近付く距離と脅威




朝いつものように消太くんと学校に向かうと相変わらずマスコミでいっぱいだった…オールマイトが雄英に就任したという発表があってからずっとTV局の人間は張り込んでいるらしい、いい迷惑だとメディア嫌いの消太くんは愚痴りながら「はやく行け」とメディア陣から守るように先に学校に行かせてくれた…ありがたい、私もああいった人たちが苦手なので捕まると何を答えたら良いのか困ってしまう。
消太くんが小汚いとか言われていて少しイラついてしまったけど本人は全く気にしていないようだった…流石。
そんな事を考えていると同じく登校してきた梅雨つゆちゃんを見つけたので話しかける、昨日の反省会で仲良くなれた子の一人なのでどうせだからクラスまで一緒に行こう。

「おはようございます、梅雨ちゃん!」
「あらおはよう、日詠ちゃん朝から大変ね」
「そうですね、消太くんにたすけてもらわなかったら遅刻してたかもしれません」
「日詠ちゃん、私ね、思った事は何でも言っちゃうの」
「はい?」
「相澤先生と日詠ちゃんってどういった関係なの?」
「うぇっ!?」

思わず変な声を出してしまった…周りを見たけど特に目立ったわけではなかったので安心して一呼吸おいた。
ついにその質問を聞かれる日が来てしまった、そりゃそうだ…初日に大声であれだけ親しいように会話をしているし、学校でも隠さずに名前を呼んでいるし、学校は一緒に来ているしで教師と生徒という関係という事しか知らない人からしたら十分気になる要素満載だろう…寧ろ初日からそれが問い質されなかったのが不思議なくらいだ、皆流石に話しかけ辛かっただけか…。

「それは俺も気になってた」
「ふぁっ!?」
「あら、轟ちゃん」

後ろからいきなり話題に入ってきた焦凍くんに驚いてまた変な声を上げてしまった…なんなんだ今日は、心臓に悪い…。
別に隠してるわけではないので話しても問題はないんだけどこうもいきなりすぎると心の準備をする時間をが欲しくなる。

「隠し子か何かか?」
「苗字は違うものね」
「あー…順番に話します」

焦凍くんが意外とぐいぐい来る事に少し戸惑ってしまう…なんなんだ、そんなキャラだったの…?
クラスにつくまで私を真ん中に三人で並んで歩きながら私の半生と消太くんとの関係を簡潔にまとめて話した…名前も親の事も記憶が無いから、戸籍が存在しないようなもの…それでは今後不便だろうと名前を付けられて仮として戸籍登録をした、その際に親子という関係は断固として拒否した消太くんのせいで苗字も違うという事…警察や国の協力の下、"怒木日詠"と名付けられた子供は今までなんの問題も無く学校に通う事ができるようになったのだという事を話した。

「ですから保護者という面では隠し子と言っても別に問題ない気がしてきますね、消太くんは嫌な顔をするでしょうけど」
「日詠ちゃん…」
「二人共そんな顔しないでくださいよ!私は今幸せですし!ほら、あの…終わり良ければ全てよし的なあれです!!」
「それだと人生終わっちゃってるみたいに聞こえるわ、日詠ちゃん」
「あれ!?」
「お前頭良いのにたまにバカになるよな」

じゃあなんて言えばいいというのか…。
でもしんみりとした雰囲気が吹っ飛んだので良しとしよう、自分の話でそういった雰囲気になってしまうとどうしても悪い事をしたという気持ちになってしまう…私は自分の過去の事はもう良いのだ、多少は気になってはいるけど。

「………」

私が笑って梅雨ちゃんと話している最中、焦凍くんがずっと私を見ていた事など知るよしも無かった。



「急で悪いが今日は君らに…学級委員長を決めてもらう」
「「「学校っぽいの来た───!!!」」」

どうやら今日は授業より先に学級委員長を決めるという事でクラス中が立候補している…飯田くんによると説得力は無いものの多数決で決めたいとの事で皆を説得していたが私は別段なりたいわけではないのでその様子を眺めていた…消太くんも時間内に決まれば良いらしく寝袋に入ってしまった。
昨日の戦闘訓練のVと成績、多分昨日私が寝た後に全員分見たんだろうな…朝いつもより眠そうだった…そういった事は学校に泊り込みでやるタイプだろうに…いつも家に帰ってきてくれるのは私が昔ヴィランに襲われた時の夢を見て泣きついた事があるからだろうか…今でもたまに見ているがいつも消太くんが居てくれて安心しているから、そしそうだとしたら本当に感謝だ、本当に父親だったら私はファザコンでいいよ…消太くん大好き。

そんな事考えてると多数決用の紙が配られたので受け取る。
ふむ、どうしようか…焦凍くんもあまりこういうの興味無さそうだったし委員長を適当に決めるわけにもいかない、勿論自分に入れる気もない少し悩んでから紙に名前を書いて丁寧に折った。

「僕三票ー!!?」

教室に響く緑谷くんの驚愕した声と爆豪くんが怒ってる声…相変わらず恐いな。

「一票…わかってはいた!!さすがに聖職といったところか…!!しかし入れてくれた人ありがとう…!!」

どういたしまして。
ショックを受けてる飯田くんに心の中で返事をしておく、にしても真面目だなぁ…自分もやりたがっていただろうに他の人に入れるなんて、真面目すぎて逆に面白い。
委員長は緑谷くん、副委員長は八百万やおよろずさんに決まったらしい…うん、どっちも真面目そうだし問題は無さそうだ。
それから時間が過ぎて午前の授業が終わった…お昼どうしようかな。

「…日詠」
「ほ…っ!?」
「…なんだその反応は、一緒に食わねぇか?」
「い、いや…いきなり名前呼ばれたから…食べます」
「?お前が呼べって言ったんだろ」

やだこの人冗談通じない…。
まぁ言ったのは私ですし、名前呼びの方が私も気が楽ですし…いやでも焦凍くん、きみこんなに私と一緒にいると変な噂が流れるよ?現に休み時間に上鳴かみなりくんにお前ら付き合ってるのか?とか付き合ってないなら今度飯行こうぜ!何好き?とか色々言われたんだぞ、後半関係無いけど!!
ちなみにカロリー○イトのチョコ味が好きだって言ったら「いっぱい食ってたもんな!けど違う!!」って返された…好きなもの聞かれたらこれしか浮かばないんだけど。
そんな事を考えながら食堂に行く…まぁ気になったら焦凍くんから離れていくだろう…私は相変わらずお弁当なので先に席を取っておく…大量に作ってしまったおかずはそろそろ無くなるので明日はランチラッシュのご飯を食べよう。
適当に空いてる席に座って待っていると焦凍くんはお蕎麦が乗ったお盆を持って向かいの席に座った。

「また蕎麦なんですね」
「好きだからな」
「…栄養が偏りそうですね」
「気になるなら俺の分も弁当作ってくれ」
「お弁当箱持ってきてくれるなら良いですよ」
「分かった、明日持ってくる」
「…焦凍くん、冗談って言葉知ってます?」
「知ってる、冗談だ…弁当箱は持ってくるけどな」
「それ冗談言わない!!です!!」

思わず口調が戻りそうだった…危ない…。

「チッ…」

焦凍くん!!??舌打ちしたよね今!!焦凍くん!??
何事も無かったかのように蕎麦を食べ始める焦凍くんを見ながらこの人こんなキャラだったっけ!?と頭が混乱してなかなか箸が進まない…。
再会してから連日の舌打ち…前回のは私が悪いのかもしれないけど今回に関しては謎過ぎるよ…そんなへんてこなミステリアスは皆期待してないと思うよ焦凍くん…きみはクールのままで十分いけるよ、顔は良いし"個性"も強いし…私焦凍くんとこうやってご飯続けてたらいつか後ろから刺されそうな気がする。
現実逃避をしながらご飯を食べていると警報が鳴り響いて肩を震わせてしまった…今日だけで私寿命どのくらい縮んだかな!!?

「セキュリティ3…?」
「校舎内に誰か侵入してきたらしい、行くぞ日詠」

ぐいっと腕を引っ張られてバランスを少し崩してしまったけどなんとか持ち堪えて焦凍くんに引っ張られるまま後を追うけど混乱で人に潰されそうだ…焦凍くんが掴んでくれていなければ今頃転んでいるだろう…それにしても息が苦しい。

「日詠!!」
「っ!!」
「っ…大丈夫か?」
「う、ん…」

また引っ張られて窓際に追いやられる…それから焦凍くんが人混みから守ってくれるように立ってくれた、こういう事を自然としてくれるところは相変わらず紳士だなって思う。

しかし同い年くらいの男子とこんな至近距離で接した事が無いので心臓が煩い、自分の心音が焦凍くんに聞こえない事を願うばかりだ…私だって年頃の女子なんだから恥ずかしいものは恥ずかしい…さっきも言ったが焦凍くんは顔が良いので色々と限界です…冷静になれ私、焦凍くんのようにクールになれ、クールになれクールに…、

「…どういう感情で氷を作ったのかしらねぇけど人を凍らせるな」
「わあああ!!ごめんなさいいい!!!」
「うるせぇ」

まさか冷静という感情から氷を具現化させる事ができるとは思わなかった…確かに冷たいものを想像してたので完全に私が悪い。
焦凍くんは慣れた様子で凍らせてしまった所を熱で溶かすと外を見たので私もその視線を追うように外を見ると何故か門から中に入れない筈の報道陣が押し寄せていて先生方がそれに対処しているようだった。

「どうやら侵入者ってのはあれの事みたいだな」
「そうみたいですね…でも…」

あのセキュリティをどうやって突破したんだろう…?
何か嫌な予感が胸の中を渦巻いた…。
騒ぎは飯田くんの活躍によって治まり、進入したマスコミも警察が到着した事で撤退したようだったが、私の胸騒ぎは治まらなかった。

食堂での活躍によって飯田くんが晴れて委員長になった事は素直に喜び応援しておいた。





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