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赫い糸
道の途中
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お腹が空いた。身体が痛む。
暫く、意識は現実世界から遠のいてた。
見える景色は良いのか悪いのか、途切れる前から変わらない。身体は鉛のように重くなったが、少なからずまだ生きている。
あれからニルの記憶はない。それも当然だ、眠っていたんだから。でも、こんな地べたで傷だらけになって眠るつもりなんてなかったはずだ。
ニルは予定外の出来事に直面するも、存外、冷静沈着だった。

眠っている間は夢一つ見ていなかった。
最後に覚えてる記憶では這いつくばった状態で、朦朧とした意識の中、男を仰視していた気がする。
男は肌を除けば頭からつま先まで、全体的に黒ずくめだった。身長は高く、特徴的な衣服を身にまとっていたが、それも鮮明には覚えていない。その時は、酷く霧に覆われていたから、あたり一面すらも、はっきりとは見えていなかった。


傷はかさぶたになって、固まった血が張り付いているみたいだ。菌が入っていないか、わずかに心配だが、大分時間はたってしまった。
しかし身体に激痛がかけはしっていたあれほどの痛みも、見事に緩和されている。人間の自己治癒力には驚かされる。
だが感心している場合ではない。体力が底を尽きる前に一命を取り留めねば。
「いてて……」
ニルは上体を起こすと、歯を食いしばり苦辛な表情で屈み込んで、暫く動かなかった。
抑えた後頭部は、撫でて分かるほど腫れている。打撲によるものに違いない。森道を歩いている最中、不意に背後から襲われそのまま倒れこんでしまった。
持参していたリュックサックはやはりと言うべきか消えていた。
中には、空腹を満たす食糧も入れていたが、
もっと重要な金や地図もあった。
戻るべきかもしれない。先が見えている。かと言って、ここから自分の村へ戻るにはあまりに道程が長く、険しい。
だが地図がなくなった今、街や村に辿り着くには方位磁石でも風の便りでもない、自分の勘を頼りにしなければならない。正直言って、無謀だ。
ニルは地に両手をつき、のっそりと立ち上がった。
「旅に出ると決めたんだ」
このまま帰るわけにはいかないと、決意を固くして、付近の街まで進行することにしたのだった。


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