とあるドMは神を喰らう - deer

馬鹿と不器用は同じ意味

「何なのあの子!?」

「落ち着けサクヤ」

「でもツバキさん!あの子おかしいわ!どうしてあんなに怪我してまで戦うのよ!!」

「お前の言うことは分かる。どうもあいつは自己犠牲的な戦い方をする」

新人の任務の報告を受けてみれば、予定していたコクーンメイデン二体の討伐は実際にはオウガテイル、ザイゴート、コクーンメイデン合わせて二十体程の乱戦だった。小型アラガミであることと、新人が冷静に戦いを進めていることからそのまま戦闘を続けたのはいいが、件の新人は中々問題があるようで、こうしてサクヤが取り乱している。
先日のリンドウとの任務でもそうだったが、この新人はアラガミの攻撃を避けない。それどころか、攻撃態勢のアラガミに突っ込み、攻撃を受けてもなおアラガミを沈黙させるという。

「肋骨の骨折に脇腹に穴、その他全身に切り傷か。むしろ傷がない場所を探す方が難しいな」

「あれだけ血を流しても自分の足で平気で歩いて...それに表情も変わらないだなんて」

「あいつの家族はな、皆不器用なんだ」

怪我を省みず敵に突っ込むことに関して憤りを感じることには同意するが、表情が変わらないことにはあいつなりの理由がある。それを妹のようなサクヤに悪く言わせたくはなかった。

「エンの家族?」

「ああ。もう誰も生きてはいないがな。あいつの兄は知っている。良い腕の大工でな、サテライト拠点の外壁を修理しているところをアラガミに襲われたそうだ」

「だからあんな性格に...?」

「それは違う。あいつの性格はまあ、家族の影響だな。あの兄はな、大層口下手で表情を変えることも苦手な不器用なやつでな。そんな者と二人で暮らしていたエンもまた感情を表に出すのが苦手なのだろう」

「苦手って、それだけ...?」

「ああ。どうだ?単純な話だろう。エンはただ尋常じゃないほど不器用なだけだ」

だからあまり邪険にしてやるな、とサクヤを見れば、戸惑った顔で固まっていたので、気長に付き合ってやってくれ、とその肩を叩いてその場を後にしたのだった。

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