遺伝

そのあと警察が来て捜索が行われる。伴場に詰め寄る刑事が伴場のDNAと彼女の付け爪についていたDNAがほぼ一致したそうだ、と言葉をかけるが、伴場はやっていないと容疑を否定。
そんな時降谷…今は安室が言葉をかける。
その言葉に反応したのはサングラスをかけた男。

「愛しい女が誰かの物になってしまう前に殺したかったんじゃねぇのか?ウエイターさんよォ!」
「え?」

伴場が涙を耐えながら言葉を発する。

「こいつは初音と密会していた…愛人なんだよ!!」
「……」
「そ、そうなのかね!?」
「そりゃー会っていましたよ…僕はプライベートアイ、探偵ですからね」

目暮警部の言葉に彼は肯定を示し、そして自分が何者なのか明かす。

「それに僕には…三雲」

彼に呼ばれた彼女は変装の為付けていたウィッグとメガネを外す。
黒のウィッグと黒ぶちメガネから出てきたのはハニーブラウンの髪と橙に輝く瞳。その瞳を小さな少年から毛利、刑部、伴場達に向ける。
引き込まれそうな瞳に男たちの動きは固まる。
安室は傍に来た三雲の腰に手を回し近くに寄せる。

「婚約者がいますので」
「初めまして…安室透の婚約者、三雲です」

それからは三雲は、ただぼんやりと調査が続けられている爆破した車の方へ目線を向ける。
こう言った事件の解決は彼らに任せ、彼女は視界に入った子供の為にホットミルクを二つ作る。

「毛利蘭さん、であってますか?」
「え、はい。毛利蘭と言います…沢田さん、でしたよね?」
「えぇ、沢田三雲です…これをあの子と一緒にどうぞ」

そう言って先程作ったホットミルクを渡せば彼女は笑みを浮かべて受け取る。
蘭は難しそうな顔をしている子供にミルクを渡す。
そうすればお礼を言うためか、彼も蘭と共にこちらに近寄ってくる。

「お姉さんありがとう…僕、江戸川コナン」
「…私は沢田三雲よ」

三雲はコナンの頭の上に書かれている名前と本人が名乗った名前に目を細める。
頭の上に書かれているのは"工藤新一"。
かの有名な東の高校生探偵だ。
それは本当に急なことだった。
あれ程世間を騒がせていた彼が、ぱったりとテレビなどでその名を聞かなくなった頃、時をほぼ同じくして毛利小五郎の名前が有名になったことは…。

これは何かある、と感じた彼女はスッとその目を閉じた。
目は口程に物を言う…正しくこれで彼女はそれを隠すため瞼で覆う。
そんな彼女に気にした様子もなく、蘭がぽつりと言葉を漏らす。

「でも本当に…伴場さんがしたんですかね」
「…いえ、それは無いと思いますよ」
「え?」
「自殺、だと思うわ」

即座に否定した彼女に蘭は勿論コナンも驚いたように見てくる。

「まさか、結婚前日にそんなことって…」
「お姉さん、なんでそう思うの?」

ほら正しくこの子の眼もそうではないか…。
三雲は子供らしかぬ目をするコナンを横目で見る。

「感よ」
「「感?」」
「そ、私幼い頃から直感がすごくてね…マーク式のテストではほぼ百点しかとらないの」

クスクス笑いながらいう彼女に二人は毒気が抜かれたようにポカーンとした表情をする。

「ふふ、信じられないでしょ?」
「え、あの…」
「いいの、この直感が正しいことだと分かっているのは家族と…彼だけよ」

そう言って安室に視界を入れれば彼は三雲のもとに来る。

「三雲」
「…大丈夫よ」

安室は心配そうに彼女の顔を見る。恐らく彼女はほぼ真相に気づいている。
だからこんなに悲し気な表情をしている。
リボーンから聞く話によれば、彼女の超直感は歴代最高なものらしい。
彼女の直感はほぼ…99.9999999....の確立で当たるらしい。
安室もその超直感により、何度も助けられていた。

だが、事件解決に直感というモノは信じられないものだ。
それには根拠がないからだ。
だからこそ、安室は彼女の直感を信じ、調査をすることで何度も事件を解決することができているのだ。

三雲が犯人を知らせないということは自殺…ではなぜ自殺したのか…これは俺の仕事だ…そう思いながら三雲の頭を撫で、彼は刑事たちのいる場所に戻り、事件の真相を暴く。
そう、それが悲しい事実でも…。