死神の眼

「では姉さん」
「えぇ、まずはお二人とも混乱されていますね?」

そう尋ねれば二人は縦に頭を降る。
それもそうだ。
松田は別として降谷に至ってはいきなり裏と表…ともに世界に名を轟かせるボンゴレファミリーのアジトに何も知らされず連れてこられたのだから。
三雲は苦笑しながら「獄寺」と名を呼ぶ。
そうすれば銀髪の嵐の守護者である獄寺隼人が立ちあがり、説明を彼らに分かりやすく説明をする。

「…という訳で三雲さんは黒の組織に潜入していた」

獄寺の説明を受けて頭の切れる二人は納得した。
世界的犯罪者集団である黒の組織は本部のあるイタリアでも有名で、十代目ボスである綱吉の故郷、日本でもその犯罪は増えてきた。
そのためボンゴレも動くことになったが、組織に侵入するということはそれなりの力を持つものが行かなければ、その人の命もだが、ボンゴレやその傘下の者たちも危険にさらしてしまう。
門外顧問、ヴァリアー…ともに実力はあるが、いさかさ不安要素があった。
門外顧問は世界中を走り回っており、顔を知られていることが多い。ヴァリアーは根っからの人殺し集団。逆に組織にかなりの加担をすることになる。そこで白羽の矢が立ったのが守護者達だった。
だが、天候の名を持つ守護者はあくまでもボスである大空の守護者。
長期離すのはあまりよくないということで、実力もあり、次期門外顧問トップを務め(現在は父家光)、まだ世間に顔を乗せていない、ボスの姉である三雲が候補に挙がった。
彼女はボンゴレの開発メンバーが開発した「小さくなーる」を飲んで潜入することになった。
理由としては子供の方が警戒心が下がる上、うまくいけば中枢まで潜り込めるからだ。
「小さくなーる」の人体実験はされており、飲んだ時に40度近くまでの高熱が出ること以外の症状がないという画期的な薬だった。
それを飲み、更に開発局が開発した透視が可能になる特殊コンタクトを入れ、裏の世界に「透視能力を持つ子供がいる」と情報を流す。
そうすれば瞬く間に組織の耳に入り、霧の守護者である骸とその弟子のフランの幻術により存在しないファミリーを作り、組織に潜入させ、あとはバーボンこと降谷零が知っている流れとなったという訳だ。

「…ということは組織はこの世に存在しない敵を倒していたというのか…」
「えぇ…あとこれは三雲さんからの報告になるが、黒の組織の幹部、バーボン、貴方が公安だということ、安室透が偽名だということは、はすでに報告書により明らかになっている。
その他にもスコッチも同じ公安だということも」
「!!」
「他にも黒の組織にはFBIなどが潜入していることも」
「な、なぜ!?公安だということはスコッチ、そして同じ公安でも一部の者しかしらない事実…どこからか情報が漏れたというのか?いやだが…」
「ふ、降谷さん、それに関しては姉さんから説明が入りますので落ち着いて…」

綱吉の言葉に降谷は「すみません」と謝罪してから深呼吸をする。
そして一同の視線は彼女に向く。

「…まぁ私からの話を聞いても多分信じられないと思いますので…骸」
「「!!!」」

名前を呼ばれた骸はコクリと頷き、手元にあった三又に分かれた槍でトンっと床を叩く。
そうすれば骸の幻術ではあるが、降谷、松田の眼には信じられないものが映った。
前に座っている八人の頭の上にはその人物の名前と数字が浮かんでいた。
しかもその名前と数字は前後左右に動き、特に数字の方はカウントしているかのようにその数を減らしていく。

「これが私の見る世界…私にはその人が初めに付けられた名前とその人の残りの寿命が見えます」
「…ありえない」
「……ってことは、あの時はそれで病院を特定したってのか?」

松田の問いに彼女は頷く。

「あの時は松田さんが己を犠牲にしてまで爆弾のありかを探そうとしていました。
でもそれは少なくとも死者がでること。
だからあの時私は貴方の死へのカウントを止めなければならなかった。
貴方のカウントが止まらない限り、場所を突き止めることはできなかったから」
「…それで」
「…なるほど、松田のカウントを止めることによって、次に多くのカウントが同時にゼロになる場所を見つけたということですか」

降谷の答えに満足そうにうなずく。

「…同期の命を、都民の命を救ってくださり、ありがとうございます」
「…俺からもありがとうございます」

二人はその場で礼をする。
ボスである綱吉と三雲はフッと笑って頭を上げさせる。

「じゃ、ここからは僕からの話だよ」

そう言って挙手したのは並盛風紀財団のリーダーであり、雲の守護者の雲雀だった。