とあるドMは神を喰らう - deer

右の頬を叩かれたなら左の頬は殴られろ

「いい加減にしてください!!!」

レンと入れ違いのようにやって来たアリサに勢いよく殴られる。こんな短期間で平手と拳のどちらも喰らうことになるとは思ってもみなかった。

「リンドウさんの神機使ったってなんですか!!他の人の神機を使ったらどうなるかくらい知ってるでしょ!!馬鹿!!馬鹿!!」

何度も怒鳴りながら大粒の涙を零すアリサに手を伸ばせば、無事で良かったと抱き締められる。すまない。許しません!!!流石に色々とやりすぎてしまったようだ。

「アナグラには私しか動けるゴッドイーターがいなかったんだ」

「だからって!!他の人の神機使うなんて!!」

「すまない。私の神機は使えなくてな」

「う〜、コウタの馬鹿あ!!!」

「ええ!そこで俺出てくんの!?」

「コウタのせいじゃないさ。すまない」

「いいって、それより、流石の俺も今回のは許さねえよ」

「すまない」

最近すまないしか言っていない気がするのは間違いではないのだろう。それだけ謝らなければならないことしかしていないのだ。

「お前さ、自分のことどうでもいいって思ってんなら本気で怒るぞ」

「誰かが命を落とすくらいならいくらでも自分を差し出すさ」

「それで救われたやつらが喜ぶとでも思ってんのか?」

「少なからず、死なずに済むだろう?」

「いい加減にしろよ!!!それでエンが死んだら意味ねえじゃん!!俺の友だちが死んだらすげえ悲しいじゃん!!!」

ここまで怒りを露わにしているコウタを見るのは初めてで、それが自分に対して向けられていることがどうしようもなく嬉しいと感じるのだから、駄目なのだろう。私のために真摯に怒ってくれる友がいることがどんなに幸せなことか、ゴッドイーターになっていなければ知ることもできなかったのだろう。

「ありがとうアリサ、コウタ。私は幸せ者だな」

「何言ってんだよ!俺真剣に怒ってるんだぞ!!」

「そうですよ!私だって許しませんからね!!」

そう言って目を吊り上げるアリサを抱き締める。許してくれないから嬉しいんだ。怒ってくれるから嬉しいんだ。少しでもその気持ちが伝わるように腕に力を込めれば、顔を赤くしたアリサが腕の中で暴れ出す。

「エンの馬鹿!エンの馬鹿!!」

「ああ、そうだな」

「死なないで、死なないでください、エンが死んじゃ嫌だ...」

「ありがとう」

連日の行動は確実に命を縮めることに繋がっているだろう。それを分かってしまうからこそ、私は悔いのない選択をしていきたいのだ。

「俺も、エンが死んじまうなんて絶対嫌だかんな!!」

「それは嬉しいな」

「冗談なんかじゃないからな!エンは俺の親友だろうが!!」

「そうだな、ありがとうコウタ」

「旨い飯に部屋の掃除に書類の整理!それくらいしねえと許さねえから!」

「心得ておこう」

「私も、部屋を掃除して一緒にロシア料理を作ってお泊りしてくれないと許しませんから!!」

「それは楽しみだな」

死ぬまでに必ず実現しよう。そう心に誓いながら、約束だと指切りをする。また来るからな!また来ますから!そう言って怒った顔で出て行く二人を幸せな気分で見送るのだった。

ALICE+