第03話〈嘘つきの大人達〉
現れた男の耳元が、500ルーメンに照らされた時、にわかに信じがたいものを見たようだった。
それは、あろうことかあの“ナイフ男”であったのだ。
「これがケージの所在地と、捌き屋の番号だ。取り分は査定後の金額からリスクを考えて6割。オレが残り。突然、馴染みの運び屋が消息不明なんて参っちゃうよ。お前、運び初めてなんだろ?本当に任せて大丈夫か?」
「下調べは済ましてある。ルートは分かってるし、二カ国の間でピストン輸送した経験もある。心配するな」
「おお。期待してるぜ、運び屋さん」
男が少女を見た。
「それじゃ、今から身体検査を行う。臓器が正常作動しているか、傷んでいないか、病気がないか、外面を含め診断する。条件を満たしているほどに売値が高いからな。こうでもしないと捌き屋がオレ達が白痴なのをいい事に騙くらかしちまう。オレが食わされたのは一杯どころじゃねぇんだ」
「さ、触るな・・・!!」
「暴れんじゃねぇ!」
「・・・オレにやらせてくれないか?」
「ん?お前この手の術を齧ってるのか?」
「知り合いに医者がいてね」
「ほう・・・見せてもらおうか」
「キミ、ここに座って」
「やだね」
「おいガキ、ここで死にたいか!?代わりならいくらでもいるんだぜ!さっさとしろ!」
「「・・・・」」
「大丈夫。おいで」
・・・・カタン。
「失礼・・・」
「冷たっ・・・」
心音、異常なし。
脈拍、異常なし。
瞳孔、異常なし。
喉頭、異常なし。
内部の位置を確かめる。
・・・グッ。グッ。グッ。
うっ、うっ。
問題なし。
「処女かどうかも確認しろ。処女だったらがめてこっちが損するからな」
「「・・・・・・」」
キミは、処女か?
・・・・・。
「見たほうが早い。」
見させてもらう。いいか。
イヤ!
あんた、押さえて。
イヤ!!助けて!!誰かーー!!!
ガタン、ズドド。
あんた達、アタマイかれてる!!イかれてるーー!!!
がシャン、がシャン。
バシンッ!
・・・・・
・・・・・
・・・・・膣内、膜確認。
「聞きたいことがある。あっちには質のいいもんを送らないといけないんだろ?仮にこいつが病気を持っていたらどうする?」
「まず売春、労働、臓器、ここらの価値を失う可能性が高い。特に代表的な用途がないとかなり取り分は下がる。オレらのリスクに見合った報酬は取れないな」
服をめくる。
「・・・・っ冷た」
「酷い傷痕だけなら?」
「さあ・・・臓器取られるんじゃねぇの?オレは拉致って運び屋に渡したらその後の詳しい事は知らないんだ。まあオレらは釣った魚のサイズと相場を知っときゃいいんだよ」
「なるほどな。じゃあカギを」
ジャリっ。
「もしもし、一人捕獲したんで運び屋に送らせます。No.654、分類コード、日本人、少女」
ピッ。
あとは任せたぞ。
ああ、分かった。
「所持品を」
携帯。小銭。タバコ。ライター。折り畳みナイフ。
没収。
「ねえ」
「なんだ?」
「タバコ吸わせて」
「ダメだな」
「どうして?」
「誤用して体内に取り込んだらオレ達が困るからだよ」
「ほんと大人ってバカじゃない?!そんなことしないし!!!」
「・・・そうか?お前が危機意識を持っていたらここにはいないんじゃないか。杞憂は疲れるが、もうちょっと身を案じたほうがいいな」
「何様なの?説教垂れないで。めんどくさい」
「一本だけだぞ」
「最後くらい好きなだけ吸えって言えば?かっこ悪いよ?」
「・・・・」
カチ、スー、ハー。
煙が漂う。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
「なんでウソついたの?」
「何がだ?」
「私が貶されると思ったの?」
「彼奴はお前だけを知ってるわけじゃない。寧ろお前みたいなヤツは見慣れてるだろう」
「じゃあなんで?」
「勘違いするなよ。お前のことなどオレはどうでもいいんだ」
「じゃああなたはどうでもいいウソをつく大人ってことね」
「・・・そうだな」
チリチリチリ・・・・。
チリチリチリ・・・・。
フィルターに近づく。
「終わったな。吸い殻を」
「はい、どーぞ」
バタン。
男退場。
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