blue*lagoon [4/4] 絵画のある壁際によって歩いた。その先に長めの黒髪、それから下はネイビーの男の後ろ姿があった。 スラッとしたボディからか、一目引くものがある。その男が不意に振り返り、こちらに向かってきた。お互いに逸れることなく真っ直ぐを歩くと、ピタリと対峙した。耳元の宝玉が鋭く光りを放った。 「君はどこかで見た顔だ」 私は、深いブルーの耳元に、意識まで奪われかけた。 「私もその光に見覚えがある」 そして視線を戻し、男の眼から見始めた。 上下は光沢のあるネイビーのドレスコードスーツ、真っ白で皺1つないシャツを、牛皮の茶色いベルトにシッカリとしまい込んでいる。 靴はピカピカに磨かれて、男と思うと長髪でまとまりはないがサラリとして清潔感がある。唯一額のアンバランスな白帯が邪魔をしなければ、頭からつま先まで、完璧に近い。 誠実そうな男だ… 絵画がずらりと並ぶ中、壁伝いに歩いていると、高い位置に掛けられた一つが目を惹いた。 「天地の終焉……」 崩壊していく最中、抗う姿、乱れる姿をする裸の人間達。この上ない退廃美であった。神が創った世界は滅ぶ時もこう美しかったのだろうか。 或いは汚いものも、人の手を加えるとこうも綺麗に変貌することを現しているのか……。 「あれはレプリカだね。」 陶酔する中、1人の男の声が入り込んだが、私はまともに顔も向けなかった。 「そう、偽物なんだ」 「そもそもこの風景自体、現実の景色を模ったもの。 コピーが実物でも、所詮は絵画以外の何物でもないさ」 そう言った彼は、一風変わった気質を持っているように見えた。 「そうね」 「レプリカは嫌い?」 「ううん。綺麗ならばそれでいいんじゃないかしら」 |