とあるドMは神を喰らう - deer

羽根がなくても案外飛べる

「そのしつこさも父親譲りか」

「それは光栄だ。不死鳥は名ばかりではないからな」

何度倒れても立ち上がる。翼を持つ者としての矜持である。シオを離せ。女神のような何かに繋がれたシオにそう言えば、愚かだなと笑った。

「ソーマ、お前もこのアラガミと随分仲が良いようだな」

「テメェにとやかく言われる筋合いはねえな」

「愚かだな息子よ」

「いい加減それは聞き飽きた。もう一度言う。シオを離せ」

愚かだという言葉が随分お好きなようだ。だが、そんなことはどうでもいい。私はシオを取り返しにここに来たのだ。

「良いだろう。特異点が手に入った今、器など好きにすればいい」

呻くような声を最後にシオの身体が傾く。神機を投げ捨て、全ての力を込めて走った先で何とかシオを抱きかかえたが、勢いを殺すことが出来ずに二人で転がり、壁に激突してしまった。

「エン!」

駆け寄ってくれたソーマの手を借りて起き上がったが、支部長の言う通りコアを抜かれてしまったシオは私の腕の中で動くことはなかった。
冷たくなってしまったシオの頬を撫でる。守れなかった。こうして両手で抱きしめられているのに、そこにシオはいない。まだ終わってないだろ。腕の中のシオごとソーマが抱きしめてくれる。

「俺はお前とシオを信じる」

「...分かった」

榊博士と支部長の話が決裂した。戦いに巻き込まれないように隅の方へシオを運び、その髪に口づけを落として立ち上がる。
支部長が作り出したアラガミ。それを倒さなければいけない。自らその中に取り込まれた男は、もはやただのアラガミとなった。

「私は翼を持つゴッドイーターだ。神になど負けない!」

それぞれの決意を胸に武器を構える。神になった人間と神を喰らう者、その戦いが幕を開けた。
男と女、二つの身体を持つアラガミは動きが読めなかった。動きが特別速いわけではないが、中々攻撃が通らない。簡単に倒せるような相手ではないようだ。

「アリサ!二人で仕掛けるぞ!」

「はい!」

コウタとサクヤさんに足止めをしてもらい、アリサと二人で斬りかかる。攻撃を受けないように飛び上がっては剣が弾かれにくい部分を斬り裂いた。そうして時間を稼いでいる間にソーマがチャージクラッシュを決める。渾身の攻撃に仰け反ったアラガミの動きが止まった。
チャンスよ!ダウンした隙に捕喰してコウタとサクヤさんにアラガミバレットを渡す。頼むぞ。おう!任せとけ!任せて!私の仲間は本当に心強い。

「エン!任せましたよ!」

「ああ、任せておけ」

アリサから受け取ったアラガミバレットを装填する。今だ!怯んだ隙に三方向から撃ち込んだ。流石にダメージが大きかったのか、怒りでアラガミが活性化する。気をつけろ!ソーマのそんな声に返事をして間合いを詰めた。

「圧倒的な力」

そんな声が聞こえたと思えば、明らかに危なそうな攻撃体制に入る。アリサ!ソーマ!ガードの出来ないコウタとサクヤさんの前で盾を展開して攻撃に備えた。

「畳み掛けるぞ!!」

最後のアラガミバレットをコウタとサクヤさんに渡し、二人がそれを撃ち込んだタイミングで三方向から突っ込む。アリサ時間を稼ぎ、ソーマがチャージクラッシュを決める。そして私は、その名のままに高く飛び上がり剣を構える。

「第一部隊を、私たちを、ゴッドイーターを、甘く見るな!!」

全力で振りかぶったそれで天輪を叩き割る。馬鹿な、この私が。そんな支部長の声と共に崩れ落ちた。

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