キルア「悪いけどあんたに構ってる暇ないから。じゃ」

ヒソカ「つれないねぇ」

キルアが踵を返して、再び走り出そうとすると、足が屋根に引っ張られる。
粘着質な何かが靴と屋根にくっついているようだ。

キルアは恐る恐るヒソカに視線を向けると、屋根の頂端で座っていたはずが、音も立てず忽然とまとなりに現れる。

ヒソカ「ゴンは攫われたよ」

キルア「なに………?!」

ヒソカ「ここ3日行方不明者数15人、内15人は子供らしい。つまり急浮上した誘拐犯の罠だ」

キルア「罠……あいつに限ってそんなもんに……」

ヒソカ「青い果実が食べられないのは、非常に残念だけど、青い果実に防護ネットは要らないから」

キルア(あくまで傍観者ってわけか。ゴンがあっけなく捕まるってことは、恐らく犯人は念能力者だ……)

ヒソカ「君も気をつけてね。人為的自然災害は恐ろしいから。枝から落ちないように……」

ヒソカはそう言って、飛び去っていった。
気付くと足元は瞬く間に軽くなり、ほっと胸を撫でるよう安堵していた。

キルア(あの能力は、随意に消すことができるのか……。
いや、それは自分たちも例外じゃない。
やつの異質な嬲り方や、その他の随意的方法が造作無く実行され、やられてゆく俺たちの地獄絵図が容易に想像出来る。
って、今はヒソカのことを考えてる場合じゃない。
待ってろ、ゴン!必ず助ける……!)

今日がいつもの見慣れた闇夜より、ずっと明るく感じたのは、おそらく満ち月であったからだ。虹色が薄らと月を縁取っている。
屋根も、少年も月の一部と化していきそうなほどに眩い光となっていた。

少年は明るい闇夜をかけた。

猫よりも速く、鳥よりもずっと静かに……その様はまるで白い影法師のようでもあった。
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