終わりからまた始まる
『皆さん長いことおつかれ様でした、これより発表を行いますが…その前に一言、採点方式についてです。我々ヒーロー公安委員会と
HUCの皆さんによる二重の減点方式であなた方を見させてもらいました…つまり…危機的状況でどれだけ間違いのない行動をとれたかを審査しています…とりあえず合格点の方は五十音順で名前が載っています、今の言葉を踏まえた上でご確認ください…』
話し終わると同時に目良の後ろに立つ大型のモニターが点き画面に名前が映し出される…二次試験まで通った受験者それぞれが自分の名前を探し大幅が喜ぶ者と落胆する者でその表情が分かれる。
A組の殆ども受かり安心と歓喜の表情を浮かべているが、爆豪と轟…A組のツートップの名前はそこには記されていなかった…。
「轟!!」
名前を呼び近付いてくる夜嵐としばらく視線を交わした後、夜嵐はこの式場で会った時と同じようにその頭上を地面に打ちつけるように強く深く頭を下げながら大きな声で謝罪の言葉を言った。
「あんたが合格逃したのは俺のせいだ!!俺の心の狭さの!!ごめん!!」
「…元々俺がまいた種だし…よせよ、お前が直球でぶつけてきて気付けた事もあるから」
そう、轟は夜嵐の言葉で体育祭から今までうやむやにしてきた事…これまでの過去と、エンデヴァーの息子だという事を…ヒーローを目指す上で背負っていかなくてはいけないものを忘れたままにしていく事などできないという事に気付かされた…それはきっとこの出会いが無ければ気付くことは無かったかもしれない大切なことなのだ…。
しかし愚行をしたという自覚がある分悔しさも強いだろう…神妙な空気がその場に流れた。
『えー全員ご確認いただけたでしょうか?続きましてプリントをお配りします、採点内容が詳しく記載されてますのでしっかり目を通しておいて下さい』
ボーダーラインは50点での減点形式での採点のことを再び説明し、どの行動が何点引かれたか等を記されたプリントが各々名前を呼ばれ一枚ずつ公安委員の人に配られていき、内容に目を通して反省点等を確認し、時には見せ合い話す等それぞれがそれぞれの反応をしている。
『合格した皆さんはこれから緊急時に限りヒーローと同等の権利を行使できる立場となります。すなわち
敵との戦闘・事件・事故からの救助など…ヒーローの指示がなくとも君たちの判断で動けるようになります』
しかしそれは行動一つ一つにより大きな社会的責任が生じるという事…。
犯罪の抑制になる程大きな存在であったオールマイトという偉大なヒーローが力尽き、心のブレーキが消え去った者が増えこの先必ず現れ均衡が崩れ世の中が大きく変化していく中、いずれは若い者が社会の中心となってくる日がやってくる…ヒーローとして、規範となって抑制できる存在とならなければならない事を目良が話す。
今回はあくまで
仮のヒーロー活動認可資格免許である…半人前程度に考え、各々の学舎で更なる精進に励んでもらいたいのだと言う。
『そして…えー、不合格となってしまった方々…点数が満たなかったからとしょげてる暇はありません、君たちにもまだチャンスは残っています…三ヶ月の特別講習を受講の後、個別テストで結果を出せば君たちにも仮免許を発行するつもりです』
「!?」
『今私が述べた"これから"に対応するにはより"質の高い"ヒーローがなるべく"多く"欲しい、一次はいわゆる"おとす試験"でしたが、選んだ100名はなるべく育てていきたいのです。そういうわけで全員を最後まで見ました…結果決して見込みがないわけではなく、むしろ至らぬ点を修正すれば合格者以上の実力者になる者ばかりです…学業との並行でかなり忙しくなるとは思います、次回4月の試験で再挑戦してもかまいませんが─────…』
「当然」
「お願いします!!」
彼らはまた一歩、ヒーローへと近付く…。
──仮免試験終了!!
「………」
発行された仮免許を静かに見つめてから日詠は静かにそれをしまって相澤の側に寄る…その顔は疲れからなのか、表情は無く相澤は労わるようにしがみついている日詠の頭を静かに撫でていた。
それを轟は離れた場所で叩かれた自分の頬を指で撫でて視線を落とし、その後すぐに夜嵐が轟の元に駆け寄ってきた。
「轟!!また講習で会うな!!けどな!正直まだ好かん!!先に謝っとく!!ごめん!!」
「どんな気遣いだよ」
「…こっちも、善処する」
それだけ言うとまた士傑の学生が揃う方へ駆けていく夜嵐の姿を見ながら轟は静かに返す…正直いざこざは治まったものの未だに轟の内には夜嵐が日詠に好意を伝えた事に多少の嫉妬を抱えているのだが──…。
様々な思いを抱えてそれぞれが来た時と同じようにバスに乗り、試験会場から離れ雄英への帰路を辿った。
雄英の寮に着くと皆が一旦部屋に戻り部屋着に着替えたり風呂に入り汗を流したり共同スペースで話しながらお茶や菓子を食し疲れを癒しリラックスする時間を過ごしていた。
「お疲れさま」
「っ……あ、あぁ…」
疲れを癒していたのはもちろん轟もだったのだが、突然話かけられビクリと体を震わせて返事をするとその反応に特に気にした様子もなく笑って離れていく姿を目で追った…そこには試験会場で見せたような無表情さは消えていて、いつものように笑っていた。
「あ、爆豪くん」
「──────…」
一瞬の間。
声をかけられた爆豪と、声をかけた相手を目で追っていた轟が動いたのは同時だった。
ダァンッと体を床に叩きつけられ腕を後ろに回され二人に押さえつけられる少女の姿をその場にいた皆が頭で理解するまでに少し時間がかかったが、それは一瞬で驚愕した様子で険しい表情で取り押さえている二人と驚いた表情を浮かべる少女を見て賑わっていた共同スペースの空間はただならぬ雰囲気に、ただただ静粛な空気に包まれたのだった───…。
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