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赫い糸
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それからどれぐらい歩いたことだろう。
あたりはすっかり影が濃くなった。あっという間に空は水色から群青色に変わった。
少し、また意識が朦朧とし始めている。
胃袋が、空腹を訴えているかのように鳴りっぱなしだ。
感覚の薄れた足を半ば引きずるようにして、歩くことかれこれ1時間。とうとう嘆息して、木にもたれるように座り込んだ。
道の終わりが見えない。畦道だということは、必ず何処かに繋がっているはずだ。なのに、街や村へ招いてくれる標識は一つもない。
(死んでしまうのだろうか)
ニルは弱気だった。これほどまでに肉体的疲労を味わったことがない。
首に吊るした父の形見が、とても重く感じた。手に取ると、琥珀色のオーバル型の宝石がキラリと反射した。
以前なら魅入っていた宝石も、この状況では目の保養にもならない、むしろ身体は飢えを凌ぐ食べモノを欲していた。
身体の一部と思うほどに軽かったペンダントは重量が何倍にも増しているようで、首が下がりそうだ。
これが食べ物であればもう少し頑張れたかもしれない。
いや、あながち腹の足になるやもしれない。
ニルはもはや、正気の沙汰ではなかった。手のひらのペンダントや、道端の草を目に入れては視界を閉じて首を左右に振るのだった。

気づけば闇。夕暮れの時を感じさせないほど、いつもより早く夜は更け、夜空の月明かりだけがくっきりと見える。
呼吸音も無動となったニルは、完全に闇と一体化していた。
草木のように風景の一部となって、草木の布団の上で仰向けになる。星を数えれば、夢を見ていた。
瞼裏に、段々と浮かび上がる映像。
幻惑の森を抜けた奥、更に霧が視界を遮る。道なりに進むと、村に辿り着いた。村の中は嘘みたいに晴れている。
カラカラと回る水車小屋。どこか見覚えがある赤瓦の屋根。
ずっと昔に何かの絵本で見た気がする、名も無き村の風景だ。

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