決着はまだつかない




最初の印象なんて「生意気なモブ」が妥当、それ以外に考えられなかった。
当たり前だ、あの女…入学ん時のテストで俺の真似をしてきた、"個性"の駄々被りってんならまだ…いや、それでもムカつくけど…そうじゃねぇからこそ苛立った。
よくわかんねぇ"個性"…そいつのいつもへらへらとした読めねぇ性格…全部が全部俺の神経を逆撫でするようで、正直嫌いな奴だった。

その考えをあいつが覆したのはUSJでの襲撃の時だ…あの時あいつの"個性"は暴走をしていたと後々に知ったが、強ェと…思った…戦闘的に強いわけじゃねぇ、精神的な強さを感じた…精神的に強くなければ自分に攻撃しようなんざまず考えねぇ、考える間も無く"感情"って奴に飲み込まれて本能のままに動くはずだ…最初の戦闘訓練の時の俺がそうだったから、なんとなく分かる。
俺が言うのもなんだが、あいつも俺に劣らずの負けず嫌いだ…変なところでプライドが高い、それをなんとなく悟ったのは戦闘訓練だったが確信に変ったのは体育祭の予選後…あいつは突然キレて地面に八つ当たりをしていた…そっから口調が普通のもんに変ってた。
多少違和感はあったが変にかしこまったような口調より全然良いと思ったあたり、おかしな話だ…俺があいつとまともに話したのはUSJへ向かうバスん中が初めてだったはずなんだからな。

そしてトーナメント一回戦目の途中で、苦しんでるあいつの姿を見つけたからなんとなく、そいつのとこまで行った…そう、なんとなくだ、別に深い意味はねぇ…弱みを握れるならそれはそれで良かったが、特に何も考えずに話しかけた。
でなければ俺がモブの為に目的地と離れた場所になんざわざわざ足を運んだりなんざしねぇ。
真っ青な顔で今にも死ぬんじゃねぇかってぐらいのひっでぇ顔をして平気だと強がるもんだから、俺らしくもねぇ優しさ……いや、その変なプライドをへし折ってやるつもりで背中を撫でてやっていたら元気になりやがったからこのまま背中を爆破してやろうかと本気で思ったのも事実。
そしてなんかよくわかんねぇけど、手を貸せだの抱きつかせろだの…男に言うもんじゃねぇだろと思う事を平然と言ってくるあたりこいつの男女間の区切りはどうなってやがんだと思ったけど、そういやこいつやたらあの半分野郎に付き纏われてたな…と思い出して妙に納得した、そういった感覚が周りのせいでアホになってやがんだ。
気が済んだみてぇだからそこから立ち去ろうとしたら呼び止められて宣戦布告をされた…変な奴だと思ったが悪い気分じゃねぇことは確かだ、それにこいつの強さは認めてる…俺も正直、こいつとは全力で戦ってみたかった。


女だろうがなんだろうが、ここまで…それも準決勝にまで勝ちあがってきやがった奴に手加減なんざ最初ハナからするつもりはねぇ。
ステージで対峙してお互いに笑った顔をする…初めてこいつの考えが読めた気がした、多分俺と同じ事を考えてやがる、こいつは今確実に──…。

『START!!』

──この戦いが楽しみで仕方ない──…。

開始の合図と同時にお互いに爆破をぶっ放す、煙幕を掻き分け相手を見つけ出しては互いに攻撃を繰り出す…避けては攻撃、防御なんざ無意味、互いに互いを全力で潰す事だけを考える…ハッ、とんでもねぇ女だ…麗日のそれも強かったが、こいつはその比じゃねぇ…言わば戦闘狂だ、大人しそうな顔をしながら獣のように獲物に食いかかってきやがる…、ギラギラとした目に高ぶった。

開始数分でお互いにものの見事なまでにボロボロになった、俺もあいつも、爆破をもろともせずに突っ込んでるから所々服も肌も焼け焦げてやがる…俺は切り傷もあるけどな…とことんこいつの"個性"は読めねぇ、いくつか見たことあるもんは対策できるが人間の感情なんざいくつもある上にこいつの想像力でいくらでも攻撃パターンが生まれてくる…クソみてぇに厄介な相手だってのにイラつきもしねぇ、ただただ楽しくて仕方ねぇのが不思議だ、真剣勝負とかじゃねぇ…ばかみてぇな喧嘩、この戦いはそんな気分になってくる。
そりゃそうだ、こんだけボロボロになって、まだお互いに笑ってんだからな…。

「はっ……ねぇ、爆豪くん」
「……んだよ」
「この戦いが終わったら友達になってよ」
「んなもん俺に勝ってから言え」
「だって、きみ、勝っても負けても、友達になってくれなさそうだしさ」
「なら諦めろ」
「やだね」

こんな軽口をしながらも攻撃はやめねぇ…顔面に容赦なく爆破をしようとしたがそれを反射的に避けた相手の、クソなげェ綱みてぇな髪をわし掴んだ…外野がなんか色々言ってたがこんな長い髪してやがるこいつが悪い…そのまま場外まで引き摺ろうとした、が、あいつも容赦無く自分の髪を切り落として俺の手から逃れた…躊躇無さ過ぎんだろ、女にとって髪は大切なもんじゃねぇのか。
膝くらいあった長い髪はばっさりと、腰より少し上ぐらいで切り落とされ不揃いに切られた髪がパラリと広がった…俺は手元に残った思ったより重い、相当な量の髪を遠慮なく爆破してそのへんに放り投げた。

「容赦ないなぁ…せめて髪留めくらいは回収させて欲しかった」
「知るか、テメェが躊躇無く切り落としたのが悪ィんだろが」
「元はといえば爆豪くんが髪を掴んだのが悪い」
「あんなクソなげぇ髪、掴んでくださいって言ってるもんだろが」
「目印は目立つ方がいいでしょ」
「何の話だ」
「体育祭が終わったら話してあげるよ」
「上等だ、さっさとくたばれ」

間合いを素早く詰めて至近距離で爆破させる、流石に対応しきれなかったのかモロに当たった。

「ぐ……ぅ…」

吹っ飛んだ先で呻きながらふらふらと立ち上がってくるのが見えた。
流石に審判のミッドナイトも近寄ってきたが、そいつはそれを片手を上げて制止した…こいつ、まだ死んでねぇとかどんだけだよ。

「はっ……はっ……」

それでも息は上がってるし、さっきの攻撃で白い肌は黒く焦げてる…もう大分危険な状態だろが…っ!!

「…"慈悲"、を"変換"……"超回復"…」
「!!」

みるみると火傷で黒くなった肌が元に戻っていくのが見えた…回復までできんのかこいつ…!!

「…流石に服と髪は無理か…まぁいいや…仕切りなおし、しよっか爆豪くん」
「…化けもんかよ…っ!!」
「きみと戦う為にとっておいたんだからそんな言い方しないでよ」

にっこりと笑いかけてくる怒木に汗が噴出すが俺の口も笑ってた、正直こいつを倒す算段が思いつかねぇ…間違いなくこいつは強い…だからどうした?そんな事でこの勝負を投げ出すなんざこの俺がするわけねぇだろ。

「チートだとか思わないでね?"個性"だって身体機能の一つ…この力の代償はそんなに軽いものじゃない」
「わかってんだよんなこたぁ…つまりこの勝負は分かりやすくいやぁ体力勝負って事だろ?負ける気がしねぇ」
「私も、負けたくない」

心のそこから楽しそうに笑うあいつは気が狂ってるようにしか見えねぇ…俺も笑ってるから、人の事言えねぇけど。

それからまた最初のように攻防戦の繰り返しだった、だが傷が付くのは俺だけ…あいつはでけぇ怪我を負う度に回復をしていった、クソうぜぇ…!!
それでもやっぱり体力は削れてるみてぇだ、息が上がって動きが鈍くなってきてやがる…互いに距離を取って息を整えては全力でぶつかっているが、攻撃を繰り返していくうちに分かったが俺が動いた数秒後に動くようになったというべきか…動きの違和感がどんどん分かりやすくなっていったのに気が付いた…そうか、こいつ…。
ようやくこいつを倒す突破口が見えた…威力は落ちるが当てるつもりはねぇから問題はない…片手で爆破を相手に向かって起こし、その瞬間にもう片方の爆破で飛んで背後に回って思いっきり爆破をぶっ放してやった。
煙でよく見えねぇが吹っ飛ばした怒木の側までいくと起き上がろうと少し体を持ち上げていた…しぶてぇな…。

「…お前、もう目見えてねぇだろ」
「…どうしてそう思う?」
「回復を繰り返してる内にお前の動きが鈍くなっていったからな…最初は疲労からかと思ったが攻撃の威力はかわらねぇで動きだけが鈍くなるとか矛盾してんだろが」
「……よく見てるね、せいかい」

まだ笑う気力があんのかと思ったらふらふらと俺の方に歩いてきて身構えたが、とんっ…と俺に寄りかかるように立ったかと思ったら触れてるとこから俺の傷が消えた。

「っ!?おいっ!何余計なこと…っ!!」
「…また、ちょうせんする、から…」

ずるりとその場に怒木が倒れて呆然とした…ミッドナイトが駆け寄り怒木が気絶し、行動不能の審判が下って俺が勝った。
付けられた傷と体力を少し回復して倒れやがった…最後の最後に俺の神経を逆撫でていく怒木の行動に苛立ちを通り過ぎて呆れてきた…相当なアホで、気を失っても戦意は喪失してねぇあたりとんだ戦闘狂だ…。
救護室まで連れて行かれる怒木を横目に俺はそこから立ち去った…。

《がんばって…》

倒れる瞬間、耳を掠めた小さな声は不思議と力が湧いてきた…なんて、柄にもねぇ事を思ったなんてぜってぇ言うつもりはねぇから礼もいわねぇ。





|

back / top