動き、蠢き、ざわめきだす…
時が過ぎるのも早いもので、春が終わり気温も入学した時よりも上がり、はやくも夏休みが近い…あんな事があっても私達の日常は簡単に過ぎ去って過去のものになると実感した。
夏休みが近いといってもヒーロー科に長い休みは無い、ただでさえ授業が週6日制の雄英だがヒーロー科に至っては土曜以外は7限まである上に他の科は4限までの土曜も6限まであるというハードっぷりなのだ…当然夏休み期間も短くなる。
しかしいつも通り学校に登校という形でなく、林間合宿となるとテンションが上がるというもので、消太くんがそれを口にした途端に盛り上がった。
「ただし、その前の期末テストで合格点に満たなかった奴は…学校で補習地獄だ」
「みんな頑張ろーぜ!!」
ああ、そうか…夏休みの前に期末テストがあったのを忘れてた。
筆記に加えて期末は演習試験もあるんだったか…筆記はまぁ授業ちゃんと聞いて復習とかしてればなんとかなるだろう、あの反応からして上鳴くんと切島くんあたりは勉強苦手なんだろうけど……問題は演習だけど…考えてても仕方ないのでこのあたりは自主的に練習するなりトレーニングするなりするしかない。
───…
「全く勉強してね───!!」
六月も終わりに近付き、期末テストまであと一週間を切っていた頃…突然上鳴くんが叫び始めた。
「体育祭やら職場体験やらで全く勉強してね───!!」
そうだね、入学してから行事やらなんやらが多くてなかなか勉強をする時間が取れてなかった…中間はまぁまだ範囲は狭かったのでなんとかなったわけだけど…そもそも私は消太くんに失望されたくない一心で家に帰っても予習復習は毎日してるから問題ない、百ちゃんに並んで1位をとって消太くんにドヤ顔したら撫でられたのは記憶に新しい…がんばった甲斐があった。
「アシドさん上鳴くん!が…頑張ろうよ!やっぱ全員で林間合宿行きたいもん!ね!」
「うむ!」
「普通に授業うけてりゃ赤点は出ねえだろ」
「言葉には気をつけろ!!おい怒木!お前相澤先生と住んでるんだろ!?どこが出るとか演習で何するとかそれとなく聞けねぇの…!?」
「…私テスト近くなったら学校でしか消太くんと話せないから無理だね」
「え!?そうなん!?」
「ただでさえ雄英の先生と住んでるって色々言われるのに、その上テストでも不正だとか色々言われて問題になるのが嫌だからそのあたりの線引きを入学が決定した時から決めてるんだよ」
それに加えて私の"個性"は"感情"なんだ…私が何かを言われるのは問題ないけど、私のせいで消太くんがいわれの無い事を言われるのは耐えられない…それを分かっていたから二人で話し合って決めたのだから。
「お二人とも、座学なら私お力添え出来るかもしれません」
「ヤオモモ───!!!」
なにやら落ち込んでいるようだったけど皆に頼られて嬉しそうにしてる百ちゃんがかわいくてほっこりした…私も一応教えられるのだけど学校ぐらいでしか教えられないので家が大きい百ちゃんが適任だろう、私が出る幕じゃない。
お昼になっても期末テストの話になった…やっぱり皆演習の方が気になるらしい。
焦凍くんの前の席でいつものようにもぐもぐとご飯を食べる、今日はランチラッシュのご飯が恋しくなったのでお弁当を持ってきてない…焦凍くんには事前にメールをしておいたので何も言われなかった…けどやっぱり蕎麦なんだね…私は緑谷くんと同じカツ丼を食べてる、お米がおいしい。
途中B組の物間くんが突っかかってきた…この人相変わらず煽りスキル高いなぁ…体育祭前に一度私の"個性"を知らずにコピーして暴走させた事で彼にはすごい苦手意識を持たれてる…というか避けられてるんだけどB組の女の子達とも仲良くなっているのでその経由で時折話しかけたりしてる。大抵無視されるか皮肉を言われるかだけど。
それで一佳ちゃんが毎回止めるんだよな…と思ったら物間くんに手刀を入れて止めてた、さすが…その際に物間くんのご飯を取り上げているから物間くんのご飯は無事っていう、優しいなぁ…。
それから演習の情報を教えてくれた…入試の時のロボット、ということは体育祭で見たあのロボット相手か…すこし安心したかもしれない。
というか焦凍くん全く反応しないで蕎麦を黙々と食べてるんだけどこの人ほんと食べてる時話題無いな…!!友達いるんだから少しは話しなよ!!
放課後にはその情報がA組内にも広がり上鳴くんと三奈ちゃんが安心したようにしていた…あの二人は対人だと調整が難しいから仕方ないね、私もだけど…大分人の少なくなった教室にいる内の数人と話しながら勉強の分からない所を聞かれてそれに答えていると爆豪くんの怒鳴り声に驚いてそっちを見るとかなり荒れているようだった。
宣戦布告…と言えばいいのか分からないけど、なんか一方的に緑谷くんと焦凍くんに自分の意志を伝えて教室から出て行った…久々にこわい爆豪くんを見た気がする…。
気になった所でどうする事もできないし、時間は止まってはくれないのでそれからテストまでの数日間、私達は勉強に勤しんだ。
▼
日が沈み、店の明かりと酔った大人達が蔓延る街…そこに佇む一つのビル内にあるバーの扉を開くと男が二人が扉を開けた主に少し驚いたような表情で出迎えた。
そんなことも気にしない様子で扉を開けた主は笑みを浮かべて語り始めた。
「はじめまして、あなた達が噂に聞く"
敵連合"の方々かな?」
「…誰だお前、餓鬼が来ていいとこじゃねぇぞ」
「ごめんね、自己紹介ができるほどちゃんとした名前も経歴もろくにないから誰かは説明できないんだ…だから通してる適当に付けた名前を名乗らせてもらうよ、ボクはヨミ…単刀直入に言わせて貰うけど僕をあなた達の仲間にしてもらいに来た」
「わけがわからん…おい、黒霧…この餓鬼を今すぐ追い出せ」
「まぁ、仲間になりたいと仰ってるのですし一応話はきいておきましょう…ヨミ…と言いましたね、何故"
敵連合"に入りたいのか、どうやってこの場所を突き止めたのか教えてもらっても?」
「ボクは情報収集は得意な方でね?雄英襲撃の話が流れた時から面白い奴がいるなぁって、気になってずぅっと情報を集めてたんだ…まぁなかなか掴めなかったけど、ヒーロー殺し・ステインの事からようやく情報を掴めてここに来れた」
笑って質問に丁寧に答える相手に顔に掌を付けたまま顔を歪ませる死柄木と平然と相手の言葉を聞いている黒霧に、少年とも少女とも判別がつかない…少なくとも成人には満たないであろうヨミと名乗った人間は笑顔をずっと向けていた。
「"
敵連合"に入りたいのは面白そうだから…っていうのと、あなた達の背後にいるであろう方に少し話があってね」
「!」
その言葉に場の雰囲気が変わった…そしてそれを聞いていたかのように備え付けられていたテレビが付き、音声だけが響いた。
『いずれ迎えに行かせようと思ったんだが、自分から来てくれるとはね』
「
脳無…だっけ?あれの存在を知ってボクが動かないわけ無いでしょう」
「先生…あんたの知り合いなのか?」
『少なくとも面識は無いがその子の"存在"は知っているよ、信頼して大丈夫だ…仲間にするかは弔に任せるけどね』
「…おまえ、"個性"はなんだ」
死柄木の問いに一瞬目を丸くし、再び…否、先程よりも心底幸せそうなうっとりとした笑みを浮かべながら口を開きその問いに答えた…。
「ボクの"個性"は──…」
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