ただ静かに燃ゆるは何か
「対平和の象徴、怪人"
脳無"」
不気味に笑うように言う男は
脳無と呼ばれた
敵を使って相澤を痛めつけていき、それから腕をへし折る…惨たらしく続くそれを遠くも近くもない距離で呆然と青ざめた顔で水難ゾーンから戻ってきた緑谷達は見ていた。
圧倒的な力によりへし折れた腕は可笑しな方向へ曲がり、血がぼたぼたとそこから垂れていく…。
「"個性"を消せる…素敵だけどなんてことはないね、圧倒的な力の前ではつまりただの"無個性"だもの」
静かに男は語ると
脳無は相澤の折れていない片方の腕へと手をかけ、グシャと音を簡単にその腕を折った…そこからも血が出ていく事からただの骨折ではない事を物語っている。
「(小枝でも折るかのように…!!身体の一部でも見れば消せる…!つまり、素の力がコレか!オールマイト並みじゃねぇか…)」
頭を持ち上げられ、地面に叩きつける…その行為が続けられゴッゴッと鳴り響く中黒いモヤを纏った男が現れ、
死柄木弔と呼ばれた男はそれに反応する。
「
黒霧、13号はやったのか」
「行動不能にはできたものの、散らし損ねた生徒がおりまして……一名逃げられました」
「……は?」
それを聞いて死柄木はあからさまに不機嫌になり、付けている手の隙間から自身の首をガリガリとかいて怒りを露わにしているのがよく分かるが、それがいきなりぴたりと止まった。
「さすがに何十人ものプロ相手じゃ
敵わない…ゲームオーバーだ、あーあ…今回はゲームオーバーだ……帰ろっか」
その事を聞いた峰田が喜びを露わにするものの、納得のいかない表情で緑谷は戸惑っていた…それもそのはずだ、これだけの事をしておいてあっさり引き返すというのは雄英側に危機意識を強めるだけ…全体の被害を考えても
敵側にはデメリットしか残らない、何を考えているのか分からないその不気味さが恐怖を煽っていた。
「けどもその前に平和の象徴としての
矜持を少しでも…へし折って帰ろう!」
瞬間、見えない速さで緑谷達の前に死柄木が現れ、その手が
蛙吹の顔へと伸びてきた時緑谷は先程見ていた相澤の肘が崩れる瞬間を思い出していた…咄嗟の事で何も出来ず、その手が蛙吹の顔にヒタリとくっつく瞬間を見守る事しかできずにいたがその手が顔を掴んで蛙吹の目が動揺で揺れても先程見たように崩れるという事は無かった。
「……本っ当かっこいいぜ、イレイザーヘッド」
後ろで
脳無に捕まれながらもその目を死柄木に向けて"個性"を発動し、敵の個性を消していた。
死柄木が不機嫌に手を離し相澤を見ると
脳無はまた相澤の頭を地面へと打ち付ける…その姿を今度は楽しそうに見ている死柄木に対し二人の生徒が瞬時に動いた。
▼
俺を殴ろうと飛び込んできた地味めの餓鬼の動きは分かった…だから
脳無を呼んでそれを防いだ、だけどジャリ…と後ろで金属音が聞こえてそっちを見るといつからそこに居たのか、
脳無が殴られた時にうまれた衝撃波にももろともせずに倒れているイレイザーヘッドの元に座り込んで無表情で俺を見つめる子どもがいた…さっきの金属音はそいつの手に巻きついた黒い鎖の音か。
他のやつらは何をしてるんだと見れば子どもが持っているのと似たような鎖に殆どが縛り付けられているか反応できずに唖然としてる奴らばかりだった。
今もなお何も映していないような目で俺を見つめたまま動かないイレイザーヘッドへ手を添えて…おいおい、何してんだ?さっきまでだくだくとイレイザーヘッドから流れていた血が急に止まっているし何か子どもの手元が光っている…治癒の"個性"か…?
完全に血が止まった事が分かると、ふらりと立ち上がるのを確認したと認識する前に俺はそいつが持っていた鎖で身動きが取れなくなっていた…なんだこいつの"個性"…。
柄じゃないけど戸惑った…のと同時にゾクリと体が震えた、恐怖とか気圧されたとか、そんなんじゃない…そいつの目を顔を、よく分からないそいつの"個性"を見て、何かが高ぶったんだ…ただただこいつを殺したいと思った。
他の誰かが手を出すなんて許さない、こいつは俺自身が、俺の手で殺す…小奇麗な顔を絶望に歪めさせて、滅茶苦茶にして殺したい…不思議だった、餓鬼は大嫌いな筈なのに嫌いだからとかそんな理由で殺したいわけじゃない…そもそも嫌いだと感じたら俺自身の手で殺したいだなんて思わない、素直に死ねって思う。
初めての感覚なんだ、それがなんなのか分からない…ただこいつの目がどこか俺に似ている何かを持っていて、俺はこいつを殺したくて、殺すために傍にずっと置いておきたい…ああ、なんかもうわけわかんなくなってきたな。
思考がごちゃごちゃしてきた時遠くででかい音が聞こえて目線を上げると…あー、そうだ、今は目的を片付けるのが先だな…この気になる子どもは後にしよう、せめて名前くらいは知りたいけど、今は目障りなごみを片付けよう。
「コンティニューだ……」
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