常に壁は高く




──演習試験当日──

「それじゃあ演習試験を始めていく」

それぞれがコスチュームに着替え、学校専用のバスが停まった駐車場近くに集まった…が、教師陣が多く8人…と、マイクさんの隣に見知らぬ男性が一人…少なくとも雄英の教師ではない…誰だ…。

「この試験でももちろん赤点はある、林間合宿行きたけりゃみっともねえヘマはするなよ」
「先生多いな…?」
「諸君なら事前に情報仕入れて何するか薄々分かってるとは思うが…」
「入試みてぇなロボ無双だろ!!」
「花火!カレー!肝試───!!」
「残念!!諸事情あって今回から内容を変更しちゃうのさ!」

話してる最中消太くんが何かモゾモゾと動いてるなと思ったら消太くんの首元から校長が出てきた…何故そこから…そこにいる必要はあったのか…なんにせよ、

「…羨ましい…」
「…おまえが先生の事好きなのは知ってるが、その気持ちはどうかと思うぞ…」
「好きな人とはできるだけ側に居たいと思うのは普通だよ…」
「……それは……分からなくもねぇが…」

そんな事を焦凍くんと話してる内に変更の理由を校長が話してくれた、そして試験の内容は教師側が決めた二人一組のペアと対戦する教師による戦闘…ペアになる人と戦う教師がどんどん発表されていく中、私一人が呼ばれなかった…どういう事だ…。

「あの、私は…」
「おまえは…こいつとだ」
「よろしく、日詠ちゃん」

親指で指され、消太くんの少し後ろに立っていた誰だか知らない人がにっこりと笑って手を振ってくれたので一応お辞儀をしておいた…ほかにペアになれる生徒はいない、つまりそこから出る答えは一つ…。

「…一対一、ですか…」
「そうだ、名前は知られてないがこいつも一応雄英出身のプロだから油断すんなよ」
「……はい」
「それぞれステージを用意してある11組一斉スタートだ、試験の概要については各々の対戦相手から説明される。移動は学内バスだ、時間がもったいない速やかに乗れ」

言われた通り私が乗るバスまで行くと対戦相手である男性が手を差し出してくれた…驚いて相手の顔を見ると笑いかけて「お手をどうぞ」と言ったので言われた通り差し出された手に自分の手を乗せてありがたくエスコートを受けた…バスに乗る際、横目で遠くで同じバスに乗り込んでいる焦凍くん達を見てすぐに逸らす。

「…一応自己紹介しとくね、俺のヒーロー名は"レーベ"…イレイザーさんの後輩で、今回は助っ人として呼ばれたんだ」
「…レーベさん…?すみません、知らなくて…」
「それは無理もない、俺はプロを名乗っててもフリーだし…まぁあの人と同じアングラ系ヒーローって奴かなぁ…メディア嫌ってるわけじゃないけど、追っかけられるのは好きじゃない、俺は追っかける方が好き」
「その割りには見た目派手ですよね」
「あ、意外とざっくり来るね…うん、まぁ…仕方ないよな、こんな見た目じゃ…」

金髪に黒いシャツにスーツのような服…消太くんより人の目を気にしたような格好だけどなんというか…チャラい…どこのホストだよってくらいなんかチャラい…見た目だけ見るとほんとうにヒーローかと疑えるくらいだ…。
それを自覚してるのか苦笑して遠い目をしている…根はいい人なんだろうな。

「そういえばさ…」
「はい?」
「理不尽だとか、言わずに受け入れちゃうんだね」
「…この試験の事ですか…?」
「そ」
「…そりゃ、私だけどうして一対一なのか疑問に思ってますけど…消太くんは意味も無くそういう事考えませんから…」
「信頼してるんだ」
「はい」
「……ふーん…」
「なにか…?」
「なんでも?ほら着いたみたいだし降りようか」

手を引かれバスを降りると住宅街に似せて作られたステージが目の前に広がった。

「制限時間は30分、君がやるべき事は「俺にこのハンドカフスを掛ける」か「このステージからの脱出」の二択…脱出の選択肢があるのは実力差が大きい場合は逃げて応援を呼ぶことが賢明…っていうのは何度かヴィランに襲われた経験のあるらしい君はよく知ってると思うけど」
「はい」
「よろしい、今回行われるのは極めて実戦に近い状況での試験…君は俺を"ヴィラン"だと認識し、会敵かいてきしたと仮定したものだ…この試験は生徒側きみたちの判断力が試される」
「逃げも戦闘も封じられてる気がしますけど…」
「あはは、まぁ君の場合はね?でも安心してくれていい、こっちはこっちでちゃんとハンデを用意してあるから…超圧縮重りだって、俺の体重の約半分…って言ってたけど俺の場合はもう少し重くしてあるらしい…そして他の人は手足に付ける奴なんだけど俺のは着るタイプになってるね。古典的だけど動き辛くもなるし体力も削られていく…ついでに俺は女の子相手にそんなに酷い事できないからそこもハンデになるかな」
「あなた本当にヒーローですか」
「紛うことなきヒーローだが?」

重りが付いた少しごつめのチョッキを着ながらへらへらと笑って見せるレーベさん…細身なのに重りをつけて平然としてるあたり身体を鍛えてるというのは間違い無さそうなんだけど…紳士的なチャラさってなんかよくわからないキャラ付けが私の中でつけられてきている…上鳴くんあたりとかと気が合いそう。

「さて、説明も終わったし位置につこうか…あ、その前に俺から一つアドバイス、どんな感情でも自分自身が受け入れなければ君は強くなれないよ」
「…どういう意味ですか…」
「それは自分で考えるべきだ、君は考える力も判断力もコミュニケーション能力も認められてプロと一対一の戦いができるわけなんだから…まぁ勝ちたければ体育祭の時くらい全力でおいでって事くらいかな、俺があと言えるのは」

そういって移動を始めるレーベさんに続いて伝えられたスタート地点へと移動した。
答えは教えてもらえない…教えてもらえるとも思っていなかったので別にいいのだけど、時間内に考え、答えに辿りつけられるか…それさえテストされているようで気分が悪い…。

『皆位置についたね』

ステージの中央に着いた時放送が流れた…この声はリカバリーガールだ。

『それじゃあ今から雄英高1年期末テストを始めるよ!レディイイ───…
ゴォ!!!』

スタートの合図が出た瞬間すさまじい大きさの咆哮が聞こえ、その音の衝撃波で大抵の建物のガラスは割れ私も軽く吹き飛ばされた…と思ったらいつの間にか近くにいたレーベさんを視覚で認識する前に目の前が炎で覆われた──…。

「言い忘れてたけど……我々も君達を本気で叩き潰すつもりだから、死ぬ気で来るといい」





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