とあるドMは神を喰らう - deer

魔法の呪文は1人で唱えられるもの

「君に最重要任務を頼みたい」

支部長殿からそう呼び出された理由は、非常に特殊な反応のアラガミがエイジス島付近で観測されたからだという。何かに誘われるようにシオがどこかへ行ってしまったとコウタから聞いていたが、ここまで早く動き出すとは思わなかった。
承知いたしましたと頭を下げて踵を返す。ソーマを連れて行くといいと言われたが、大丈夫だと断った。シオを捕まえるなんて絶対にしないが、そこにソーマまでいては、あの頃に帰りたくなってしまう。
そんな気持ちに蓋をするために一人で出撃する。シオの影響なのか、活発化しているアラガミを一掃していく。クアドリガ派生の接近禁忌種を倒した後、ボルグ・カムランとその堕天種が三体同時に現れたのには骨が折れたが、実際に骨折しただけで済んだ。
また命を削るのか。身体を蝕む痛みに興奮しているものの、着実に終わりに近づいている命を感じてしまう。泣かないで。ソーマにそう言えたら悲しまないでくれるだろうか。
仲間の死を何よりも恐れるソーマはきっと悲しんでくれるのだろう。傷つけて突き放した今でもきっと。

「...シオ」

別れの歌を口ずさみながら涙を流すシオを見上げる。ああ、久しぶりに会えたが、本当に可愛い服を着せてもらえている。おいで。腕を広げてシオを呼べば、涙を拭って笑ったシオが腕の中に飛び込んできた。
前もこんなことがあったな。勢いのままくるりと一回転して尻もちをつく。骨折している腕が酷く痛んだが、可愛いシオのためなら何ということはない。目に入れても痛くないのかもしれない。そう思える自分は中々末期なのではないだろうか。

「エンはシオのこと嫌いになったのか?」

「どうしてそう思うんだ?」

「エンは全然来てくれなくなった」

「すまない。私はシオのことを嫌いになんてならない。指切りをしてもいい」

「ユビキリ?」

「指切り拳万嘘吐いたら針千本飲ます、指切った」

シオと繋いだ小指を揺らしながらそう歌う。絶対守る約束ということだ。絶対シオのこと嫌いにならないのか?そうだ。えへへ、えへへ、何かエライな!嬉しそうにはしゃぐシオを抱きしめる。私はこの笑顔を守りたい。せめて、この両手で抱きしめることが出来る存在だけでも守りたいと思う。

「シオはエンのこと大好きだぞ!」

「私はシオのことを愛している」

「アイシテル?」

「大好きよりもっと大好きということだ」

「それならシオもエンのことアイシテル!」

相思相愛だな。ソウシソウアイ?私がシオを愛していて、シオも私を愛してくれていることを相思相愛と言うんだ。そう言ってシオの頭に、頬に唇を落とす。くすぐったいと言うシオに、愛とはくすぐったいのだと伝える。

「愛している相手にはキスをするといい」

「キス?」

「キスはそれだけで幸せな気持ちになれる魔法だからな」

綺麗な瞳を輝かせてマホウ!と声を上げるシオに、ちちんぷいぷいと魔法をかける。シオはどんどん可愛くなーる。シオ可愛いか?ああ、とびきり可愛いぞ。そう言ってまた頬に唇を寄せれば、明るい声が辺りに響いた。

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