あれから降谷こと安室は何か調べものをしているのか家に帰ってくるのが遅くなった。それに関して特に何も言うことなく、三雲自身もボンゴレの仕事をするべく行動していた。
安室が組織の一員であるとコナンは気づいている為、己のことも恐らく警戒しているだろう。…というかポアロ自体に足を運ばない可能性もある。…否逆に近づくのか?肝心な時に発揮しない超直感にうんざりしながら彼女はポアロに向かうべく町を歩いていた。
そんな時だった。目の前にPOLICEと書かれた独特の車が停まっていることに気づいた。
事件?そんなことを思いながらそこに近づけば、無造作にうねった独特の髪をし、サングラスをかけた男がいるではないか。

「あれ?松田さん?」
「んぁ?お、沢田さんじゃないか」

そう言って吸っていたタバコを口から外す松田。その指に挟まっているのは最近話題のアイコスだった。

「あれ?アイコスに変えたんですか?」
「まぁな、これなら周りに煙たがれる心配はないダロ?」

その言葉に確かにと頷く。獄寺もこれにすればいいのに…と考えて無理かと小さく呟く。
彼の起爆剤には火ダネは重要だ。

「何か事件でも?」
「あぁ、爆弾が仕掛けられているとの通報だったんだが…すでに解体終えた所だ」

その言葉に「成程」と返事をしてから、再度彼の姿を見て目を見開く。

「…配属先戻ったんですか?」
「あぁ、ようやくだ」
「それは…おめでとうございます」

三雲の言葉に「ありがとう」と返事をして、彼は爆弾の仕掛けられていた建物を見る。

「…萩原が生きていてくれていたことで、俺の中にあった闇は無くなった……。
あんたに助けてもらってからも、俺はどこかで萩原を殺した爆弾犯に執着していたんだろう。それでいつまでも一課から配属先を変えずにいたのかもしれない。
だがあいつも生きていていることを知れた…あとはあの爆弾犯を捕まえることだが…」

そう言って彼は目線を刑事たちがいる場所に移す。

「あの人たちに任せてもいいのかなって思ってな…」

そう言った松田の目はとても穏やかなモノだった。
そんな松田に駆け寄ってくる小さな影が…。

「松田さーん!!ちょっと聞きたいことが…って沢田さん!?」
「Ciao、コナン君」
「知り合いか?」
「ちょっとね…それより松田さん…」

松田を三雲から引きはがすように連れていってしまうコナン。これはなかなか警戒されているな…そう思いながらスマホを取り出しタップする。そしてスマホを見るふりをしてアサリにカメラモードにするように指示をすれば、自動的に無音のシャッターが切られ、江戸川コナン…基工藤新一の写真を撮ることに成功。

「それ三雲さんのスマホ?」

スマホをいじっていれば、下から声が聞こえる為下に視線を向ければ鋭い目をした名探偵がいた。
三雲のスマホは実はボンゴレカンパニーがあの有名なZONIと合同開発した非売品のスマホだ。デザインはXperiaXZだが、色はXperiaZ1で使われていた朝焼けをイメージして作られたパープルなのだ。

「そうだけど?」
「へー…初めてみたスマホだけど…特注?」

その言葉に笑みだけを浮かべ、彼の後ろにいる松田を見る。

「彼、借りていっても?」

松田は彼女の笑みを見て、苦笑しながら頷く。
コナンに視線を向ければ、ジッと探るように見てくる。
_____________

去っていく二人を松田はアイコスを咥えながら見ていた。
三雲のあの目、ボンゴレの名を掲げているときの目だった。普段軟らかく見えるオレンジが鋭く光る…そう猛禽類の瞳のように鋭くなる。あれは何かあるな…そう思いながら見ていれば後ろから声をかけられる。

「何々、松田君の彼女?」
「え、松田さんは沢田さんと付き合っていたんですか!?」

現れたのは佐藤と高木だった。

「沢田さん?あの女性の事よね?関係は?」
「え、あのえっと、ほらあの女性が爆死した時…」
「あぁ、あの時の…で?松田君彼女じゃないの?」
「…違う」
「えー違うのー?」
「てきりいい雰囲気だったから…」
「…彼女彼氏いますし、その彼氏俺の友人ですし…」

好き勝手に言ってくる佐藤、高木カップルに適度に返事を返せば、あれこれと説明をねだられる。…これだから一課の人間は…。そんなことを思いながら蒼い空に向かって煙を吐きかける松田だったのだ。