君の言葉で誰もが救われる
小休憩が挟まれ、その後に切島くんと鉄哲くんの決着が着いた事で二回戦が早くも始まるアナウンスをマイクさんが流す…私にとってこの体育祭で一番見たくない戦いかもしれない…それでも見ようとしてしまうのは、どこかで緑谷くんが焦凍くんを救ってくれるかもしれないと期待しているからだろうか…。
『今回の体育祭両者トップクラスの成績!!まさしく両雄並び立ち今!!緑谷対轟!!
START!!」
開始の合図と同時に焦凍くんの氷結攻撃が緑谷くんに襲い掛かり、それに対して緑谷くんも自損覚悟の力による打ち消しでそれを破る…その風圧に飛ばされつつ自分の背後に氷壁を作って場外にならないように防ぐ焦凍くん…一瞬の戦いだったのに、とても胸が苦しい…。
すぐにまた焦凍くんは氷結攻撃を繰り出すも、同じように破る緑谷くんの指は開始して一分も経たない内に二本の指が潰れてしまった。
恐らく緑谷くんは焦凍くんに対して耐久戦を望んで、隙を見つけようとしてる…その判断はきっと間違いじゃない…けど──…。
一発、二発と氷結が襲ってくる度にそんな捨て身な攻撃をしていればあっという間に右手は全滅…当たり前だ、それでも緑谷くんの目は諦めていない…。
『轟、緑谷のパワーに怯むことなく近接へ!!』
近付いてくる焦凍くんに向かって緑谷くんは左手を使ってまた風圧を使って吹き飛ばすけど焦凍くんはそれを読んでいたかのように氷を上手く使って高く跳び、上から攻撃…緑谷くんはそれをなんとか避けるがすかさず氷結攻撃の猛攻…それでも緑谷くんのパワーに警戒してか背後に氷壁を作り出しているあたり流石としか言いようが無い…緑谷くんは勿論襲ってきた氷結攻撃を破ろうと攻撃を出す、が…さっきよりも威力がでかく、立っている緑谷くんの左腕がボロボロになっていた…。
「……焦凍くん……」
焦凍くんの方も、身体に霜が降りてきている…きっと限界に近い…それでも消耗量は緑谷くんの方が上だ…。
自分でも顔が歪んでいるのがよくわかった…やっぱり、緑谷くんでも無理だったのだろうか…彼を
救けられる人は、いないのだろうか……?
『圧倒的に攻め続けた轟!!とどめの氷結を──…』
「…っ!!」
瞬間、緑谷くんがまた風圧で氷結を破った。
既に壊れた指で、焦凍くんを吹き飛ばす威力…きっと私に足りなかったのはこれなんだろう、ようやく分かった…。
「……っ!!皆…本気でやってる、勝って…目標に近付く為に…っ一番になる為に!半分の力で勝つ!?まだ僕は君に傷一つつけられちゃいないぞ!」
壊れた指を無理矢理に動かして握り締める──…。
「全力でかかって来い!!」
そうだ、私は今まで…"全力"で人に立ち向かっていなかったんだ……。
全力のつもりだった、でもどこかで恐れていた…嫌われたくないと、余計な口出しはしないようにいつの間にか私は自分で壁を作って人に接していた。
そんなんで人の心を
救けられるわけが無い、真正面から立ち向かって相手を心の闇から
救け出す勇気が、言葉が、私には出なかった…。
焦凍くんが動き出し、緑谷くんに近付こうとしたけど動きが鈍くなっていた…それに合わせるように緑谷くんも駆け出して左腕が凍らされたのも気にせず、焦凍くんのお腹に一発いれた…飛ばされた焦凍くんは体制を整えて氷結攻撃をするものの勢いは明らかに最初より弱まっていた…。
緑谷くん…どんなに自分が傷付いても、どんなに苦しく辛くても、きみは人の為に動くんだね…。
正直、私はそんな生き様が羨ましい…私には真似できない、光のような強さがとても羨ましい…消太くんも、緑谷くんも、オールマイトも…きっと輝いて見えるヒーローは同じ強さを持っているんだ…だから私はその光に手を伸ばした、それを希望だと信じた…私もそうありたいと願った…。
「君の!力じゃないか!!」
緑谷くんがそう叫んだ瞬間、焦凍くんの様子が変った…。
ああ、やっぱりきみはすごいね…緑谷くん…、私ができなかった事をやってのけてしまった…。
「ありがとう、緑谷くん…」
焦凍くんを
救けてくれて…、私に色々気付かせてくれて…。
きみはきっと立派な"ヒーロー"になれる。
焦凍くんが左の力を使い、二人がぶつかり合う…その瞬間すごい爆風が起こって…緑谷くんは場外、よって焦凍くんの勝利で決着が着いてその戦いは終わり、私は席を外した。
「お疲れ様、焦凍くん」
「…日詠…」
「ふっきれた?」
「…まだわかんねぇ、けど…少し考えるつもりだ」
「そっか…うん、そうだね…きみは考える時間が必要だ…」
「日詠…」
「うん?」
「…抱き締めていいか…?」
「…え、ここで?」
「他にどこがあるんだ…?」
「…せめて人目がつかないようなとこで…」
「大丈夫だ、ここもあんま人こねぇ」
有無も言わさずに抱き締めてきた焦凍くんに固まった…人来ないと言ってもここ通路のど真ん中なんですけど!?そう突っ込もうにも思いっきり胸板に顔押し付けられるように抱き締めてくるものだから声が出せない…というか息もできない…!!
バンバンと少し強く叩くと少し力を緩めてくれたので顔を離した。
「いき…っ!ころすきか…っ!!」
「悪い、加減間違えた…お前結構小さくて細いんだな」
「一歩間違えたらセクハラ発言やめようよ焦凍くん」
「んでもって軽いよな、飯食ってるか?」
「食べてるよ!!ついでに言うと今お腹空いてるよ!!」
「そうか、飴食うか?」
「わぁい」
焦凍くんが離れて飴の包みをポケットから出して私に手渡してきたのでありがたく飴を包みから出して食べたらまた抱き締めてきた…まだやるんかい。
もごもごと飴を舐めながらぽんぽんと背中を軽く叩いてあげた…まぁ飴貰ったしね、色々お疲れ様という意味を込めて甘やかしてあげよう…いつまで甘えてくるかは知らないけど。
結局、ステージが直るまでの時間の殆どを焦凍くんとのハグで終わらせてしまった…人間、一緒にいる時間が長くなってくるとあの至近距離でも特に緊張とかしなくなるものなんだなと…焦凍くんのあの近さに慣れてきた自分が恐ろしい…何故か私も安心するから別に良いんだけどね…。
飯田くんと塩崎さんの戦いが飯田くんの勝利によってすぐに終わった事で私はまたステージへと上がり、常闇くんと対峙する。
ごめんね、常闇くん…私、爆豪くんと約束したからさ──…。
『START!!」
「負けるわけにはいかないんだよ」
開始の合図と共に上鳴くんがやったように大規模の放電を起こし、すぐに常闇くんを押し倒して手元に炎を出した。
"苛立ち"と"苦悶"を"電気エネルギー"に変換し"具現化"させる…覚えたての"エネルギー変換"の応用技…。
「……何故分かった……」
「障害物競走、騎馬戦…これまでに君が"個性"を使ってるのを見て何となくね、確かにきみの"個性"は強いけどあまり頼ってばかりじゃ強くなれないよ?」
「……流石だ…まいった…」
常闇くんが降参した事で私も三回戦に出場が決定した。
常闇くんの上から退いて手を貸して起き上がるのを手伝ってあげたついでに出ていた常闇くんの"個性"である"
黒影"を撫でてみると意外にも喜んでくれた…かわいい。
和んだけど身体がすごい痛い…私の攻撃は"個性そのものの攻撃"ではなく、"個性で生み出したものによる攻撃"なのだ…大規模な攻撃を行えば自分にもその力が返ってくる…つまり、私は今身体中電気で焼け焦げているわけだけど…こういった痛みにはもう慣れてしまったので顔には出さずにリカバリーガールの元に行った。
ただああいった大規模攻撃は一日にもう後1〜2回が限度かなと焼け焦げた自分の身体を見て思った…今後の反省として覚えておかないと。
保健室に行くと扉の前で金髪のすごい細い人が立っていた…その人は私に気が付くと突然血を吐いた。
「!!?だ、大丈夫ですか!?」
「あ、ああ…大丈夫、ありがとう…いつもの事だ、気にしないで」
「そ、そうですか……」
吐血がいつもの事って危ないんじゃないかとか心の奥で突っ込みながら保健室の扉を見ると手術中と書かれた札がかけられていた…しばらくは入れないのだろうか。
そう思ってると中から「チュ〜〜〜」というのが聞こえてきたので、もう大丈夫だと思って中に入ると横に立っていた男の人も中に入った。
「とりあえず歩けるくらいには治癒を進めたよ」
「ありがとうございます…」
「それは短期間で酷使しまくった報いね、その歪んじまった右手を
戒めにするんだね」
「うわ…ぼこぼこ…」
「っ!?怒木さん…!?」
「元気そうだね緑谷くん、安心したよ」
「確かに元気だけどもね、こういう怪我は今後もう治癒しない!こんな破滅的な方法じゃなくてこの子のやれる別の方法を模索しなさい」
緑谷くんの歪な形になってしまった右手に包帯を巻くのを手伝っているとどうやら深刻そうな話は終わったようで、今度は私の治癒を頼んだ。
「おやまぁ、またあんたも無茶して…女の子でしょうにこんな傷作って…」
「ちょっと…新しい"個性"の使い方見つけたので試しに使ったらこの通り…」
「この通りじゃないよ全く!!そういう破滅的なとこは緑谷くんと大差ないね!!」
リカバリーガールのお説教にあははと笑って返したらぺちんと叩かれた…痛い…。
治癒が始まるということで部屋から出て行こうとする緑谷くんに気付いて声をかけた。
「緑谷くん」
「?」
「ありがとね」
「へっ……?」
「焦凍くんの事、多分きみのおかげで彼はちゃんと色んな物事と向き合えるようになると思うから…時間はかかると思うけどね」
「う、うん……そうだね!」
「まぁだから障害物競走で起こした爆風の事は許してあげよう」
「う゛……」
にっこりとそれだけ返して出て行くのを見送った後、リカバリーガールに治癒を施されて火傷がある程度治った…こんな時、自分に体力があって良かったと思う…治癒を施されてもそこまで疲れない。
本当なら、負けた後とかに来たほうが合理的だと思うのだけど…次の相手は爆豪くんだから、万全の状態で挑みたいのだ。
「…ねぇ、リカバリーガール……」
その前に一つだけ、抱えているものを降ろしても…罰は当たらないよね…?
切島くんと爆豪くんの戦いは、なかなか良い戦いだったらしい…私は見れなかったけど爆豪くんの勝ちで終わり…いよいよ三回戦、準決勝が始まる。
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