入学と再会




合格通知が来てから卒業までに入学に必要なものはちゃんと揃えておけと消太くんが言ってくれたおかげで入手までに時間がかかりそうなものから順番に少しずつ準備をしてきた。
それでも一番時間がかかったヒーロースーツのデザインは消太くんのアドバイスの元、なんとかできたという感じだったけれど…。
私の場合は使ってみてから調整という形で後に申請した方が良いと判断したから、ある程度強度に作ってもらえればとだけ申請しておいた。
こういった時に教師でありプロである消太くんが近くにいて良かったと、少しだけズルをしている気持ちもあったが感謝をしきれない、分からない事があれば聞けと言ったのは消太くんなのだからヒントやアドバイスを貰って自分で考えているうちは問題はないだろう。
問題があると言えば教師と生徒が同じ家に住んでいるという事では、とふと思って消太くんにその話をした所、特に問題は無いが私が気になるなら一人暮らしをしろと言われた。
そのあたりのお金は消太くんが出してくれるとの事だがそれはそれで気が引けてしまう…というより長年一緒に暮らしていて思っていたが消太くんはご飯をきちんと食べている姿を見たことが無い、幼い頃は作ってもらっていたので作れはするのだが、本人は大体が10秒チャージで終わらせる、全く健康的じゃない…だから私はご飯を作れるようになってこれまで朝と夜だけでもちゃんと食べて貰っていたというのに私が離れたら彼はまた前のように10秒チャージして寝るだけの生活をしそうですごく心配になるわけで…。

「お前は俺の母親か何かか」
「消太くんがちゃんと食べないのが悪いんです!!」
「食べてるよ、ゼリー」
「10秒チャージでちゃんとした栄養は取れませんからね!?」

心底めんどくさそうな顔をしながら私が作った味噌汁をずずっと飲んでから「正しい教育をしすぎたか」と小さく愚痴をこぼしていたが聞こえなかったふりをした…ただ少し怒ったので空になった消太くんのお茶碗にご飯をまた盛って置いたら眉をひそめて私を見た。


「…こんなに食えるか」
「食べてください」
「お前が食べろ、育ち盛りだろ」
「食べなかったら今後お父さんって呼びます」

今度は嫌そうな顔をして少し黙った後に溜息を吐いてご飯を食べ始めた…何故だか消太くんは引き取ってくれた時から父と呼ばれるのを嫌がっていたから小さい頃から私は消太くんとまるで友達のように呼んでいた。

(嫌がるわりにやってる事は父親みたいなんだよなぁ…)

そもそも親というものを思い出せないからこれはただの私の感覚だけど、消太くんの私に対する接し方は父親という存在のそれと似ているように感じてしまうのだ…そして恐らく消太くんも私を自分の子のように扱ってくれているようなそんな気さえしてくる…そうでなければこの「相澤消太」という人物は元々面倒見が悪くないとは言えここまで私を育てる事はしなかっただろう、時々だけど私の為にと買ってきてくれたぬいぐるみ達は今でも私の宝物だった。
そんな事を思っているとご飯を食べ終わった消太くんは箸を置いてお茶を飲むと一息ついて「ごちそうさん」と言って席を立った。

「俺は先に行くが遅刻しないようにな」
「え、一緒に行っちゃ駄目なんですか?」
「……はやく支度しろ」

溜息を吐いてふらふらと玄関に向かっていく消太くんに返事をして食べ終わっていた食器を急いで片した…洗うのは帰ってからでいいかと水に浸けるだけして椅子にかけてあった鞄を持って小走りに玄関に向かった。

「制服おかしい所無いですか?」
「スカートが短い」
「普通の長さですよ!?」

ちゃんと計ってもらったのだからそのあたりの事は大丈夫な筈だ、というか中学の時もそんな事を言われた気がする…。
なんか…薄々思ってたけど消太くんちょっと過保護な所があるよなぁ…と苦笑しながら、高校生活の始まりと憧れのヒーローへの第一歩を踏み出した。



学校に着いてから消太くんとは別れて私は教室に向かった。
消太くんに付いてきたからか結構早い時間に着いたせいで生徒が居ない長い廊下をとぼとぼと歩いてあたりを見渡す。
異形型の個性を持つ生徒や先生の為だろうか、他の学校よりも広く、天上も高い廊下を一人でゆっくりと見ながら歩いているとなんだか少し冒険をしている気分になってくるのと同時にこれからここで色々学んでいくのだなと改めて心を入れ替えて小さくガッツポーズをしながらよしっと意気込んでから、いつの間にか着いていた教室の前に立った。

(色々とでかい…)

流石雄英と思いながら恐る恐るそびえ立つでかいドアを開いたけど教室はまだ誰も来ていないのか静かだった…とりあえず席順は決まってないようなので適当に座って暇つぶし用にもって来ていた本を読もうを開いた時、教室のドアも開いた音がしてそっちを向いたら赤と白のツートーンカラーの髪をもった男の子も少し驚いた顔をしてこちらを見ていた。

「お前…」
「焦凍くん!!」

思わず立ち上がってしまってそれから駆け寄ろうとしたけどそれに気付いたのか焦凍くんは静かに歩いて近付いてきたので大人しくしていた。
近くまで来ると焦凍くんも私の近くの席に座ったので私もはっとしてまた座り直した。

「焦凍くんも合格してたんですね!同じクラスになれて嬉しいです!!」
「まぁな…お前なら合格してると思ってたけど同じクラスなのは俺も驚いた」
「あ、というか覚えていてくれてたんですね」
「今更か、少し前まではたまに連絡取り合ってただろ」

呆れた顔をされたけどメールをしあったのは1年くらい前の話でそれからは受験もあるだろうと遠慮して連絡を途絶えさせていた…大体一方的に私が送る側で焦凍くんはそれを返すという感じだったので私が送らなければ途絶えるのは当たり前なのだが…。
推薦試験の時にも一応会ってはいたのだけど、試験という事でお互いに軽く挨拶だけしただけだったから会話らしい会話はこれが久々で、そして顔を合わせるのは初めて出会った時から数回くらいだったので覚えていてくれた事が嬉しくてまた花が出そうなのを必死に抑えた…一つだけぽとりと床に落ちたのは見なかった事にしよう。

「…お前は相変わらず可笑しな奴だな」

突然そんな事を言われてきょとんとしてしまうと静かに笑われてしまった…焦凍くんの笑った顔はなかなかレアじゃないかな!とは思ったけど何故笑われたのか分からない、そして可笑しな奴と言われる理由も分からない…でもそれが悪い意味ではない事は焦凍くんの雰囲気でなんとなく分かったから私も返事の変わりに笑って返した。




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