とあるドMは神を喰らう - deer

手を伸ばして届くなら迷わず愛を掴みに行け

「橘サクヤ及び、アリサ・イリーニチナ・アミエーラの逃亡を手助けした容疑で日口エン、君を捕縛する」

やはりこう来たか。黒服を着た男たちに囲まれて腕を掴まれる。そのまま支部長室の奥にある部屋に連れていかれ、私の力では到底壊すことが出来ないような枷に繋がれた。

「非常に残念だ。君がこんな愚かな選択をするとは」

「お褒めに預かり光栄です」

「...口のきき方がなっていないようだ」

「申し訳ございません。学がないものですので」

「ほう、それでは調教するしかないようだ」

この状況は非常に不味いとは思うが、いかんせん私はドMだ。調教という魅力的な言葉に溢れそうな涎を飲み込んで支部長殿を見つめる。どこかソーマに似た笑みを浮かべた支部長殿が私の顔を掴んだ。

「本当に翼を持つ者は面倒だ。そのせいで君の兄もアラガミに襲われて死んでしまった」

「...貴様が兄を殺したのか」

「ゴッドイーターチルドレンという貴重な存在を中々引き渡してくれないのでね。私も本意ではなかったのだよ」

「兄は希望だった。何が実験だ、本当の希望を殺して人類など救えるものか」

「今の人類にとっての希望は君だ」

「人類などどうでもいい。私は貴様の計画を許しはしない」

「君の意見は聞いていない」

頬に平手をくらう。それでも支部長を睨むことは止めなかった。いつまでそんな態度がとれるかな。どこか狂気を含んだような声に背筋が震える。
黒服の男が注射器を持ってきた。騒がれると面倒だ。そう言って支部長に猿ぐつわをつけられる。拘束プレイとは中々レベルが高いな。そんなことを思っていると、腕に注射を刺されて激痛が走った。
異物が身体を蝕むような感覚に叫び出しそうになる。歯を食いしばりそれを耐えたが、何かが身体の中でぶつかり合っているような痛みが断続的に襲って来た。

「ほう、これに耐えたか」

喉の奥から溢れてきた血反吐が猿ぐつわの端から垂れる。翼を折られた君は実に可愛らしい。どうやら毒を注入ようだ。ゴッドイーターの身体の働きを鈍らせるものだと言って、生理的な涙で霞む視界の端で支部長が笑った。

「君は愚息と随分仲が良いようだ」

愚かなのは貴様の方だと言いたかったが、私の口から溢れるのは血反吐だけだった。力が入らず、うな垂れていたが、髪を掴まれて上を向かされる。

「残念だが、君たちを自由にさせるわけにはいかない。君には人類の希望となる義務がある」

乱雑に投げられた頭に全身が揺れる。辛うじて意識を保ってはいたが、ほとんど視界はなかった。
何度も違う注射を打たれる。その度に激痛に襲われ意識を飛ばしたが、顔を殴られて意識を取り戻す。もはや身体の中から出た血なのか、殴られたことで切れた口から出た血なのかは分からない。
バースト状態のような感覚に身体を動かそうとしたが、指すら動かすことは出来ない。偏食因子を活性化させる薬を打たれたようだ。

「悪く思わないで欲しい。君は人類のための尊い犠牲だ」

折角パパがプレゼントしてくれたのに。切り刻まれていく服にそんなことを思う。下着だけにされた私の足元には、赤く染まった布切れが落ちていた。
これが辱めというプレイだったなら両手を上げて喜ぶところだが、この先に起こるであろうことを私は望んでいない。私は鞭で打たれたい種類のドMであって、性的なプレイは守備範囲じゃないのだ。
どうにか抗おうと身体を動かそうとする。必死に私を見下ろす支部長を睨めば、気に入らないと頬を打たれた。まだ動けるとは、流石フラムの娘だ。そんなことを言った支部長にもう一度顔を打たれた。

「あの男は実に愚かだった。一目惚れなどという理由でフランス支部を脱走した。当時最強とまで謳われたあのフラムがだ」

私は父に似ているらしい。炎を宿した瞳は私と兄の誇りだった。だからこそ忌々しいというような顔で支部長が吐き捨てる。

「君は生まれた時から人類の糧になる運命だった。フラムのように愚かな死に方はさせない」

父はサテライト拠点を守るためにアラガミと戦い死んだ。父は本当に母のことを愛していて、最後は母を庇って致命傷を受けたのだと兄が言っていた。そんな死に方が愚かであるはずがない。
結局、母は病気を患い死んでしまったが、それでも私の父がこの男に悪く言われていいわけがない。愛する者を守ったことを愚かだと言う支部長を許すわけにはいかなかった。
ふざけるな。言葉を紡ごうとあがく。少しだけ身体が動いたが、同時に大量の血が溢れた。無理やり動こうとすればするほど口から血が出てくるようだ。

「...死なれては困ると言ったはずだ」

鎮静剤を。点滴を打たれて益々身体が動かなくなる。それでももがこうとしたが、強い薬を投与されたのか、急に視界が暗くなった。

「大人しく眠ってくれ」

頬に温もりを感じたような気がしたが、それが何かを確かめる前に意識を失ったのだった。

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