ベストセンス決定戦!
「わああダメダメちょっと待────!!!」
「オールマイトだらけだオタク部屋だ!!」
「憧れなんで…………恥ずかしい…」
緑谷の制止の声も虚しく部屋を暴かれた事でその場におかしな雰囲気が流れ始める…しかし意外と楽しいと思い始めたのもまた事実であった。
「フン、下らん…」
格好はつけているが自室の扉の前に寄りかかり遠まわしに入らせたくないと言っている常闇だったが葉隠と芦戸によってその守りも虚しく、あっけなく部屋を暴かれてしまった。
「黒!!怖!!」
「このキーホルダー俺中学ん時買ってたわあ」
「男子ってこういうの好きなんね」
「私も結構こういうの好きだよ常闇くん!」
「出ていけ!!!」
常闇の心に小さな傷を作ったところで次は青山の部屋に入ったが全体的にキラキラとした装飾が多く、本人曰くまばゆい部屋だった。
しかし想定の範囲内という事であまり反応されずに終わった。
次に峰田の部屋…は、全員が危険を感じ取ったのかスルーされ3階に迎い、尾白のあまりに普通な部屋を見、飯田の難しそうな本やら眼鏡がやたら並べられている部屋の後上鳴の手当たり次第に集めたようなチャラい部屋や、口田の普通ではあるもののペットのうさぎがいる部屋を見た後、言われっぱなしだった男子が釈然としないという事で男子の競争心を駆り立ててしまい女子を含めた第一回A組ベストセンス決定戦が始まってしまった。
「えっとじゃあ部屋王を決めるって事で!!」
「部屋王」
「別に決めなくてもいいけどさ」
「…なんかおかしな大会が始まっちゃったね焦凍くん」
「そうだな、早く終わらせて欲しい」
「眠いの?」
「ああ」
興味無さそうにしている轟の姿に苦笑を漏らす日詠は今の流れに少なからず緊張していた…男子だけの部屋を見て回って終わるとは正直思っていなかったが自室を好意を持っている異性に見られるというのはなかなかに勇気のいるものである…静かに早まる鼓動を抑えている傍ら、また轟も顔には出さないものの内側は期待と不安でいっぱいいっぱいになっていた。
そうこうしているうちに4階に上り、その階の男子の部屋を順番に見ていこうと思ったが、爆豪は先に寝るという事で切島から見ていくことになった。
「じゃあ切島部屋!!ガンガン行こうぜ!!」
「どーでもいいけど多分女子にはわかんねえぞ、この男らしさは!!」
「……うん」
「彼氏にやってほしくない部屋ランキング2位くらいにありそう」
「アツイねアツクルシイ!」
「ホラな」
「でも切島くんらしい感じするよ!!大丈夫!!」
「怒木…お前こういうフォロー結構下手だな…」
「えっ」
「次!障子!!」
「何も面白いものはないぞ」
切島だけでなく日詠も少々傷付いた様子で次の障子の部屋へと迎い、部屋に入ると必要最低限の物以外何も無かった。
「面白いものどころか!!」
「ミニマリストだったのか」
「まァ幼い頃からあまり物欲がなかったからな」
「こういうのに限ってドスケベなんだぜ」
「消太くんの部屋に似てる…落ち着く…」
「一人気に入ってるのがいるぞ」
「確かに相澤先生の部屋も何も無さそうだよな」
「次は一階上がって5F男子!」
「瀬呂からだ!」
「まじで全員やんのか…?」
「おお!!!」
「エイジアン!!」
「ステキー」
「瀬呂こういうのこだわる奴だったんだ」
「へっへっへギャップの男瀬呂くんだよ!」
瀬呂の部屋はアジアンデザインに統一された部屋でなかなか高評価を出して終わり、次は轟の部屋を見ることとなった。
それぞれが色々な期待を持ちながら轟の部屋に入ると皆が驚愕した表情へと変わった。
「和室だ!!」
「造りが違くね!?」
「実家が日本家屋だからよ、フローリングは落ち着かねぇ」
「理由はいいわ!当日即リフォームってどうやったんだおまえ!」
「………頑張った…」
「何だよこいつ!!」
「流石焦凍くん」
「大物になりそ」
「イケメンのやることは違えな」
男子最後は砂藤だったが轟の後では部屋はなんのインパクトも無く、オーブン等お菓子を作る物を除けばいたって普通の部屋ではあった…が、なにやら甘い香りがする事に尾白が気付きそれを聞くと砂藤は慌てた様子でオーブンからシフォンケーキを取り出した。
「シフォンケーキ焼いてたんだ!!皆食うかなと思ってよォ…ホイップがあるともっと美味いんだが………食う?」
「模範的意外な一面かよ!!」
「あんまぁい!フワッフワ!」
「瀬呂のギャップを軽く凌駕した」
「素敵なご趣味をお持ちですのね砂藤さん!今度私のお紅茶と合わせてみません!?」
「できたら私も作り方教わりたいなぁ…」
「オォこんな反応されるとは…まァ"個性"の訓練がてら作ったりすんだよ」
皆でシフォンケーキを頬張りながら次は女子部屋という事で一旦1階まで降りる事にしたが、しばらく「うまっ」という言葉が続いていた…。
所変わり女子塔3F…あまりノリ気ではない耳郎の部屋から見て回る事となった。
「まじで全員やるの…?大丈夫?」
「大丈夫でしょ多分」
「…………ハズいんだけど」
「思ってた以上にガッキガッキしてんな!?」
「耳郎ちゃんはロッキンガールなんだねえ!!」
「これ全部弾けるの!?」
「まァ一通りは…」
「女っ気のねえ部屋だ」
「ノン淑女☆」
耳郎の楽器だらけの部屋に先程自尊心を傷付けられたからかここぞとばかりに色々言ってきた上鳴と青山に耳郎は自身の"個性"で二人を攻撃しながら次を催すように動き始めた。
次は同じ階である葉隠だったが、耳郎とは逆にノリノリで部屋を見せた。
「どーだ!?」
「お…オオ」
「フツーに女子っぽい!ドキドキすんな」
可愛らしい柄のカーテンやベッド、そしてぬいぐるみ等が置かれた模範的な女子部屋…そんな部屋に一部男子達は入ってから少しソワソワした雰囲気になっていた。
峰田は寧ろ興奮したように葉隠の衣類等がしまわれているであろう引き出しに手をつけようとして怒られ、そして4階へと上がり今度は芦戸と麗日の部屋を見る事となった。
芦戸の部屋は豹柄等少し派手目な色や柄の物が多かったが、それでもそういった女子らしい部屋であり、また麗日もそれとは正反対に質素…というわけではないが、目立ったものも無い普通の女子部屋という感じの部屋であった。
「なんかこう…あまりにフツーにフツーのジョシ部屋見て回ってると背徳感出てくるね…」
「禁断の花園…」
5階に上がり尾白と常闇がそんな会話をしている中、蛙吹が居ない事に気付いた緑谷と瀬呂に、麗日が気分が悪いとの事を伝え、蛙吹を飛ばし、次は日詠の部屋を見る事となった。
「…私の部屋か……私の部屋なぁ…正直見せたくないなぁ…」
「怒木って相澤先生と暮らしてたんだろ?障子の部屋みたいに何も無かったりすんじゃね?」
「ありうる」
「怒木って物欲無さそうだもんな」
「君達本人の目の前で予想言い合わないでくれるかな…?」
渋々といった感じで"日詠"は部屋の扉を開けて部屋を見せると先程予想していた上鳴と峰田が驚いた顔をした…それもその筈、日詠の部屋は二人が予想していたよりも物が多く、モノクロを基準とした色合いで大人な雰囲気の豪華さを醸し出したクラシック部屋なのだ…。
「思ったよりゴチャゴチャしてる!!」
「クラシックー!!」
「落ち着いた雰囲気の良いお部屋ですわね!クラシック音楽もお聞きになられるのですか?」
「本読む時とかに流したりはするけど…」
「飯田くんの部屋並に難しそうな本並んどる」
「この家具高そうだけどいくらくらいだったの!?」
「え、殆ど作ったものだけど」
「お前も轟と同類か!!!」
恥ずかしそうにしながら質問に答える日詠の話を聞きながら轟はある物が隠されたように置かれている事に気がついたが、それを本人に聞く前に八百万の部屋に移動する事になり聞くタイミングを逃してしまった…。
「じゃ最後は八百万か!!」
「それが…私見当違いをしてしまいまして…皆さんの創意溢れるお部屋と比べて…少々手狭になってしまいましたの」
「でけ────!!狭!!どうした八百万!」
「私の使っていた家具なのですが…まさかお部屋の広さがこれだけだとは思っておらず…」
((((お嬢さまなんだね))))
八百万のお嬢さま部屋を見た所で全員の部屋を見終わり1階へ戻って投票をして結果発表をする事になったわけだが、芦戸によって発表された部屋王の名前は砂藤だった…勿論本人が一番驚いている。
「ちなみに全て女子票!理由は「ケーキ美味しかった」だそうです」
「部屋は!!」
そうして第一回部屋王が暫定1位が決定した事で解散する事となったが、轟は部屋に戻ろうとする日詠を呼び止めた。
「日詠」
「?どうしたの焦凍くん」
「………」
「焦凍くん…?」
「いや…おやすみ日詠」
「うん、おやすみ焦凍くん」
轟は先程部屋でみたある物の事を聞こうとしたが、あまり首を突っ込むものではないと判断して聞くことをやめたのだ…。
そして思い出すのは以前日詠が聞かせてくれた「いつか話してくれる事を信じる」という話だった…それを思い出し、轟は普通に寝る前の挨拶を交わすだけに終わらせた。
(俺も、日詠の事を信じているから…)
微笑んで手を振って部屋に戻る日詠を見送ってから自分も部屋に戻って寝ようと思ったが麗日によって呼び止められ、その後蛙吹の話や気持ちを聞く事になった…。
皆がそれぞれ不安を拭い去る為に頑張っていたこと、いつものヒーローを目指し切磋琢磨する日常を取り戻そうとしていた事をその日の夜、あの日あの場所へと行ってしまった5人はようやく理解することができたのだ。
「………」
その様子を影で見ていた者が一人…静かに踵を返してその場所を去りその間際さえ誰もその存在に気付かなかった…その者の表情は冷たいものではあったが口元は笑っていた…。
金に輝く瞳を一瞬だけ空へと向けるが、そのまま銀色の髪を揺らしながら寮の中へと入っていった……。
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