奇しくもそれは突然に…
「日詠」
朝、いつものように登校して席に着いたら名前を呼ばれて顔を上げると目の前に何かが包まれた物を差し出されて嫌な予感がした。
「明日から頼んだ」
しれっとした顔でそれを私の机に置いてそう言うと自分の席に戻っていく焦凍くんを見送ってからおそるおそる包みを解くとそこには予想通りお弁当箱が入っており思わず固まった…本当に持ってきたよあの人!!?冗談じゃなかったよ!!
溜息を吐いてそのお弁当箱を鞄の中にしまって諦めて明日のお弁当の中身を考えた…そういえば明日からってなんだ、いつまで作れって言うんだ焦凍くん…!!
そんな心の叫びが焦凍くんに届くわけもなく、いつも通り午前中は通常授業を行い午後になった…流石に連日焦凍くんと一緒に食べるのはあまりよろしくない気がして今日は女子組で食べる事にした。
楽しかったけどやはり皆お年頃の女の子なのか焦凍くんとの関係を問い質された…消太くんよりかは説明しやすいけどそんなんじゃないんだ、私は彼になんの感情を持ってない…多分…いや、信頼はしているし好きだけどライクの方であってラブではないんだよ、信じて欲しい。
今日のヒーロー基礎学は
人命救助訓練らしい…多分私が一番苦手な訓練になるだろう、しかし弱音を吐いてはいられない、苦手を克服しなければヒーローになんてなれない…それに切島くんが言っていたように救助等がヒーローにとっては本分、私も救けられたからこそヒーローに憧れたのだ。
もしかしたら授業を受けている内に何かそういった事に向いた使い方を見つけられるかもしれない、そう思いながら自分の
戦闘服に着替えて移動用のバスの前まで行く…皆の
戦闘服姿は見てて楽しいのでやっぱり色んな人を見てしまう…私のは軍服ワンピースというものを参考にしたデザインを戦闘を行ってもそう簡単に焼けたり破れたりしないように強固な作りにしてもらった。
下の要望をきっちり書かなかったせいで何故か黒のニーハイにガーターベルトを付けられた…これ作った人自分の欲望に忠実だったのかなんなのか知らないけど動きやすければ良いやって事で特に何も思わなかった。
「怒木の絶対領域最高」
んだけどな!!
ばっとスカートを押さえながら下を見ると
峰田くんが輝かしい顔をしながら親指を立てていたので殴りたくなった…下着は見えないように一応短めのスパッツを穿いていたけど下から見られて恥ずかしくないわけがなかった、身長差でそうなるのは仕方ないとはいえ殴りたい。
「なんで下にはいてんだよ!出してけよ!八百万みたいによぉ!!」
「発言が最低すぎて引きますね!!?とりあえず
百ちゃんの事もずっと見てましたよね!!?」
「日詠さん、お気持ちは嬉しいのですがどうかご自分も被害者だという事も忘れないでください!!」
私は足以外出してないから良いんだよ百ちゃん!!被害が薄いんだよ!!でも百ちゃん発育良いから心配になるの!!百ちゃんの"個性"的にその服は機能性抜群なんだろうけど…発育…発育いいよね、百ちゃん…何食べたらそうなるのかな、やっぱりバランス栄養食を食べるのやめたほうが良いのかな…。
「日詠さん…!私の事をそんなに考えてくださるなんて…っ!」
「たまにお母さんみたいだよね、日詠」
「確かに!日詠ちゃん良いお嫁さんになれそう!」
騒ぎによってきた
響香ちゃんと透ちゃんが峰田くんを縛り上げながら言ってくれる…というかお母さんって…いいけどなんか複雑だ。
お嫁さんは………まぁ夢に見るのは良いことだとは思う、結婚できるかは別として…そういう方面での好きはよく分からないからぱっとしないなぁ…ドレスとかは見てると素敵だなとか、着てる人は幸せそうだなとかは感じるけど。
ぼーっと考えているとバスの前で飯田くんが番号順で2列に並ぼうと皆に知らせている…張り切ってるなぁ、良かったね。
ぽんっと肩を叩かれて後ろを振り向くと焦凍くんがいた…なんだか最近積極的に私の所に来るねきみ、友達居ないの…?言いそうになった言葉を飲み込んだ。
「あ、顔の部分の今日は無いんですね」
「ああ」
「で、何か用ですか?」
「用が無いと来ちゃいけねぇのか」
「いや私は良いんですけど、私にばかり構ってると友達できませんよ?」
「別にいい…さっさとバスに乗るぞ」
「えー…」
引っ張られて焦凍くんの後姿を見ながら歩く、出席番号順なら焦凍くん私と大分離れる気がするんだけど良いのかな…慣れてしまったけど、優柔不断な私にこの状況はもう相手に従ってしまった方が良い。
流されるままにバスに乗って焦凍くんの隣に座らされた…なんなんだ。
皆がバスに乗ると飯田くんは少し落ち込んでいた…うん、予想と違ったタイプのバスだったんだね、私も多分飯田くんと同じタイプのバス想像してたよ…。
着くまでの時間、梅雨ちゃんが緑谷くんに言った一言から皆がそれぞれ自分の"個性"の話をしていくのを聞きながらチラリと隣にいる焦凍くんを見ると目を瞑って完全に我関せずな雰囲気を出している…きみ何で私を隣に座らせたの。
「派手で強えっつったらやっぱ轟と爆豪だな」
確かに、この二人は強いよなぁと斜め前に居る爆豪くんと隣で寝てるのか瞑想してるのか全く反応しない焦凍くんを見てから、私ももっと強くならないとなとこの前焦凍くんに負けてしまった事を思い出した。
梅雨ちゃんの一言で爆豪くんがキレてそれを上鳴くんが謎のボキャブラリーで煽るから賑やかになる…主に爆豪くんの怒鳴り声で。
「でも爆豪くん、その性格はどうにかしないといつか
敵に間違えられますよ」
「あ゛ァ!?間違えられてたまるか!!黙ってろ白髪女!!」
「爆豪くんネーミングセンス面白いですね!!でも私白髪じゃないです!どっちかというと銀髪です!!」
「うるせぇ!!てめェテストん時俺の真似しやがっただろ!!死ね!!」
「その節は大変参考にさせて頂きました!今後も参考にさせていただきます!!」
「殺す…ッ!!」
「もう着くぞ、いい加減にしとけよ…」
「「「ハイ!!」」」
いやぁ…楽しかった…爆豪くんこわいこわいと思ってたけどすぐ怒るからすごい面白い…やっぱり感情を外に出しやすい人は見てるだけでも楽しい、そう考えると緑谷くんも面白いな、お茶子ちゃんと話してる時顔赤いし、爆豪くん相手だと青くなったりして…それでもあの二人は真っ直ぐと自分の夢を追いかけてる姿が似ていたり…幼馴染なんだっけ、そういった関係はああいったものなのかあの二人が特殊なのか私には分からないけど、それがとても羨ましく感じた。
「すっげー!!USJかよ!!?」
訓練場に着くと広い敷地内はまるでテーマパークのようになっていて皆が思わず声を上げて驚く、私もぽかーんとした顔をしていたかもしれない、それ程にすごかった。
「水難事故、土砂災害、火事…
etc.あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です」
スペースヒーロー「13号」が演習場の説明をしていく。
「その名も
ウソの
災害や
事故ルーム!!」
(((USJだった!!)))
そういえば三人体制だと消太くんが言っていたけれどオールマイトが来ていない…何か事情があるのだろうか?今回の授業は消太くんの口ぶりからすると特例な感じがするけど、そういった話は教師側の大事な話のようなものだろうし聞かない方が良さそうだ…気になるけど、困らせる事はしたくない。
始める前にと13号先生がお小言を2つ3つ…4つ5つとどんどん増えていく…そんなにあるのか…そこから13号先生が自身の"個性"の説明をするのを黙って聞いていた。
「しかし簡単に人を殺せる力です、皆の中にもそういう"個性"がいるでしょう」
先生の話を聞いて思わず自分の手の平を見つめた。
一見成り立っているように見える超人社会…厳しく規制してはいるものの私達が持っている"個性"という力は一歩間違えれば人を殺すのだって容易な力…私はそれをずっと胸に、今まで生きてきたのだから分かっている、だからこそ私は誰かを
救ける為にこの力を使っていきたいと思っていたのだから。
「この授業では心機一転!人命の為に"個性"をどう活用するかを学んでいきましょう。君たちの力は人を傷つける為にあるのではない、
救ける為にあるのだと心得て帰ってくださいな!以上!ご静聴ありがとうございました」
ぺこりとお辞儀をする13号先生の話が終わり拍手が鳴り響く。
やっぱりヒーローはかっこよくて憧れてしまう…今の話で13号のファンになってしまいそうだ、似たような事を昔言われたなと消太くんをちらりと見たら目を逸らされた…目が合ったのもびっくりしたけどそれが合った瞬間に逸らされてしまうとちょっと物悲しいものがある…。
肩を落としていると突然消太くんが叫んだ。
「
一かたまりになって動くな!!!」
「え…?」
「13号!!生徒を守れ!!」
広場の方に黒いもやからぞろぞろと出てくる何かが遠目からでも見えた…ああ、嘘だ、あれは…。
「何だアリャ!?また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」
「動くな!あれは」
震える身体を抑える…呼吸が荒くなっていくのが分かる…昔の記憶がフラッシュバックしていく…色々なものが口から出てきそうだ…。
「
敵だ!!!!」
まるで体が縛り付けられたかのように動けなくなってしまった。
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