風の噂
冷ややかな空気に街は静まり返っている。雪は燦々と降り積もり、さあ寝ましょう、と冬眠についた家々。だが一軒の家は例外だった。
明かりの灯るそこからは笑い声が漏れている。ハスキーなガラガラ声が混じっているがどれも男の笑い声である。
男たちは、こうしてたまの座談会を楽しみにして、友人の家に集っていた。
「例の話だが」
「ああ」
「昨夜から今朝にかけて、5人が死んだんだとよ」
賑やかな空気が一変にして冬眠に入ったかのような静寂さに包まれた。
それもそのはず、予期せぬ凄惨な事件がこの街の今朝、自分達の寝ている間に繰り広げられていたというのだ。
まさかにわかに信じがたい。皆はお互いの顔を確かめながら唾を飲み込んだ。
何せ、誰も死体を見ていないのだ。
「見たやつが言ってたんだが、傷口が特殊だったらしい。ナイフでもハサミでもない。その理由が均一の幅で切られていて長さは役7cm…だそうだ」
「いいや、こうとも聞いた。遺体を解体して食ったんだと。証拠に指一本落ちてたんだぜ…。貧困層の街、一部は飢餓寸前だしその可能性は大いにある」
「お前たちアホか!迷信だ!オレはこの街にピノキオがいるって聞いたことならあるぞ!」
職の限られるこの街。また、同じ職では食べていけない環境下の為ここには酪農家、鑑定士、葬儀屋、皮職人、詩人の5人が集まっていた。
「そーいや、最近ヨセフは何してるんだ。街で見かけないが、景色に飽きたのか?」
「なんでも理想の女を見つけたらしく、家に連れ込んで頻繁にヌードモデルを頼んでるらしい。それも5〜6時間で2000ジェニーだ」
「もはや罰ゲームだろう!」
「案外、そうでもないらしい。相手もその気になってるとかな」
5人は笑い声を高らかに響かせた。
「オームも偶には顔出せやいいのになぁ」
「ああ、あの奇術師か」
「時計師だよ」
「奇術師なら、最近ここに滞在してる大道芸の男さ……」
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