とあるドMは神を喰らう - deer

贈り物はうさ耳にしておけ

「あいつタオル巻きつけて平気で歩き回るからな」

「あら、もう恋人みたいね」

「そ、ソーマと恋人なんて認めませんよ!!」

「え、とっくに付き合ってんじゃねえの?」

あいつが風呂に入っている間に出来たタコの入っていないたこ焼きを食っているとそんな話になった。アリサもエンも女だろ。性別なんて大した問題じゃありませんよ!!アリサはエンに懐きすぎている気がするが、自分も大して変わらないのかもしれない。

「で、どうなのソーマ?」

エンと付き合ってるの?至極楽しそうな顔でサクヤが言った。知るか。いつも通り短く返すが、それだけでは納得してくれないようだ。

「私だってエンの手料理食べましたよ!部屋も掃除してもらったし、何度も抱き合ったんですから!」

「俺も飯食わせてもらったし、掃除もしてもらったよ!何より同期!初めっからタメ口だった!」

「ご飯はここにいるみんな同じじゃないかしら?あと二人とも掃除くらい自分でしなさい」

謎の張り合いが始まった。飯は当然だとして、そもそも俺はあいつとしばらく一緒に住んでいたし、なによりあいつが大切だ。もちろんそれを言うわけにはいかないが、付き合っているのかと言われればなんと返せばいいのか分からないのが現実だ。

「でもエンってあんまりタメ口使いませんよね」

「俺ら以外には基本敬語だよな」

「私もようやく普通に話してもらえるようになったもの」

「あ、そう言えば前にソーマには強襲兵曹長命令で砕けた言葉を使ってるって言ってましたよ」

「え、何それダサくね。友だちですらねえって」

「その点私とコウタはエンの友だちですからね!」

アリサが得意げな顔をする。確かにそんなことを言った気がするが、今でもそれは有効なのだろうか。

「...今はあいつが上官じゃねえか」

「確かに、ここにいる誰よりも上の立場ね」

忘れてた。忘れてました。あいつには威厳というものがないらしい。部下である俺たちより怪我が多いせいだろうか。

「でもさ、付き合ってる定義ってあんのか?」

「付き合ってくださいって言えばいい話じゃないですか?」

「そういうものでもないかもしれないわよ?言葉なんて無くても恋人でいるには十分だったりもするわ」

「そういうものなのか」

サクヤ曰く男と女のあり方には色々な形があるらしい。中々難しいと思うが、それなら俺たちらしくいればそれで十分なのかもしれないとも思った。

「大体好きっていう言葉の定義も曖昧じゃないですか?ドキドキしたら好き?一緒にいたいと思ったら好き?守りたいと思ったら好き?」

「言葉で説明するには難しいわね」

「恋とか愛とかって俺まだよく分かんないなー」

「...少なからず、あいつはここにいる全員が好きなんだろ」

「あら?それって惚気?」

「絶対ソーマより私の方がエンのこと好きなんですから!!」

そうアリサに迫られながらタコの入っていないたこ焼きを口に運ぶ。あいつが回したものはそろそろ無くなってしまうので、戻って来る前に新しい生地を入れた方がいいのかもしれない。

「コウタ油引け」

「おう!」

「ちょっと!聞いてるんですか!!」

「まさかソーマがたこ焼きを作る日が来るなんてね...リンドウが見たらなんて言うのかしら」

コウタが油を引いたところに生地を流し込んでいく。テンカスにベニショウガ、よく分からないがそれも用意出来なかったらしく、キャベツをひたすら乗せていた。外側の生地が焼ける頃を見計らい、串で回転させる。
アリサは出来ていなかったが、コツを掴めば難しいものではない。私だってと脹れるアリサを、少し不器用なくらいが可愛いものよとサクヤが撫でていた。

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