とあるドMは神を喰らう - deer

終わりがあるから人気があるがガチャはゴミ

「ソーマは音楽が好きなのか」

「別に、あるから聞いてるだけだ」

「昔の人は凄いな。色々な物を組み合わせて音を作って一つの形にしている」

「足音や風や雨、そういう音が集まればそれも一つの音楽になる」

「音楽というのは難しいな」

たたみ終えた洗濯物を片付け、ソーマの隣に腰を下せば、ヘッドホンを被せられる。そこから聞こえるのは綺麗な女性の歌声で、やはり音楽は難しいと感じた。音とリズムと、私には分からない沢山の要素が合わさって創られるそれを理解出来る日は来るのだろうか。

「この曲が好きなのか?」

「よく聞きはする」

「別れの歌か」

プレイヤーをいじりながら背もたれに身体を預ける。私たちにとっての別れとは死を意味するのだ。この歌を聞きながらソーマは何を思っているのだろうか。

「...お前は忘れるのか?」

「どうだろうな。私は忘れられたいが、忘れるのは難しいことだからな」

希望になれなかった存在など直ぐに忘れてしまえばいい。そうして記号に成り果てた私は誰にも気づかれないままこの世界から消えていくだろう。

「忘れて欲しいのかよ」

「すまない、そんな顔をしないでくれ」

どうにもこういう話をするとソーマを傷つけてしまう。忘れないで。歌詞をなぞってそう言えば、暖かな腕の中に引き寄せられた。

「俺は、自分が守りたいやつのことを忘れない。他のやつらがみんなお前を忘れても、俺は覚えてる」

「ありがとう」

もしも私が死んだのなら、直ぐに忘れて新しい道を歩いて欲しい。私のことなんて思い出さずに、その中から消して欲しい。だが、これを伝えてはきっとまた悲しい顔をされてしまう。だから、その時が来たら、きっと伝えよう。
せめて今はこの温もりを感じていたい。そう思いながら、本心を隠すようにその背中へ腕を伸ばすのだった。

ALICE+