魔術師と奇術師
「それじゃ、そろそろ行くか〜」
かいなの見えるノースリーブを着たブロンドの青年は、高らかに周囲に呼びかけた。
メンバーが揃って屋外に向かう中、団長のクロロは“先に下で待っていてくれ”と言って1人、廊下で立ち止まった。
次に、ポケットから取り出した黒のスマートフォン。
発信先は“ヒソカ”だ。
trrrr……trrrr……
男は腕時計を見て、怪訝な顔をした。
trrrr……trrrr……
__ “ハァイ ★ 只今取り込み中〜♪御用の方は留守電に…… ”
4コール目で不在に繋がると、男は再びポケットにスマートフォンをしまいこんで、階段の方へ向かった。
着信を残せば彼は気付く__ クロロ・ルシルフルは、そう信じていた。
自分からの着信となれば、何の用件かは直ぐに察しがつくことだろう。着信に気付いたら、思い出したかのようにアジトに戻ってくる。そうでなければ掛け直してくるはずだ。
それが頭に忠誠を誓った“足”たる者の役目 __
しかし今日無断欠席すれば通算5回となり、釘を打たなければ周りに示しがつかない。と、クロロは考えていた。
男が向かっている最中、何か人の気配が前方向からやって来るのがわかった。それは、燈の灯らぬ薄暗い廊下の奥から、カツリカツリと音を立てやってくる。
クロロは、特に動じることなく立ち止まって姿が現れるのを待った。
広い旧市街、多くの建物の中、その1つをアジトにしていると、ブラックリストハントが特定するのは考えにくいからだ。
やがて、窓の前にやってくると月明かりである男の姿が浮かび上がった。
「やぁ」
右手を上げて、軽快な挨拶を交わしたのは赤毛の男、ヒソカだった。
クロロ「遅いな。こないと思ったよ」
若干皮肉った言い方をした。
ヒソカ「着信無かったら忘れてたかも 」
クロロ「下にメンバーがいたはずだが?」
ヒソカは、にっこりと表情を解した。
ヒソカ「うん * 」
どうやら、ヒソカは自分に用があるらしい。
しかし、彼が自分から接近してくるのは、非常に珍しいものだった。
というのも、ヒソカは旅団の行いにまるで興味がなかった。
作戦会議にも参加しないし、予定も忘れ自由行動が基本形だ。
団長の命令を軽視しているのか、素行の悪い態度をとり、ヒソカには蜘蛛である自覚が無いことも明らかである。
だからこそ、ここに来たのはわざわざ作戦を訪ねに来た訳ではないと考えられた。
クロロ「用件はなんだ?」
ヒソカ「“もう蜘蛛には戻らない“」
クロロ「……」
ヒソカ「彼女からの伝言。電話でないだろう?それとも、してないとか {emj_ip_0836}」
クロロ「してないが、何故そんなことを聞く?」
ヒソカ「クク、やっぱりね。ボクにはしてニルにしないなんておかしな話だ。もしかして、怯えてるのかい?“団長“。どちらにしても君にとって余計な杞憂は無くなったじゃないか」
廊下で立ち話をしながら両者の間は陰険なムードが漂いつつあった。
片方は煽りだし、片方は冷静に対応をしていたが、その間にも時間は刻々と進んでいた。
クロロ「怯える?何にだ?ニルは、今まで表に出さずに任務を全うしてきた。過去にできたならば、おそらく問題ない。手段選ばず連れ戻すよ」
ヒソカ「……そう」
__ なるほどねぇ、そう来たか
あなたも どこまでも血の冷たい人だ。
感情を殺すことを強いる気なのかい?
能力だけでしか見ない“君の道具“にするぐらいなら“僕の玩具“になった方が幸せじゃない?
生き地獄より死に極楽 彼女もそれを望んでいるよ……きっとね
だから生憎だけど 隠すしかない。君の手の届かないところに __
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