ。少しは警戒したらどうなんです?というか、これは一体...?ちゃんと説明しやがれ。口々に話す仲間を置いてこれと呼ばれる何かと遊ぶ。

「私の研究室へ行こうか」

そう言う榊博士の後を追って、手を繋いでアナグラへと戻るのだった。

ALICE+