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「好き」「嫌い」


「好き」


ぽとりぽとり、
やがて花弁が一枚だけ残って
それならこうだ、と投げ捨てた。
運命を拒むのなら
目を瞑り、見なければいい・・・。

花の冠をふんわりとしたブロンドロングヘアに施す少女は、『王の娘』であり、今は城庭の花畑に囲まれている『姫』だ。
花畑はあまりにも広い。少女一人を見つけるには苦労しないが、ものを落としてしまったら2度と戻らないかもしれない。

・・・ごめんなさい、お花さん。
けれど無数にある内の一本ぐらいなら、誰も哀しまないし、きっと風に吹かれたと思うでしょう。そう、泣いたって誰も気づかないのよ。
・・・ああ、この花の色は嫌いだわ。私は明るい色が好きなのに・・・。

花畑の中で浮き出て見えたのは『暗い赤のブラック・ダリア』。
一体誰が種を蒔いたのだろう。一つだけポツンと咲いている。妖しく光沢して、不気味なダリアを少女は根元から引き抜くと、花弁に触れもせず自分の遠くへ放り投げた。本当はもっと遠くに投げたいけれど、これ以上触っていられない。そのまま犇めく花海の藻屑となった。

その夜。人知れずにブラック・ダリアは、萎れていた。あっというまに、まるでそれは・・・見向きもせず立っている周りの花を、恨めしそうに見ているように突っ伏しているのだった。


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