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blue*lagoon

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誰が火炎瓶を放り投げたのか。空は炎の海の如く、赤く燃ゆる。細く、透けた雲は眩く光る太陽から上がっている煙のように見える。
その中から、一人の男がふらり現れた。ほんの一瞬、キラリと耳元が煌めいて、路地の暗がりに消えた。不思議だ。私はその光輝に、魅られたような気がした。

街角からふわりと、甘い香りがする。その正体は金木犀だ。夕焼けに染められ、一層と綺麗なオレンジ色をしている。ほんの数週間だけ咲いて、すぐに散ってしまうから、なかなか見れる機会がない。地面には、もう既に幾つか落ちている。その内の半分程は花弁で逆さに立っていた。
昔、小さな袋に詰めて家に持ち帰ったことがあった。気付いたらただの枯れ屑の寄せ集めになっていたことも、よく覚えている。
この香りに包まれる陶酔感は心地が良いものだった。安心を催す、柔らかな甘い匂いは、紛れもなくそこに存在している。
季節が過ぎて目に見えなくなっても、私はこの情景や色形、様々を思い出せた。



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