「かっこいい……」
「そうか?こういう服装はあまり着慣れないから緊張するな!」
爽やかに笑う守沢先輩が着ているのは執事服。
デートプラン考え隊……もとい、√AtoZの期間限定執事喫茶の制服だ。
√AtoZは『ES横断企画』の第一回目の期間限定ユニットだったはずが、人気が想像以上に出たために急遽追加企画として何かやってみないかという話が出て。女の子を喜ばせる方向でという上からの指示もあり皆で考えたところ、椎名さんの料理の腕も生かせるし、羽風先輩は去年学院祭で経験しているし、執事喫茶はどうだろうかという話になり、この企画がとんとん拍子に決まってしまった。
MV撮影の時の衣装はシャツの胸元を開けてセクシーさも出していたが、今回は更にキチッとした執事服。皆なら着こなせるだろうとは思っていたけど、正直、予想以上に似合っていた。
「守沢先輩、キチッとした格好似合いますね。意外でした」
「菜々にそう言って貰えると嬉しいぞ!」
執事服で快活に笑う守沢先輩にちょっとときめきそうになる。熱血キャラなイメージだけど、シックな衣装も似合うってずるいなぁ。
なんて感慨に耽っていたら、独特の低音に名前を呼ばれた。
「菜々ちゃん。こっちも着替えたヨ」
「ありがとうございます、逆先くん!」
「こんな感じで良かっタ?」
「う、かっこいい……」
「大丈夫みたいだネ。見惚れてくれてありがとウ」
くい、と逆先くんが眼鏡を押しあげる。
去年の羽風先輩も似合っていたけど、逆先くんもめちゃくちゃ似合う……と、文字通り見惚れてしまった。
「今日はボクたちだけなんだっケ?」
「あ、そうです。椎名さんと天満くんは後日で、羽風先輩は終わってるので」
「まさかまたこのメンバーで何かするなんてネ」
「そうですね。でもきっと素敵な企画になると思います!」
「そうだな!今回もきっと上手くいく!今日の菜々のように、たくさんの女の子をめろめろにしてみせるぞ!」
ガッツポーズを作ってみせる守沢先輩に苦笑する。
まぁこういう執事もアリ……かな?なんて考えていたら、不意に片手が掴まれた。
「ま、ボクが本当にときめかせたいのは菜々ちゃんだけなんだけどネ」
「なっ、逆先!?」
そのまま傅かれ、チュッと指先に唇を落とされる。
ぼんって音が聞こえそうなくらい、自分の顔が赤くなったのがわかった。
「ずるいぞ!俺だって菜々が好きなんだからな!」
そんな逆先くんに対抗するように、守沢先輩も私に傅いて逆の指先にキスを落とす。突然の展開についていけなくて口をぱくぱくさせるけど、何も言葉が出てこない。ただ、心臓がばくばくとうるさく鳴っていることだけが確かだった。
「フフ、固まっちゃっタ。かわいいなァ」
「菜々?大丈夫か?」
「そういうのは、カメラの前だけにしてください!」