日本支部

レモンタルトを二人で食べ終えたあと、三雲に「話がある」といわれたバーボンは彼女を助手席に乗せて愛車を使って町中を走行していた。
どこに行くかは全く告げられず、ただ彼女のナビを頼りに車を走らせる。

「次、右」

町の風景をジッと見ながらも目的地への指示はしっかり出してくれる。
バーボンはいつもと違う彼女の様子に困惑していた。
余りにも町のことを知りすぎている…。
まさかマフィアに連れ去られる前、彼女はここら辺に住んでいた…とか。
頭に浮かぶ予想を次々に否定するが、完全に否定できないでいた。
そんなバーボンをよそにだんだんと懐かしくなる風景に彼女は笑みを浮かべる。
都心である米花町から離れ、だんだんと高い建物がすくなってきた頃、彼女の指示が複雑になってきた。

「次は左、そのまま直線で二番目の信号を右」

この町…並盛町に来たことは殆どなく、バーボンはただ彼女の指示に従っていくだけだ。
そしてようやく目的地に着いたようで「停めて」という彼女の言葉であたりを見渡せば、"並盛神社"と書かれた神社があった。
その後は「ついてきて」という彼女の後を駐車場に車を停めついていく。
…その時どこか見覚えのある車が停まっていたことに気づかないふりをした。

階段を上り鳥居を潜ればそこそこの神社が建っていた。
彼女は左右にある阿吽の狛犬の石像をちょいちょいといじる。
一体何をしているんだ…そう思いながらその様子を見ていれば、いきなり賽銭箱がゴゴゴ…と音を立てて動く。

「!!??」
「さ、こっち」

驚き固まるバーボンの手を取って彼女はその出てきた階段に入っていく。
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中に入れば地下室にしてはあまりにも立派な建物だった。
そこはどこか基地に近いものだった。
黒の組織に入って長いがまさかこんなところに基地があるなんて…だが何故彼女が知っている?
ジンに教えてもらったのか…?否その可能性は低い。では一体ここは…。

バーボンが悶々と考え、警戒を強めているのを感じたのか少女は「フフ」と笑ってくるっと後ろをついてくるバーボンを見る。

「ここは黒の組織のアジトじゃないよ」
「…ではここは?」
「その説明は…」

そう言って彼女が立ち止まった場所には大きなエンブレムがあった。
真ん中に銃の弾があり、それを左右からライフルが上の方で交差し、その交差した中央には貝があった。
バーボンは瞬時にこのエンブレムを見て目を見開き、少女を見る。
そんなバーボンに笑みを浮かべ、ネックレスチェーンから橙色の石の付いたリングを指に通す。

「…我、全てに染まりそまりつつ、全てを飲み込み抱擁する大空なり」

そしていきなりそのリングからボゥとオレンジ色の炎が灯る。
そのリングを扉にかざせばゴゴゴ…という音と共に扉が開く。
余りにも信じられないことが起こるのでバーボンはぽかんと口を開けてその様子を見ているしかなかった。
そんな彼に飽きれ少女は青年の手を取って歩く。

「え?え?え?」
「混乱してるねぇ」
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しばらく歩いたあと、木製の扉の前で彼女は止まり、バーボンに入るように促す。
ここが何のアジトか分かってしまった以上彼は別の意味で緊張していた。
扉をノックすれば扉の向こうから若い青年の声が聞こえる。

「失礼します」
「あぁ、ようこそボンゴレ日本支部へ…降谷さん」

そう言ってきたのは己よりはるかに若いだろう青年だった。