沢田三雲について

爆破事件を防ぎ、今回爆弾の解体をした松田さんを探せば、そこには最近知り合った女性がいた。二人は親し気に話していたが、今自分の中で危険度Maxの彼女と松田さんが関わりあうのはいけない。
自分でもわざとらしく松田さんを呼び、彼女の存在を今知った風に声をかければ彼女は「Ciao」とイタリア語であいさつをする。この人、見た目もそうだが純血の日本人ではないのかもしれない…。俺達が知り合いだということに松田さんは驚いたようにしていたが、自分の呼びかけに素直に動いてくれた。
爆弾の話を軽くして本題を問う。

「松田さんは沢田さんとどうやって知り合ったの?」
「あー…まぁ命の恩人なんだよな」
「え?」
「三年前に彼女にたまたま助けてもらってな…それから交流させてもらっているな」

そう言って沢田さんの方を見る松田さんにつられ彼女の方を見れば、スマホをいじっているようだった。
しかし己が知るスマホの機種とは違ったデザインに興味を持つ。松田さんもそれに気づいたのか「あのデザインどこのだ?」とボソッと呟く。

松田陣平、つい最近まで警視庁捜査一課強行犯三係に所属していたが、つい最近元の古巣である警備部機動部隊爆発処理班に戻った。手先が器用で細かい作業はお手の物。爆発処理班ではエースとして君臨しているという。
捜査一課時代は頭が切れる上にどこからか仕入れてくるのか、逃走した犯人の居場所を特定していることに特化していた。結構な秘密主義で己のこと、友人関係などは黙秘することが多い。

そんな彼が彼女と知り合い…ましてや命の恩人とは驚いた。
スマホをいじっている彼女に近づき声をかければスマホから視線を外してくれた。
スマホはZONIのXperiaXZに似ているが、色がない種類だ。XperiaZ1の紫色だがデザインが違う…。特注なのかと聞けば彼女はその橙色に輝く瞳を松田さんへと向ける。

「彼、借りていっても?」

松田さんは当たり前のように頷く。
俺は彼女の案内の元小さな喫茶店に向かうこととなった。
_____________

喫茶店に着けばそこはポアロと違った独特の雰囲気が流れていた。
店員は女性一人と男性二名、客はおらず彼女は迷うことなく奥の席に座る。
男のホールスタッフが飲み物を伺いに来れば、彼女はアイスコーヒーとローズヒップを頼む。
飲み物が到着すれば彼女はそれを一口飲んで口を開いた。

「さて、コナン君、私から質問いいかしら?」

…疑問で聞いておきながら否定することができない…。どんな質問が来るのか…そんなことを思いながら肯定すれば、己が考えていた質問とは全く違う質問…というより、確認するべきことを確認したような問いかけだった。

「その身体はアポトキシン4869の影響かしら?工藤新一君」

何故だ、どこで知られた…。そんなことを思い問えば彼女は様々な証拠をそろえてきた。
しかもロンドンの時の映像まで入手しているなんて…この人本当に何者だ…。
それを素直に聞けば、

「ただのずば抜けて感の良い、彼の婚約者よ」

との言葉…。
そんなの納得できるわけない…。そう思い質問しようとすればポケットから着信音。
断りを入れ、電話に出れば蘭から早く戻ってこいとの電話だった。

「あら、彼女から?」
「ばっ!!まだ、そんなんじゃねぇ!!」
「ふふ、まだね…告白はしたんでしょ?早くものにしないと奪われちゃうわよ?」

本当にこの人何なんだ…。どうせ質問しても「感」と言われるだけだろうな…。
荷物を準備しながら最後にひとつだけ質問をする。

「三雲さんは、敵?味方?」

「…そうね、味方と言いたいけど、それは時と場合…そしてそちらの考え次第かしら?
だけど、組織に関わっていることに関しては、灰原哀と貴方は私たちの保護対象よ」

そう言って紅茶を飲む彼女は、灰原…否宮野志保のことも知っているようだ。
まぁ薬のことを知っていればそうなんだろうな…。
本当に何者なんだ…そう思いながらも再度鳴り響く電話に急いで喫茶店を後にする。


結局彼女について分かったことといえば、
組織の書類を読むことが可能、薬のことを知っている、とんでもない情報網を持っている、一応味方だということ、そして俺と灰原は彼女にとって保護対象であること。
そして松田さんの命を救ったこと。

分からないことは、
組織の一員なのか、一員だとすればコードネームを持っているのか、もし組織の一員でなければどこの機関のNOCなのか、人物像としては全くの未知だ。
…赤井さんに聞いてみるか…。