とあるドMは神を喰らう - deer

生きているとは興奮だ

「馬鹿なの!?馬鹿なの!?」

「煩いぞコウタ」

「いやいやいや!これはエンが悪いからな!!絶対エンが悪いからな!」

「だが約束通り生きて帰ったじゃないか」

昨日より酷い怪我でアナグラへ帰還した私に突き刺さる視線に密かに興奮しながら今日は担架で医務室へ運ばれた。身体中ボロボロの私は集中治療室で肋骨と脇腹の手術を受け、こうして病室に押し込められているわけだが、私の状態を聞きつけたコウタが飛び込んできていきなり罵られた。いいぞ、もっとやれ。

「怪我しすぎだろ!?なんで攻撃避けねえんだよ!!」

「避ける場所が見当たらなくてな。正直囲まれすぎて私もどうすればいいか分からなかった」

「コクーンメイデン二体じゃなかったのかよ!」

「だったはずなんだがな。結果的にオウガテイルとコクーンメイデンとザイゴートまみれで前後左右に上まで塞がれてな」

地面にでも潜れるようになればいいのか?と首を傾げれば、エンって結構馬鹿だよな、とため息を吐かれた。

「すまない、学はあまり無くてな」

幼い頃に両親が死んだので、家事などは一通り出来るが、どうにも勉強はしたことがないので馬鹿と言われても仕方がない。どうせならもう少しキツく言って欲しいくらいだ。

「あー、そういう意味じゃねえよ?まあ、うん、あれだよ!怪我すんなよ!」

「そう言うコウタも怪我をしたと聞いたぞ?」

「俺はいいの!オウガテイルの針掠っただけだし男だし!でもエンは女の子なんだからさあ」

「だが、私はコウタが怪我をするのは嫌だな。それを知ればきっと妹さんも傷つくだろう」

私には守るべき者もいなければ、私が傷ついたところで悲しむ者もいない。むしろ私が悦ぶくらいだがコウタは違う。守りたい家族がいて、怪我をすれば悲しむ人がいる。

「エンだってそうだろ?」

「いや、私の家族は皆もういない。だからせめてコウタは自分の家族を悲しませるな」

「なんか、ごめんな」

「問題ないさ」

申し訳なさそうな顔で下を向くコウタにそう言ってその頭を撫でる。私の家族とは違い、表情や言葉の絶えない家庭なのだろう。この時代に立派に育ったものだ。

「さあ、雨宮隊長との任務の時間だろう?怪我のないようにな」

エンにだけは言われたくねえよ!と笑うコウタに手を振って、自室のソファーより柔らかいベッドに身体を預けるのだった。

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