今自分に出来る事




どうして私は何もできずに居るんだろう…。

「皆は!?いるか!?確認出来るか!?」
「散り散りにはなっているがこの施設内にいる」
「……!」

あのもやから逃げたのか、僅かな人数でヴィランと対峙する。
私はどうして移動させられなかったのだろう…反応が遅れて逃げられずに居たのに…ああ、駄目だ、しっかりしないと…消太くんも皆の為に戦ってる、皆も、きっとこわい思いをしながら戦ってる…私だけじゃない、自分達が今やれる事をしなくては。
13号先生から指示を受けるものの委員長の責任感から自分だけこの場を離れる事を躊躇してる飯田くんに私も声をかける。

「飯田くん」
「怒木くん…?」
「先生が言うように、今ここに居る中ですぐにたすけを呼べるのに適してるのは飯田くんだと思います」
「しかし…っ!」
「飯田くん、委員長を決める時1票入ってましたよね?あれ私なんです」
「きみが…!?」
「私は飯田くんを信じています、だから飯田くんも皆を信じてください…それも上に立つ者の役目だと私は思います、大丈夫…サポートも私得意ですから!」
「日詠ちゃんの言うとおりだよ!食堂の時みたく…サポートなら私も超できるから!する!!から!!お願いね委員長!!」

一刻も早く応援を呼んで、消太くんをたすけてほしい…いくら多対一の戦闘が得意で強いとはいえ人数が多すぎる…長期戦になればなる程分が悪くなってしまう、どれだけ見てきたと思ってる、どれだけの長い時間を共に過ごしたと思ってる…何度も見てきた、私に戦い方を昔から個別指導してくれていたのは紛れも無く彼なんだ、私があの人の弱点を知らないわけが無い…!!

「手段が無いとはいえ、敵前で策を語る阿呆がいますか」
「バレても問題ないから語ったんでしょうが!!」

そして13号先生も救助活動が彼の得意とする分野で、戦闘経験はあまり無いように思う…"個性"はすごくても先生自身の優しさがそれを良しとしないのかもしれない…だって、現に先生は敵と対峙しながら僅かに震えているから…。





正直な話、緑谷に言った言葉も日詠に言った言葉も安心させる為の強がりに過ぎなかった。
数が多すぎる…それでも俺は立ち向かわなくてはいけない、それが教師の役割でありヒーローを名乗っている者の役割だからだ…少しでも長く13号が救援を呼ぶ時間を作りつつ、あいつらに害を成す輩を片付ける、それが今俺がやるべき事だ。
ふと、日詠の泣きそうな顔を思い出した…あいつの事だからきっと俺の分の悪さを一瞬で悟って止めたくて仕方が無かったんだろう、だが俺は昔それを「傷付くのもヒーローの仕事だ」とかなんとか言って教え込んだ筈だ…何度も同じ事を言うのは嫌いなんだ。
それを知っているからか、元々自分のそういった欲を出さない性格だからか言葉に詰まっていたんだろう…でも何を言いたいのかなんて分かっていた、何年世話をしてきたと思ってんだ。

"個性"が使えると判断して使おうとした奴の個性を消して捕縛武器で縛りそのまま投げ飛ばす、大型の異形型のヴィランは殴って吹っ飛ぶ瞬間に捕縛武器で捕まえてひとかたまりになっているやつらのとこに吹っ飛ばす…流石に息が上がってくる、一番厄介そうな奴を逃がしてしまった事が気掛かりで仕方が無い…戻ろうにも敵がそれを邪魔をしてくるからたすけに行けない、無事でいてくれよガキ共。
そう考えている内に手を体中に付けた不気味な男が近付いてきた。

「本命か」

明らかに他の奴らよりも動きが違う…戦い慣れているのか、なんにせよ恐らくこいつが首謀者だろう、武器が通用しないならばと俺自身も奴に近付き肉弾戦に持ち込もうとしたが打ち込んだ肘が片手で防がれていた。

「動き回るのでわかり辛いけど、髪が下がる瞬間がある」

思わず目を見開いた。
気付かれたか…っ!!

いちアクション終えるごとだ…そしてその間隔は段々短くなってる」

ボロボロと捕まれている部分が音を立てる。

「無理をするなよイレイザーヘッド」

ゾワリと何かが背中をかけたような感覚が襲う…。
そいつを殴ってその場を逃れたが…、肘が"崩れた"事に冷汗が伝った。

「その"個性"じゃ…集団との長期決戦は向いてなくないか?普段の仕事と勝手が違うんじゃないか?君が得意なのはあくまで「奇襲からの短期決戦」じゃないか?それでも真正面から飛び込んできたのは生徒に安心を与える為か?かっこいいなあ…かっこいいなあ…
ところでヒーロー」

不気味な男の話に気を取られて後ろに迫るヴィランに気が付くのに遅れてしまった…。

「本命は俺じゃない」







「先生ー!!!!」

皆が一斉に叫んだ。
13号先生がワープゲートによって自分自身をチリにしてしまう姿は恐怖でしかなかった…皆の顔が一気に険しくなった。

「飯田ァ走れって!!!!」

砂藤さとうくんの声で飯田くんがようやく動き始めた、それならやるべき事は一つだ…呆けて絶望している場合じゃない、絶望するにはまだはやい!!飯田くんの後を追うように私も駆けた。
飯田くんに気付いたヴィランが飯田くんの前に飛び出してきた事に飯田くんが足を止めようとした…が、

「足を止めないでください!!!」

"焦り"という感情を"風"という形に具現化してもやを吹き飛ばした所を障子くんが抑える。

「行け!早く」
「くそっ!!」

飯田くんを止めようとするヴィランを何とか皆で足止めして飯田くんを走らせた。
物理攻撃が聞かない事が厄介すぎる…攻撃しようにもワープの力で下手をすれば13号先生のように攻撃をワープさせられ皆に被害が及ぶ…実体があるなら……実体…?
そういえばもやで隠れてよく見えなかったけど服、みたいなの着ていた気がする…飯田くんの援護をしつつあたりを探そうと目線を動かすとヴィランが身に着けていたものを見つけた、お茶子ちゃんも丁度それを見つけたらしくそっちに向かって走っていく…ならそっちはお茶子ちゃん達に任せるべきだと、私は飯田くんが足を止めないようにするだけだ。

「なまいきだぞメガネ…!」
「焦りすぎじゃないですか、口調、変わってますよ…っ!!」
「く…っ!!」

飯田くんに近付くもやを片っ端から防いでいく…と、お茶子ちゃんが"個性"を使って実体らしきものを浮かした事で引っ張られるように上に飛んでいく、やはりあれは実体だったのか。
吹き飛ばされながらも抵抗してまだ飯田くんの邪魔をしようとするヴィラン瀬呂度それを見つけたらしくそっちに向かって走っていく…ならそっちはお茶子ちゃん達に任せるべきだと、私は飯田くんが足を止めないようにするだけだ。<br /> <br /> 「なまいきだぞメガネ…!」<br /> 「焦りすぎじゃないですか、口調、変わってますよ…っ!!」<br /> 「く…っ!!」<br /> <br /> 飯田くんに近付くもやを片っ端から防いでいく…と、お茶子ちゃんが"個性"を使って実体らしきものを浮かした事で引っ張られるように上に飛んでいく、やはりあれは実体だったのか。<br /> 吹き飛ばされながらも抵抗してまだ飯田くんの邪魔をしようとする<ruby><rb>敵</rb><rp>(</rp><rt>ヴィラン</rt><rp>)</rp></ruby>を[#ruby=瀬呂せろくんがテープを使って更に遠くへ吹き飛ばした…その時にはもう既にドアを開けて飯田くんは外へと出ていた。
皆は13号先生の元へ駆け寄っていくけど私は謝りながらも広場の方が気になってしかたがない…変に胸騒ぎがする、オールマイトを倒すと言うならそれに対抗する力を相手が持っているという事だ…もし、もしそんなものがあるとしたら…!!

広場にいる消太くんの姿を見て、私の思考は全て停止した…頭が真っ白になってそこからの記憶は無かった。





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