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赫い糸
5 《追跡》
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管理人は、一泊料金の倍ほどを貰ったといっていた。おそらく、男は懐が良かったんだろう。
しかし、そんな男が一体どうして自分のペンダントを?
しかも、たかだか琥珀の、虫の入った琥珀のペンダントを?
不可解なのは、欲しいだけならわざわざ看病する必要がないはずなのだ。
ニルはハッと、顔を明るみに向けた。
(そうか!流星街だ…!男は流星街のことを聞きたかったのだ!
その序でに、ペンダントが盗まれたんだ!)
ニルは確信を掴み取ったかのような表情をしていた。

「あ、もしかしてあんたのことかねぇ。自分を訪ねて来たらこの手紙を渡してくれと言われたんだよ。」
管理人はそう言って、いそいそと棚の上にあった三つ折りの手紙を差し向けた。

「手紙?」
ニルはその紙を受け取って開きかけると、少し思いとどまった。
(そんなことがあるだろうか。
男は自分がここに来ることを予期して手紙を書いたとでもいうの?きっと違う人間に宛てた手紙だ)
しかし、ニルは誰宛というよりも、手がかりが書かれていることを願って開けた。

“シャルへ“
一行目は案の定、自分宛でないことは瞭然であったが、ニルは続けて読んだ。

〔目的を終えて北へ向かって走る、サン・ジミング(sun giming)という旧市街で待ち合わせよう。〕

このやり取りは今時にしては古典的だった。
それ以上に、先ほどの男と、このシャルという人間はよほどの信頼関係があるように思える。なんせ、的確に行動を把握し、厳守し、認知し、理解しなければ、相手の居場所はあっという間に分からなくなるようなリスキーな伝法だからだ。
それはさておき、こちらには好都合な状況になった。この手紙は紛れもなく、雲行きが良くなる事を示しているだろう。
「これは、私宛ではないようです」
ニルは何事もなかったかのように返すと、管理人は、そうか、と言って、受け取った手紙を再び棚の上に戻した。



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