とあるドMは神を喰らう - deer

毒を喰らっても皿より美味い

「橘サクヤよ」

「日口エンと申します」

昨日の雨宮隊長と同じように頭を下げて自己紹介を済ませる。橘副隊長は遠距離式の神機を使うそうなので、訓練後にコウタと話したリンクバーストを実際に行うことが出来るようだ。コクーンメイデンという動き回らないが、レーザーや針で攻撃してくるというアラガミの特徴を聞きながらジープで移動する。
その針での攻撃を食らえば、ジャミングという状態になり通信機器が麻痺を起こすらしい。よし、突っ込もう、と心に決めたのはいいが、橘副隊長は衛生兵という肩書きの持ち主であるため、雨宮隊長より丁寧な処置をされてしまいそうだ。

「私が援護するからあなたは前衛で隙をついて攻撃してね」

「承知いたしました」

くれぐれも援護射撃の範囲から出ないように、との指示だったが、援護射撃の範囲が分からないのでとりあえず射線を空けることを意識しながら突っ込んでいった。
なるほど、レーザーでの攻撃は複数のアラガミの相手をしながらでは中々厄介だ。この任務はコクーンメイデン二体と聞いていたのだが、オウガテイルにザイゴートまで現れて中々愉快なことになっていた。数は数えていないが、おそらく両手では足りない数だろう。まだ大型アラガミではないだけ余裕があるようで、橘副隊長も射撃を続けているため、飛び上がりザイゴートを斬り伏せる。
捕喰を短縮してコアを回収しつつオウガテイルを喰らい橘副隊長へアラガミバレットを渡す。偶にオウガテイルの尻尾に吹っ飛ばされたり、コクーンメイデンに撃ち抜かれたりと骨折して身体に穴が空いたりしたが、手を休めることなく攻撃を続ける。

「下がって休みなさいっ!」

そんな橘副隊長の指示に背を向けコクーンメイデンに斬りかかる。このタイミングでザイゴートのヴェノムを喰らい吐血しながらコクーンメイデンに剣を立てれば、しなりと枯れた植物のように倒れたので捕喰してコアを回収した。それと同時に私の隣に撃ち落とされたザイゴートからコアを回収すれば、この辺りのアラガミは一掃出来たようで、橘副隊長の帰投指示に従って迎えの車との合流地点へと足を進めた。

「馬鹿!どうしてこんな怪我してるのに下がらないの!!」

迎えが来るまでに応急処置を、とのことで服を脱がされ叱られる。どうせなら平手打ちもオプションで付けて欲しいのだが、脇腹に空いた穴の止血の痛みだけでも満足だった。

「申し訳、ありませ、ん...」

肋骨が折れているせいか血を吐きながら謝罪すれば、謝らなくていいから黙ってて!と目を釣り上げる橘副隊長。怪我をした時の痛みに治療される時の痛みも加わるとはなんて素敵なのだろうか。ああ、幸せだ。
多少涎が混じっていそうな血を水でゆすいで回復錠を流し込む。そうか、これを飲みながら戦えばもっと効率的に痛めつけられるのか。血塗れの顔を拭ってくれている橘副隊長に、携帯品の重要性が良く分かりました、と言えば何がどういけなかったのか、素晴らしい平手打ちを食らったのだった。

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