キミのかほり [3/5] シャルナークは、携帯を片手に東へ140kmほど疾走していた。 『全員、これを皮膚下に仕込んでくれ』 『もしかして、追跡装置?』 『そうだ。これで団員の居場所を特定してくれる』 ウボォーギンの事があって以来、警戒が高まり、蜘蛛の刺青の中に万が一の事態に、備えて埋め込んだ“人体内蔵型チップ“ まさか早々と役に立つ時が来るとは、思いもしなかった。 そんなことを考えていると、GPSの示す位置に着く。 家らしきものはどこにも見当たらない。恐らく、下にあるのだろう。 「おい、開けてくれよ」 ドンドンと地面を叩きながら、音の違いを聞き分ける。 穴蔵にやってきた男は、腰に手をついて「まったく、確かにここのはずなのに」と、溜め息をつき、焦燥しながらも携帯画面を確認した。 それにしても、辺鄙な所に居を構えたものだ。普段から付け入る隙を見せない彼らしさがある。いや、まあ自分も大概か。 しかしここまでそこらくな潜窟(かくれが)は見たことがない。感服してしまうほどだ。 (フェイタン……なんだか心配になってきたな) 見上げると、雲ひとつない空を太陽が陣取っている。 照々と注がれる日差しが強まる中、かれこれ2時間の長丁場。苦戦を強いられてそろそろ限界が来ていた。 何しろ、6月前だというのに夏のように暑いのだ。 (ふぅ。なんて暑さだ) 拭った額から腕を伝って、ポタリと水滴が地面を濡らす。 炎天の下、襟元を扇いだ男の意識は僅かに朦朧としていた。 (団長はやっぱり頭がキレる。 だけど今思うと、団員が自ら取って捨てられることは彼の盲点だったかもしれない。仲違いは日常茶飯事にあるし、盤石の信頼も考えものだ) ゆっくりと歩く足は木陰に向かい、その場にぐったりと腰を下ろした。 「少し、少しの辛抱だ」 シャルナークは人一倍に夏が苦手な男だった。 それが何やら、暑さのせいか闘志に火でも着いたかのように木陰で耐え凌ごうと踏ん張っている。 しかしながら、シャルナークは何度呼びかけても出てこないものだからさすがに異様に感じていた。 (……やっぱりこのGPSフェイクだったりして) |