あるモノは、呆然とそこで息をしていた。
あるいは 複数のメデューサの目に身体の自由を奪われて
硬直していた。

シズク「団長が好きなの?」

徐な金の十字架が、光のないこの一室で瞬いて見えた。
背後の壁からも、「そうなのか」と問いただされるような
あるはずもない威圧を感じさせた。

それからは 少しだけ長い沈黙だった。

動悸が激しくなると呼吸はちぎれるようになり
真意を求め向けられる視線は逸れることなく向けられていた。

その姿がまるで玩具が放たれるのを待つ犬に見えもした。
だけどたった1人だけそっぽを向いていた犬がいた。それは一見黒っぽい犬。
誰よりも、存在感があるのに誰の意識にもない。

誰の話かは明瞭にわかっていながら
同じ空間にいて片手に本を持ち、対岸の騒動であるかのようにそこにいたのだ。
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