頑固なフタ
「やあゴンくん、キルアくん」

ゴン「あ、オームさん!」

キルア「どーも」

散歩がてら大通りを歩いていると、街角で顔見知りに出会う。紳士風の男の名はオームと言った。時計屋の店主だ。
両手に大量の部品を抱えている。どれも傷だらけで光沢感を失っていた。

ゴン「忙しそうだね!良かったら手伝うよ!」

オーム「有難いけどこれぐらいなら大丈夫だ。ありがとう」

オームは、そう言って背中を向けて去って行った。
暫くしてゴンが叫ぶ。
「しまった!この時計のこと聞くの忘れた!!……まぁいっかぁ……次あったら教えて貰おう」

__2日前__

大通りを歩いていた時、気になった店があった。

一見ゴチャゴチャとしていて派手な店構え、何もないはずなのに周りに隔てられているみたいに浮いている。
そんなところに益々気を惹かれ、中を覗いてみた。
中は一層別世界だ。壁四面、棚に飾られたのは時計、時計、時計!商品全てがどれも同形の時計という光景は初めてだった。

やがて閑散とした無人時計屋の奥からひょっこりとお出ましたのは無精髭と彫りの深さがチャームポイントの老父だ。それ以外には異風な上下スーツと、胸ポケットから垂れ流れる懐中時計のチェーンが宝石のようにきらめいている。

地方から子供が来るのは珍しい!と言って、からくり時計を見せてくれた。
ゴンが目を輝かせると、店内の中央テーブルに所狭しと並べられた無数の手作り時計の中から、1つ手渡した。
“時計なんて無くても分かるだろ“と、少年が眠そうにアクビをしながら呟くと、オームは“分かるって、まさか正確に分かるわけじゃないだろう?“と、聞いた。

キルア「5分程度の時差がたまにあるけど大体あってるよな?」
と、問いかけるとゴンは元気よく返事した。
店主は口を開いて驚いている。

ゴン「うん!でも、この時計欲しいな!凄く変わったデザインだし」

「…ああ、大事に持ってくれたまへ」

そう言ってオームはまた棚の奥の中に消えていったのだった。

キルア「なんだろうなぁ」

ゴン「どうしたのキルア。浮かない顔して」

キルア「なんか気掛かりなんだよなぁ。あの店、この街と調和取れてないってか店主もそうだし、違和感ありあり」

ゴン「確かに異質な感じだけど、変わってて面白いじゃん。今思えば、あのおじさん、眼の色がここらへんの人って感じじゃないけどね」

キルア「じじいの店だけあってホコリが酷いし、老舗って感じだな。そういやさっきの時計動いてるのか?」


ゴン「あ、えーと一応動いてるみたい。でも時間が全然違うね。6時間と25分ぐらい」

キルア「ボロ時計渡されたのかよ……」

ゴン「あそこから適当に選んでたのに、たまたまラグの酷い時計貰っちゃうなんて、オレついてないなぁ」

ゴンはバツの悪そうな顔をしながら笑った。そして時計を回して全体を見ているとあることに気付く。

ゴン「あれ、これ調整出来ないや。普通横に付いてるよね……ん?」

キルア「どうした?」

「これ……」

ゴンが気になる部分を見せると、キルアも怪訝な顔をした。

キルア「フタっぽいな。懐中時計なら盤も覆うものだけど、盤の下にフタなんて、設計ミスか?」

ゴン「かってー!!これ開かない!!」

キルア「貸せ!







……



………


はぁ、はぁ……!!なんて硬さだ!俺の握力80はあんのに、歪みもしねぇなんて!」

キルアは時計をゴンに投げ返した。

ゴン「ひー、ダメだ!硬くて開かないや、オレ全力でやってるのに」

指先を赤くしたゴンは、諦めて時計をカバンにしまった。
フタは開くこと無く、それから4日が経った。
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