Black or White
少しだけ昔の話をしよう。
これは生まれながらにして不幸を背負ってしまった子どもたちの話…とても残酷な過去のお話。
むかしむかしあるところに小さな「けんきゅうじょ」がありました。
そのけんきゅうじょでは"個性"と呼ばれる力のけんきゅうをしていました。
しかしそのけんきゅうじょで行われていたけんきゅうは"個性"の謎の解明ではなく、"強い個性"をもった
お人形を作り出し、より強く、より量産しやすい"生物兵器"をうみだすためのけんきゅうが行われていました。
そのけんきゅうじょにいる子どもは殆どが"しけんかん"の中で生まれ、大人たちのいう通りに日々じっけんを行い、時にはころしあいをし、時にはめいれいされ自らいのちを絶ちました…けんきゅうじょにいた子どもにとって大人のいうことは絶対であり、それが幸せであると教えこまれ、愚かにもそれを疑いもしませんでした。
だけどけんきゅうはなかなか上手くいきません。
じっけんの殆どは失敗し、まともに生命活動のできるこどもがつくれず、成功したかとおもえばすぐにしんでしまって"兵器"としては使い物にはなりませんでした。
大人たちはかんがえました、そして思いつきました。
そうだ!
人間をつくることから失敗をするなら元からある
人間を使えばいいんだ!!
それから大人たちは子どもをさらってきてはその子どもたちで実験を行いました…しかしいくら実験をしても大人たちの納得のいく"兵器"はうまれませんでした。
これ以上こどもをさらえば問題は大きくなり、いずれけんきゅうじょも「せいぎのみかた」にみつかってしまうだろうと大人たちは考えます、つかまってしまえばけんきゅうどころではないからです。
しかたがないので大人たちはその場にいる子どもをどうにか"兵器"にできる方法を探すことにしました…そしてようやく大人たちは理想に近い
命をつくりだすことに成功しました。
大人たちはよろこびました、そして更にその子どもの遺伝子を元に、もっと強くした子を作ろうとまた研究の日々を続けました。
とても長い間けんきゅうは続けられました。
そのとてつもない年月は大人たちの理想に近いものをうみだし、そして更に続けられたそのけんきゅうはようやく実を結びました。
"大人たちの理想の生物兵器"…その事実がつくりだされて間もない仔に科せられた過酷な運命のはじまりでした。
大人たちの理想を叶えた女の子は他の「失敗作」と呼ばれた"じっけんたい"の子よりもっとひどい実験をくりかえし、からだのキズはたえず、いつもぼろぼろでした。
しかし女の子はなにもいいません、「失敗作」の子のように自分の意思を持っていないわけではない、本当の"ヒト"に近い存在にかかわらす、女の子は大人たちにしたがっていました。
「どうしてなにもいわないんだい?」
あるときひとりの子どもが女の子にそう問いかけてきました。
「 」
女の子が光のないひとみでこたえました。
子どもはそのこたえにすこしおどろきましたが、うれしそうに笑いました。
そしてその数日後、けんきゅうじょとおんなのこはきえてしまいました。
▼
口の中に入っていた黒い水を立ち上がりながら地面へと吐き出し、あの人の近くで地面へと座り込み……多分あれは何か考えているんだろう、きっと、バクゴーくんだけでもこの場から逃がす方法を…。
あの子はいつだってそうだ、自分の事は考えない…そういったところが、ボクはスキだったしキライだった…。
「全て返してもらうぞオール・フォー・ワン!!」
「また僕を殺すかオールマイト…ずいぶん遅かったじゃないか」
あの人とオールマイトが激突した事で衝撃波はうまれて…なんかもう色々と、ナカマのひとたちも吹き飛ばされた…ボクもかぶっていたフードがはずれてしまったけれど気にせずに彼女に近付いて支えた。
一瞬驚いた顔をされたけど、ボクの姿をみて泣きそうな…複雑そうな顔にかわった…きっと彼女は自分の記憶を思い出したんだろう…あの人への恐怖で思い出してしまうなんて、可哀想なコトをしてしまったけど…そのおかげでボクの使命はもうあと一つになったってことだ……二つだったかな?まァ、数はどうでもいいことだ。
可哀想だけど、ボクは彼女の"居場所"を奪わないといけない…立ち上がってあの人とオールマイトに少し近付いた、オールマイトは…こわいね、すごくこわい…それでもボクは「平和の象徴」とも呼ばれるヒーローに真実を伝えなきゃいけない。
「お話中スミマセンね…一つ聞いていいかい、オールマイト…アンタさっき「全て返してもらう」って言っていたけど、ソレに
怒木日詠は入ってるのかい?」
「どういう意味だい…?そんなこと」
「そんなこと
当たり前…だと?ほんとうに?彼女の正体を知ってもそう言っていられるかい?それじゃあ教えてあげよう、怒木日詠の正体はね」
「っやめ…!!」
ああ…ゴメンね、そんな顔をさせたくはなかった…それでも仕方のないこと、キミがヒーローの元になんかいるから…憎むべきヒーローなんかを目指してしまうから…ボクは悪にならなきゃいけないんだ…ボクはキミの味方にはなれない、どうか恨んでくれ、憎んでくれ…そうしていつの日かボクを──…。
「アンタらが"
敵"と呼び、カテゴライズした
こちら側の人間なのさ」
救ってくれ…。
▼
その場がシンと静まり返った…アイツが
敵?そんなワケねぇだろ、何ふざけた事ぬかしてやがる…!!
イライラした…変なことぬかしやがる
敵にも…座り込んだまま何も言い返さねえ怒木にも…だから立ち上がって座り込んだ怒木の胸倉を掴んで…それから喝でもいれてやろうとした、だがそいつの顔を見て言葉に詰まった…なんでお前が一番絶望してんだよ…。
「まァ正確には"生物兵器"であって人間ですらないんだけどね」
「何を馬鹿な…!!」
「その子が言っている事は本当のことだよオールマイト、143号…今は怒木日詠か、彼女はね僕が君たちの為に作らせた兵器なんだ」
少し離れた場所でオールマイトと
敵共が話している間も怒木は震えていた…どっかで似たようなこいつの姿を見た気がする…あれは確か、体育祭の時だったか…。
「……本当なのか」
「………」
気が付いたらそんな事を聞いていた。
ビクリと一瞬震えたがそのまま小さく頷かれた…なんで頷くんだよ、記憶失ってんだろ、そんな顔するくらいなら
敵じゃねぇって言えばいいだろ…。
震えた小さい声で謝り続ける怒木から手を離した…なんで俺までショック受けてんだ。
「……怒木少女の事は後でゆっくり事情を聞かせてもらう、まずは爆豪少年と怒木少女を取り返す!そして貴様は今度こそ刑務所にぶち込む!貴様の操る
敵連合もろとも!!」
「それは…やる事が多くて大変だな、お互いに」
敵のボスの片腕が膨れあがったかと思った次の瞬間、オールマイトは遠くに吹き飛ばされ、その衝撃で俺も、他の
敵共もまた少し飛ばされる。
「オールマイトォ!!!」
「心配しなくてもあの程度じゃ死なないよ、だから…ここは逃げろ弔、その子たちを連れて」
ペキペキと音を鳴らしながら
敵のボスの指の形状が変わっていったかと思えば気絶してるワープ野郎にそれを突き刺して"個性"を強制的に発動させやがった。
少ししてその場に戻ってきたオールマイトと
敵のボスがまたぶつかり合いはじめ、他の
敵共も動き始めた。
「行こう死柄木!あのパイプ仮面がオールマイトをくい止めてくれてる間に!
コマ持ってよ」
「めんっ…ドクセー」
一斉に襲い掛かってきやがる
敵共の攻撃をなんとかかわしながら距離を取る。
俺がこの場所に居ると今敵のボスとぶつかってるオールマイトの邪魔になる…けど囲まれて逃げられるような状況じゃねぇ…こいつらも緊急事態、さっきまでと違って強引にでも俺達を連れてく気だ…怒木は敵か味方かわかんねぇけど、あの様子じゃどっちにしろ役に立たねぇ…6対1…いや、もう1人いた筈だ…見あたらねぇってこたぁどっかに飛ばされたままか…?とりあえずこのクソ仮面には触られちゃいけねー!
考えろ、この状況でどうにか逃げる方法を…もう二度と捕まってたまるか、これ以上オールマイトに迷惑をかけてたまるか…っ!!
視界の端に居る未だに座り込んでやがる怒木にイライラした、敵はまだあいつを狙ってるから見捨てるわけにもいかねぇ!よく見れば襲撃の時に見た黒い炎が出てやがった、ふざけんな、こんなとこで暴走なんざしてんじゃねぇぞクソ女ァ!!!
「っ…!!おいクソ女!てめェいい加減にしろよ!!!」
「……」
「
敵の言う事なんかに一々反応してんじゃねえ!!今おめェがしてえことはなんだ!?
敵になることかよ!!!」
「そ…れは……」
「記憶を取り戻したらてめえはもうヒーローになることを諦めんのか!?クラスの連中を…イレイザーヘッドを裏切るのかよ!?てめえの夢に向ける覚悟はそんなもんだったのか拍子抜けだなオイ!!」
「……っ」
「何も分からねえなら前を見やがれ!!何があっても諦めねえ諦めの悪さがてめェの強さだろが!!いつまでもクソくだらねーことでウジウジしてんじゃねえよクソがッ!!殺すぞ!!!」
「キミも、くだらない事を言ってるとコロスよ?」
っこいつ、いつの間に…!!
「ボクはキミみたいな子がキライだ…143号は、あの子はヒーローなんかにさせない、絶対に!!!」
俺はそいつの攻撃に反応できなかった…せめて受身でも取ろうとした瞬間、そいつの体に黒い鎖が巻き付き引っ張られて後ろに倒れた。
「…私の正体を知って「くだらない」なんて言えるの、多分爆豪くんだけだよ」
黒い炎を纏いながら、困ったように笑って…この隙にと遅いかかって来やがった
敵共をあいつは"個性"を使って余計なお世話にも俺を守った。
「…遅ぇんだよ、バカが!!」
そう言ってやったら前みたいに笑ったから、俺は少しだけ安心した。
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