赫い糸 5 《追跡》 [19/19] 管理人は、一泊料金の倍ほどを貰ったといっていた。おそらく、男は懐が良かったんだろう。 しかし、そんな男が一体どうして自分のペンダントを? しかも、たかだか琥珀の、虫の入った琥珀のペンダントを? 不可解なのは、欲しいだけならわざわざ看病する必要がないはずなのだ。 ニルはハッと、顔を明るみに向けた。 (そうか!流星街だ…!男は流星街のことを聞きたかったのだ! その序でに、ペンダントが盗まれたんだ!) ニルは確信を掴み取ったかのような表情をしていた。 「あ、もしかしてあんたのことかねぇ。自分を訪ねて来たらこの手紙を渡してくれと言われたんだよ。」 管理人はそう言って、いそいそと棚の上にあった三つ折りの手紙を差し向けた。 「手紙?」 ニルはその紙を受け取って開きかけると、少し思いとどまった。 (そんなことがあるだろうか。 男は自分がここに来ることを予期して手紙を書いたとでもいうの?きっと違う人間に宛てた手紙だ) しかし、ニルは誰宛というよりも、手がかりが書かれていることを願って開けた。 “シャルへ“ 一行目は案の定、自分宛でないことは瞭然であったが、ニルは続けて読んだ。 〔目的を終えて北へ向かって走る、サン・ジミング(sun giming)という旧市街で待ち合わせよう。〕 このやり取りは今時にしては古典的だった。 それ以上に、先ほどの男と、このシャルという人間はよほどの信頼関係があるように思える。なんせ、的確に行動を把握し、厳守し、認知し、理解しなければ、相手の居場所はあっという間に分からなくなるようなリスキーな伝法だからだ。 それはさておき、こちらには好都合な状況になった。この手紙は紛れもなく、雲行きが良くなる事を示しているだろう。 「これは、私宛ではないようです」 ニルは何事もなかったかのように返すと、管理人は、そうか、と言って、受け取った手紙を再び棚の上に戻した。 |