我儘を言える勇気をください
「
敵ンン!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」
「先生!侵入者用センサーは!」
「もちろんありますが…!」
「現れたのはここだけか、学校全体か…何にせよセンサーが反応しねぇなら向こうにそういうこと出来るヤツがいるってことだな…校舎と離れた
隔離空間、そこにクラスが入る時間割…バカだがアホじゃねぇ、これは何らかの目的があって用意周到に
画策された奇襲だ」
皆の声が遠くに聞こえる…ああ、駄目だ!こんなんでどうしてヒーローになれるって言うんだ…!それでも記憶に残っている昔の
恐怖が抉り出されていく…これは梅雨ちゃんと焦凍くんに私の半生を語っている時には話さなかった事…。
私は消太くんと出会ったあの日以外にも、
敵に狙われた事が多々あった…それは私がまた無意識の内に人気の無い場所に行ったり、一人で出歩いた時に起きた事だから自業自得だけど誘拐は勿論殺されそうになった事もあった…その全ての記憶と恐怖が、今頭の中をいっぱいにしていて段々呼吸が苦しくなっていく。
私はヒーローになるのに、
敵を前にしてどうしてこんな醜態を晒してるんだ…!
「先生は!?一人で戦うんですか!?」
緑谷くんの声に、ようやく我に返った。
誰が、
敵と戦うって…?
「あの数じゃいくら"個性"を消すっていっても!!イレイザーヘッドの戦闘スタイルは
敵の個性を消してからの捕縛だ…正面戦闘は……」
「一芸だけじゃヒーローは務まらん」
ああ、まって、まって、まって…!ちがう、だめ、いかないで!!
だめだ、消太くん、だめだよ、ずっとみてきたもん、緑谷くんよりあなたの事を知ってるもん、だめだよ、だって、だって…!!
思っても声にならない、涙が出そうだ、前がぼやけていく…。
「日詠」
ぽんっと頭に消太くんの温かい手が乗っかった…目はゴーグルで隠されていてよく見えない…。
「しょう、た…く」
「大丈夫だ」
安心させるように、初めて会った時のような優しい声色でそう一言だけ呟いて離れていく…私はいまだ何も言えずにそれを見送った…。
この時なんとしても彼を止めていたのなら、何か変わっていたのだろうか…?
「13号!任せたぞ」
止めようと上げた手を伸ばす前に消太くんは飛び出して行ってしまった…。
敵と戦う姿はかっこよかった、その姿に私は憧れた、大好きなヒーローが大丈夫だって言ったんならそれを信じるべきなのに、不安でしかたがないよ、イレイザーヘッド…。
「怒木さん!」
「みどりやくん…」
「怒木さんもはやく行こう!」
「……うん」
緑谷くんに呼ばれてようやく皆が移動している事に気が付いた。
重い足をようやく動かす…ここに居ても、私は邪魔になるだけだ…。
「させませんよ」
一瞬にして目の前に黒いもやを纏った
敵が私達の前に立ちはだかる。
それから学校に侵入した理由を話しオールマイトが何故居ないのか聞くが、どうやら答えは聞いていないようでゆらりともやが揺れる。
それから、それから……。
頭の整理がつかない内にもやは広がって周りが暗くなる。
「散らして 嬲り 殺す」
そう聞こえるとそこから殆どの人が消えてしまっていた。
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