とあるドMは神を喰らう - deer

線路を切り替える仕事は案外儲かるらしい

「申し訳ございません。それらしきアラガミとは遭遇しましたが、動きが速く、逃げられてしまいました。その後も捜索を続けましたが、発見には至りませんでした」

帰投して直ぐに支部長殿へ報告に行く。そうか、残念だ。特異点としての反応が不安定らしく、支部長殿もその報告で納得してくれた。

「今後も捜索を最優先にしてくれたまえ」

「承知いたしました」

いつもと変わらない言葉を返して部屋を出る。部屋に戻ろうと思ったが、骨折していることを思い出して医務室へ向かった。

「エン、明日お願いしてもいいですか」

「もちろんだ」

医務室の帰りにアリサに会ってそう言われる。とうとうエイジスへ潜入する計画を決行するそうだ。出来る限りのことはする。エンこそ、無茶しないで。これも最後になるかもしれない抱擁を交わしてアリサと別れた。

「ちょっといいかしら?」

ベテラン区画に降りれば橘副隊長に会った。ここじゃなんだから。橘副隊長の部屋に入ってソファに腰を下せば、パパと雨宮教官と橘副隊長が三人で写っている写真が目に入った。

「私はね、リンドウを愛してるの」

「私はこんなに素敵な女性に愛されている男が死んだなんて思いません。絶対に生きていると信じてやります」

「そうね、あなたはそういう子よね」

だからソーマもあなたのことが好きなのかしら。綺麗な顔で笑った橘副隊長に抱き寄せられる。どうか、無理はしないでください。あら、人のこと言えるの?本当に素敵な女性だと思う。その笑顔に敵うわけもなく、ご心配おかけしますと華奢な背中に手を添えた。

「ねえ、最近ソーマが悲しい顔をしてるの」

「...私のせいですね」

「リンドウを信じてくれるなら、ソーマのことも信じてあげて。もちろん、私たちも」

「承知いたしました」

「あと、それ。私だけ固い口調なんて悲しいじゃない」

「ですが、橘副隊長は」

「それも駄目。サクヤでいいわ」

「ああ、承知した」

くれぐれも、無茶だけはしないこと。私の額を指で軽くついたサクヤさんが片目を閉じる。美人はどんなことをしても美人だな。そんなことを思いながら、サクヤさんもと言ってその背中に回した腕に力を込めるのだった。

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