婚約

「沢田三雲さん、俺と結婚を前提にお付き合いしてください」
「え?…えっと、はい」
「それは良かった」
「ふ降谷っ!?ってお嬢!?」
「…え?…え?え…えぇぇぇええええぇぇぇえええ!!!!!」

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綱吉の叫び声が響くほんの少し前…。
安室透こと降谷零はボンゴレアジトを案内されていた。
案内役はここを作ったというジャンニーニと、元同僚の高野こと天野だった。

なぜ案内をされているかというと…彼がアジトに着いた時、あの幼かった少女は今や本来の姿になり、幹部の話会いをしているとのことだった。
話会っている内容は不明だが、どうやらかなり深刻な話らしい。
ただ待つのはつまらないと感じた降谷は元同僚にダメもとでアジトを見てみたいと、頼んでみた。
するとまさかのOKが出る。
それに驚きつつもその申し出に甘えているのだ。

「にしても地下にこれほどの設備があるとは…」
「まぁ、ボンゴレだしな」
「アジトは並盛町程の広さがあります。
会議室やキッチンは勿論、トレーニングルームやそれぞれの部屋、特訓室などございます」

ジャンニーニの説明を受けながら降谷は彼女の正体を知ったあの時から懸念しているものをどうすればよいか考えた。
ボンゴレという組織は今見ている施設で考えても圧倒的な力を持った組織だ。自警団として活動し、今でも国に対して反乱などは起こしたことはないそうだ。例外として、国の独裁により民が苦しんでいた時は動くらしいが…。
だが、国を相手にすることができるほどの戦力、情報力を持っているボンゴレ。
彼らがいつ日本という国に牙を向くのか分からない。

そしてそれを俺達警察は…否公安は防げるのだろうか…。
現在は良い、同じ黒の組織壊滅を共にするのだから。
そして何より公安の高野を懐に入れている。

それらのことを考えていれば降谷は一つの策を思いついた。
そして話は冒頭に戻ったのだ。
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「け、けけけ結婚って!降谷さん本気ですか!!???ってか姉さんも!!」
「いいじゃない、というか結婚を前提に、の交際よ?」
「お、おい降谷…」
「勿論俺は本気ですよ、ボンゴレボス」

紅茶を飲もうとしていた彼女を弟の方は信じられないと掴み叫び、同僚は困惑気味に名前を呼んでくる。
ただリボーンだけがジッと降谷のことを見ていた。
降谷はもう後には引けない。
マフィアのボスの姉…彼女と結婚を前提に付き合うということは、己の身も裏の世界の住人となるということだ。だがファミリーの中枢人物と共にいることにより、その発言力は力を持つ。ましてや彼女は初代ボスの直系の子孫で、現ボスの姉だ。
そうしてでも策を練らなければ、日本に危機がせまるかもしれない。
しかも幸運なことに彼女はOKをしてくれた。なにより感の良い彼女のことだ、きっと自分が何故そのように言ったのかも理解しているのだろう。現に彼女は初めは慌てたものの現在はかなり落ち着いている。
逆に弟である綱吉の方が慌てている。