偽装

いきなり自分に向けていた拳銃が音もなく吹き飛ばされ、敵襲かと警戒した瞬間カンカンと音を立てて登ってくる音にライ…赤井と共に警戒すれば、先程と同じ方角からまたもや音もなく銃が放たれたようで登ってきた男が頭に衝撃を受けて倒れた。

余りのことに赤井とぽかんと顔を見合わせ、銃が放たれたところを見たがただ使われていないビルが立ち並ぶだけだった。

俺は助かったのか…そう思っていたが「あぁ生きてる」と赤井が言うため、声に出していたようだ。
その後、またもやカンカンと誰かが登ってくる音が聞こえたが、「スコッチ!!」とよく聞きなれた声に二人して安堵する。

「まったく!!本当に危なかったんですよ!!」

そう言ってすごい剣幕ではやし立てるのは、同期であり幼馴染の親友の降谷零だった。
本当にこの幼馴染には心配をかけたようだ。
そのあと何故二人で言い合いをしていたのか説明すれば、降谷は眉を下げ寂しそうにする。

「ってことだ…それをライ、赤井が教えてくれたんだ」
「…そういうことでしたか」
「あぁ、彼はFBIで保護「そこは任せて」は?」

突如聞こえた声に振り向けば、そこには良く知る少女の面影を残した女性が立っていた。
その横には不思議な髪をした男が三又の槍を持って立っていた。その姿はまるで執事とお嬢様のように見えた。

「スコッチ…否高野祐さん、そしてFBIの赤井秀一さん、こちらの姿では初めましてね」
「え…」
「おい、バーボン誰なんだ?」
「え?あぁ…三雲ですよ?」

何言ってんの?というような顔をしてそう言ってくる降谷に二人はぽかんと口を開ける。
そんな三人にクスクスと笑みを浮かべた女性はヒールの音を鳴らしながら近寄ってくる。

「透視能力を持った哀れな少女…改めて、沢田三雲といいます」
「…、六道骸と申します」

二人の紹介に開いた口が塞がらない二人だった。
そんな二人をよそにこれからのことを話す。

「今から高野祐さんには死んでもらいます」
「「「え…」」」
「死ぬと言っても本当に死ぬわけではありませんよ、組織を欺く為に世間も欺かなければなりません」
「大がかりな偽装でもするんですか?」

高野の言葉に彼女は左右に頭を振り、「骸」と名前を呼ぶ。
骸は面白そうにクフフフと笑いながらその槍をトンと地面に当てる。
そうすればどこからか現れた霧により、五人の目の前には心臓を打たれた高野の姿が現れた。

「「!!」」
「幻術です、骸の作る幻術は一般人には見抜けないでしょう」
「私の役目は"実態の掴めぬ幻影"を体現することが条件です…どうぞ触ってみてください」

「!!!」

赤井が恐る恐るそれに触れれば確かに存在する遺体のように冷たく、しかも血の部分はねちょりとした触感があった。
これには驚き固まる赤井。

「…これはすごいな」
「じゃ死体は確保できたということで…高野さん」
「はい」
「貴方はこれから骸と共に行ってもらいます。
勿論死んだことになりますので、自由な行動はあまりできないとおもってください…。
使っていた携帯は壊しますがよろしいですよね?」

それに異論はないようで高野は頷く。

「では、骸あとはツナに任せておいてください」
「はい、では高野さん行きましょう」

二人はカンカンと音を立てて階段を降りて行く。
「さて、では幻術解除しますか」そう呟いて藍色のリングを外せば、見慣れた少女の姿が現れた。
赤井は「これはこれは…」と小さく呟く。

「ふふ、不思議でしょう?薬の影響でまだ体が小さいままですが、本当の年齢は先程のですよ」
「ほー…君は一体何者だ?」
「それはノーコメントで」

ニッコリ笑って口元に人差し指をやる彼女はいたずらっ子のようだ。

「さ、私たちはこの事をジンにでも報告して、家に帰りましょう」

ニッと笑った少女を赤井はひょいっと抱き上げ階段を降りる。
それにぎゃんぎゃんと噛みつくのは相変わらずの降谷だった。

そして物語は彼女が組織を抜けてから動き出す。

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おまけ

骸によってとある施設に来た高野。
ここがどこなのか、彼女が一体何者なのかすべてを聞いて彼はここで生きることに同意した。
これから組織が壊滅するときまで三雲の部下となるようだ。
そんな説明を彼女の弟であるボスから聞き(まさかボンゴレファミリーのボスの姉だとは思わなかった)、三雲からプレゼントがあるといわれ、案内されたのは車庫。

「え、これ俺に?」
「えぇ、姉さんが高野…ゴホン、天野さんにと」
「まじで…?」
「伝言もありまして…私の部下となった以上そこら辺の車はダメです、とのことです…。本当申し訳ない」

高野祐改め天野一(アマノ ハジメ)、の目の前には日産GT-Rの横に真っ赤なフェラーリのF12があった。
誰でも憧れるフェラーリに乗れるとあっては彼も興奮を隠しきれなかった。
しかもここには高級車ばかりで、彼は暇を見つけると車庫に行き、車の整備をしたりしていたという。
その連絡を聞き、三雲は笑みを浮かべ、降谷は羨ましそうにしていたという。

「あれ高…天野へのプレゼントだったんですね」
「もちろん、私の部下ならそれなりの車に乗ってもらわないと…それに私お金全然減らないしさ…こういうことにしか使わないのよねぇ」

といいながら紅茶をすする彼女を改めてマフィアの一員だと感じた降谷だった。