お互いを認め合った仲だもの
体育祭が終わった二日後の朝、雨だったので差してきた傘を閉じていると気だるそうに歩いてくる人物を見つけて目が合う。
「「お」」
二人して同じ反応したら向こうは相変わらずの目付きで睨んできたので苦笑した…ヒーロー目指してる人間の顔じゃないんだよなぁ…。
「おはよう、爆豪くん」
「…ケッ」
「えー…無視ー…?」
挨拶したのに何も返されなかった…いいけどね、別に…寧ろ返されたら返されたでこわいわ…爽やかに挨拶を返してくる爆豪くん……恐怖映像だな、うん。
すさまじく失礼な事を考えながら傘を傘置きにしまってるとそれを察したのか頭に思いっきりチョップを食らった…容赦の無い攻撃、激痛に頭を抑えて悶絶していると後ろから馬鹿にしたように鼻で笑った声がした。
「…何するの…」
「てめェが何考えてるのかなんざお見通しなんだよクソ女」
「だからって女の子に手を上げるのはどうかと思うよ爆発さん太郎くん…」
「準決勝まで上り詰めた女に手加減の必要ねぇだろ、寧ろその頭爆破されなかっただけありがたく思え、あとその呼び方やめろ殺すぞ」
「人としてどうなのって話だったのにこの理不尽っぷり、流石」
涙目で頭を擦りながら靴を履き替えて、教室にさっさと向かおうとしたら「おい」と呼び止められて振り向くとこちらを見ずに靴を履き替えている爆豪くんが目に入った。
「何…?」
「髪、なんでそこまでばっさり切りやがった…もっと残ってたろが」
「なんでって…心機一転?しようかと…?」
「…そうかよ、とりあえず手出せ」
靴を履き替え終わってから鞄に手を突っ込んで何かを探している爆豪くんに首を傾げながら手を差し出す…なんだこれ…なんかすごいこわいんだけど。
「やる」
差し出した手にぽんっと小さな袋が置かれて唖然としてそれを見る。
「…なにこれ」
「見りゃわかんだろが」
「いや、あけないとわかんないし…」
「ならあけりゃいいだろ、聞くな…言っとくが俺の趣味じゃねぇぞ、いらねぇからてめェにやるだけだからな!!?」
なんかすごい必死に言い訳してる爆豪くんの声をBGMに渡された小袋のテープを剥がし、中を取り出すとシンプルに星が1つ2つ付いているだけの金色のピン止めが出てきた…結構かわいい…。
「え、何…え?どうしたのこれ」
「うるせぇ黙って受け取っとけ聞くな死ね」
「え、えー……わかった、ありがとう…?」
「ふんっ…」
なんかよくわからないが貰えるなら貰っておこう…爆豪くんは意味も無くこんなのを渡すような人じゃない、しかも新品なんだよ…わざわざ買ったっぽいんだよ…受け取らなかったら絶対怒るやつじゃん…。
ポケットに手を入れながらのそのそ歩き始めた爆豪くんの後ろを付いていくように私も歩き始める…どうしようかな、せっかくだから付けようかな…?歩きながら包装からピンを出してそれを左に2本、右に1本付けた所で急に立ち止まった爆豪くんの背中に顔をぶつけてしまってまた思いっきり睨まれた、今の見てなかった私も悪いけど急に立ち止まった爆豪くんも悪くないかな!?
「暇なら教えろ」
「え、何を」
「ハァ!?てめぇが体育祭終わったら教えるっつったんだろが!!目印がどうとかって話だよ!!」
「あ、ああ!あれね!!というか主語が無いと分からないよ!!」
「分かれやクソが!!」
「そんな無茶苦茶な…」
ぶつぶつと言っていたら「早くしろ」とまた頭にチョップを食らわされた…力の加減ができてないからすごい痛い…今更だけどグーでやられてるんならチョップっておかしいな…普通にげんこつに近いわ…。
とりあえずその話は私に家族がいない上に
敵に襲われた時のショックだかで記憶が無い事、それで今は消太くんに引き取られて一緒に住んでるという話を知らないといけないのでそのあたりの事をかいつまんで話した後、本題の髪の話をした。
まぁただ単に"家族"という存在を諦め切れなくて、自分が持っているもので目立つものと言えば銀髪という少し珍しい色の髪だと思ったからそれを目に付きやすいように髪を伸ばした…その姿で全国放送されるであろう雄英の体育祭で目立てば注目はされるだろうという安直な考えだと…教室に付くまでに全て話した。
意外にも爆豪くんは静かにそれを聞いていたし、歩幅も…少し私の前を歩いてたけど合わせてくれていた。
「……んで、家族は見つかったのかよ」
「いや、見つからなかった…流石に10年も情報が無いと警察の方もどうする事もできないみたいで……諦めろって言われた」
「………」
「だからもう伸ばしててもしょうがないから思いきって切ったわけだよ、似合う?」
「アホか」
目は相変わらず合わせてくれない、でもこれで私が話せる事は全部話したし多分爆豪くんもこれ以上何も聞かないだろう…他人に興味無い感じなのに自分からそういう事に首を突っ込んでくる方が珍しい気がする、約束は守れって事なんだろうけど。
ただ話し終わった後のこの無言がすごい居心地悪い…。
「…あ、連絡先交換する?!」
「あ゛ぁ!!?んでてめェとそんなことしなきゃなんねぇんだよ!?」
「友達は多い方がいいでしょ」
「お前と友達になった覚えはねぇ!!」
「まぁまぁそう言わず、これ私の連絡先ね」
「聞けよクソ女!!!」
「いつも思うけど爆豪くんの肺活量すごいよね、あと私クソ女じゃなくて怒木日詠だからね?」
ギャンギャン叫んでキレてる爆豪くんを適当にあしらいながら教室に入ると先に来ていた切島くんと瀬呂くんに「すげぇ組み合わせだな」とか「怒木髪切ったんだな」とか挨拶もそこそこに話しかけられた、そこから色んな人に話しかけられなかったかとかそういう話になった…席に鞄を置きながらその話に私も参加してHRまで時間を潰した。
back /
top