とあるドMは神を喰らう - deer

3分前に戻ってもきっと何も変わらない

「単刀直入に言おう。君は先が長くない」

榊博士からそんなことを言われたのはシオを寝かせて帰ろうとした時だった。呼び止められてソファに腰を下ろした私に伝えられた真実は私から未来を奪った。
この身体の持つ限界、両親、実験、私の利用価値、つまり私は出来損ないの化け物ということなのだろう。死なない程度に痛めつけられたいという生き方でこの命を削っていたとは。

「まさかソーマは」

「ああ、話したよ。彼も無関係ではないだろう?」

「なるほど...それで、榊博士が私にこの事実を話した理由を教えていただけるのでしょうか」

「もちろん、それが目的だからね」

私は近い内に何らかの形で拘束される。そこにシオを巻き込むわけにはいかないので、離れて欲しいということらしい。もちろん私もシオを巻き込むのは嫌なのでそれを受け入れたが、一つだけ疑問があった。

「シオに一体何をさせるつもりですか?」

もしもシオを弄ぶつもりならば、私は出来得る限りの抵抗をする。アナグラを飛び出して、アラガミ化するまでずっとシオと共に暮らそう。アラガミ化した私は恐らく第一部隊に殺されることになるだろうが、それでシオが守れるのなら本望だ。

「...酷なことをさせる以上話しておかないとフェアではないね。いいだろう。ただし、この話は絶対に口外しないで欲しい」

「承知いたしました」

シオは支部長殿が探している特異点というアラガミであり、終末捕喰を起こすのには不可欠な存在であるらしい。終末捕喰が起きれば、全てがリセットされるそうだが、詳しいことはよく分からない。
それを起こして人類を救うというのが支部長殿の計画だというが、私はそのためにシオを犠牲になどしたくない。そんなことをするくらいなら、最後まで荒ぶる神々に牙を剥いて抗おう。

「私は小を殺して大を生かすというロジックを認めない」

「私もシオを犠牲にしてまで人類を救おうなどとは思いません」

「ありがとう。だが、一つだけ言っておくよ。君には大切な仲間がいる。それだけは揺らぐことのない真実だ」

「はい」

私と榊博士の計画は、シオが見つかる可能性を減らすために私が離れること、そして支部長殿の注意を引いて少しでも人類とアラガミの共生のための時間を稼ぐことだった。
実際、私がシオに出来ることはもうこれくらいしか残されていない。伝えられることは全て伝えたつもりだ。後はソーマたちに託そうと思う。

「よろしければ、シオに可愛い服を着せてやってください」

最後にそんなわがままを言って私は研究室を後にしたのだった。

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