知らぬ感情は見ないふり
第二種目めの騎馬戦が決まり、周りは一気に誰と組むか…15分という短い時間で交渉を始めてる、でもやっぱり皆クラス内の人と組むんだなと…まぁ"個性"把握してないんだから当たりまえではあるんだけどね…。
「日詠」
もう聞きなれた声に振り向くと案の定焦凍くんがいた。
「まだチームが決まってないなら俺と組まないか?」
「あー……嬉しいお誘いではあるんだけど、焦凍くん緑谷くんに挑戦するでしょ?ちょっと遠慮しとくよ…」
「…そうか、分かった」
「うん、じゃあ…頑張ってね焦凍くん、私も頑張るから!」
「あぁ……日詠」
「ん?」
「…やっぱりお前はそっちの話し方のが良いな」
「ん!?」
「じゃあな」
それだけ言って去る焦凍くんに胸が熱くなった…気がした……口調がいきなり変わったというか、私的には戻しただけなんだけど…まぁA組の人には多少反応された、でも焦凍くんにあんな事言われるとは思わなくて顔に熱が集まってくる…。
もう緊張は解けてる筈なのに心臓の鼓動が煩く感じたけど、今はそんな事を気にしてる場合じゃない…時間は有限!早くあの人を見つけて交渉しよう!!
「あ、いた!」
やっと見つけた目的の人物に話かけようとしたら、彼と話していたらしきクラスメイトの様子がおかしい事に気が付いた…あの様子は何度か見たことがある、というか昔私も似たような事をされた事があったな…その時の記憶はあまり覚えてないけど、あのタイプの"個性"はそういった
性質のものが多い、それほどに強力なもの…。
「"洗脳"…か何かかな?」
「!?……きみは?」
「んー……」
答えてしまえば彼の"個性"が発動するかもしれない、安易に答えられないから困った…別に洗脳されても問題はないのだけど…私の場合感情が無くなればそれは"無個性"と変わりないただのお荷物と化すのでそれは勘弁願いたい。
少し考えて地面に指で文字を書いていく事にした。
『ヒーロー科1-A、怒木日詠です』
「うわ、対策はやいな…」
『洗脳されると私"無個性"と変わりなくなっちゃう』
「ああ…そういうタイプの"個性"なんだ…」
『きみと組みたいから"個性"無くなると困る』
「俺と……?あ、"個性"使わないから普通に話していいよ」
『ほんと?』
「うん」
それを聞いて立ち上がって手を叩いて手に付いた砂を落とした…結構文字で会話するの楽しかったな。
「改めまして怒木日詠です!」
「…
心操人使、で?俺と組みたいって何で?俺の事知らないでしょ」
「知らないけど、きみA組に宣戦布告に来たでしょ?」
「行ったね」
「面白い人だなって思って」
「……え、それだけ…?」
「それだけ、あわよくばお友達になってくれないかなって」
完全に虚を付かれたようにぽかんとした心操くんに首を傾げた。
「……変わってるって言われない?」
「…よく言われる…」
「だよね…うん、まぁ…組んでくれるんならいいよ、"個性"知らないけど」
「まだ時間少しあるみたいだし作戦会議ついでにお互いの"個性"の説明しようか」
「そうだね…というか俺の"個性"分かってこんな普通に話すあたりすごいよね」
「え、だって使わないって言ってくれたし」
「人を疑う事覚えた方が良いよ怒木さん」
今すごい呆れられた顔された気がしたけど気にしない、今はそれどころじゃない。
とりあえず心操くんの"個性"を説明してもらった…問いかけに答えれば洗脳スイッチが入るというものらしい…予想は当たったけどなかなか強い"個性"だ、しかし消太くんから聞いた入試テストの内容からするとそりゃ不利だなと納得した。
次に私の"個性"の説明を大まかに説明して、心操くんが気になる所を答えた。
「…たしかに、強いけど俺の"個性"使ったら"無個性"も同然になるね」
「でしょう?だからまぁ馬のが妥当だと思う、ある程度は攻撃も守りもできるし」
「そうかもしれないけど、いいの?男を支えて走るって結構体力いると思うけど」
「体力馬鹿って言われてるから多分大丈夫」
「…まぁ一応ヒーロー科みたいだしね…」
「一応って失礼じゃないかな」
「一時的に共闘してるだけだって事忘れないでね」
「クラスメイトの洗脳を黙って見逃してる事も忘れないでね」
「それは怒木さん一人の責任だよ」
「心操くんの"個性"言いふらしてきていい?」
「ごめん待って」
とりあえず持ち点は最初に全て奪われる事前提で、後半時間ギリギリの所で心操くんの"個性"を使って逆転を狙う…まぁ対人ならそれが妥当な判断だしね、最初からとばせば対策もされやすくなるわけだし。
つまりこのチームは後半からが勝負になる…私は心操くんが取ったポイントを奪われないように彼を守ればいい…まぁ大抵は緑谷くんの1000万ポイントに狙いを絞ってるだろうし、強敵な焦凍くんや爆豪くんもそっちに目がいって私達の方には見向きもしないだろう……それなら、障害物競走で使ってしまった分とはいかずとも温存は出来る…洗脳でチームを組んでいる尾白くんと
庄田くんには少々悪い気はするけど、そんな事を気にする予知も時間も今は無い…できる事を、やりたい事を…私はやるだけだ。
「やっぱりトップの方は盛り上がってるねー」
「怒木さんもあそこにいる誰かと組めば確実に目立ててたし勝ち残れたでしょ」
「私が目指してるのはアングラ系ヒーローだから、目立ちたくて体育祭に参加してるわけじゃないの、そこは間違えないでね心操くん」
「そうなんだ、珍しいね」
案の定序盤で私たちのチームはポイントが0になった…だけどこれも計算の内、時間が迫るまでは適当に動き回っているだけなのでまぁ…暇なのだ、だから悠長に心操くんと話してるわけなんだけども。
というか焦凍くん、百ちゃんとも組んでたんだ……いや、あの二人席近いし同じ推薦組だし…気にする必要ない、よね?同じチームに入るの私が断ったんだし、こんなのは我侭というか……なんだろう、なんかモヤモヤする…。
「…怒木さんはさ、自分の"個性"が
敵寄りだと思った事は無い?」
突然の心操くんからの質問にはっと我に返った、今はそんな事考えてる場合じゃないだろ私…っ!!寧ろ焦凍くんに友達が増えて良かったじゃないか…友達と思ってるのかは分からないけど。
「…あるよ…暴走しやすいし、戦闘においては大体が八つ当たりみたいになるからね」
「じゃあさ、どうしてヒーローになりたいと思った?」
「…どんな"個性"でも、憧れちゃったんなら仕方ないと思うんだよ…」
「……そうだよな、しかたない…」
「だから心操くんとは仲良くなれる気がするんだよね」
「どうしてそこに辿り着くの…まぁいいや、そろそろ時間だし動こうか」
「了解」
後1分も無いというのにまだ0ポイント…狙うは上位の得点…今の順位だと消去法から言って、B組の鉄哲くんのチームになる…できるだけ早く、負担があまりかからないくらいの力を使って移動する、近くまで行き心操くんの"個性"を使えばこっちのもの…心操くんの問いかけに答えた鉄哲くんのチームは時が止まったかのように動かなくなってしまった…そこから心操くんがハチマキを奪って、第二種目めが終了し上位4チームが発表された…ギリギリで逆転したからマイクさんが驚いてる、実況からして緑谷くんと焦凍くんと爆豪くんのチームに熱が入ってたんだから当たり前か。
洗脳が解けた尾白くんと庄田くんはわけがわからないといった顔をしていた…後で謝っておいた方がいいのかな……?
最終種目へ進出が決まったところでお昼休みに入り、皆がそれぞれ昼食を食べる為に移動を始めたので私も心操くんにお疲れ様の一言だけ伝えて移動を始めた。
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