取引相手

キッドを乗せたロードスターは人気のない埠頭でエンジンを止めた。

「さ、着きましたよ…おじさま」
「ぬふふふ〜最高だよ三雲ちゃ〜ん」

三雲が自身のかぶっていた帽子を外すと同時に、キッド…否、かの世界を股にかける大泥棒の三代目であるアルセーヌ・ルパンがいた。
ルパンはニシシと笑みを浮かべながら携帯を取り出す。それと同時に三雲も様々な機械が取り付けられたノートパソコンを取り出し、電源をつければ、画面には彼女が作った人口知能のアサリが画面に出てくる。

『こんばんはルパンくん、ずいぶんと派手なショーだったみたいだね』
「それが分かってんだったら面倒ねぇや…今すぐ起爆コードを解除しな」
『それは…できない』
「んだと?」
『女の為に本当にいうことを聞いてくれるのか、信じてもいいのかともね…』
「テストかよ」
『すまない…。ある男から君を推薦されたんだ。チェリーサファイアを盗めるのは、ルパン三世しかいない、とね』

ルパンのやり取りしている相手は、アランスミシーと呼ばれる男。勿論偽名だということは分かってはいる。アランスミシーはルパンの仲間である峰不二子を人質にし、ルパンに宝石を盗ませようとしているのだ。
…と言うのはルパンの考えたシナリオの一部。すでにこの男はルパンの手の平で踊らされている。ルパンを推薦したある男とは"ケインゲジダス"。彼は闇取引の仲介人として動いている…と言うのは建前でこれは次元大介だ。

ルパンがやり取りしている間、彼女達はパソコンを駆使して電波の発信源を探ろうとするが、世界地図が次から次へと発信源の場所が変わっていく。
電話をしながらこちらを見るルパンにお手上げだといわんばかりに左右に頭を振れば、ルパンも画面をみて頷く。

「ははっ、やめたためた、素直に認めるよ…ちゃ〜んとしなきゃ相手だってな…」

そう言っている間にバサッという音と共にライファーンが返ってくる。首元を撫でていたわれば、匣の中に吸い込まれるように消える。
それを確認してから三雲はエンジンを入れ、ロードスターを発進させる。
埠頭で釣りをしていた男のバケツに先程盗んだ宝石を投げ入れるルパン。
三雲はそれを確認してから車のスピードを上げるのだった。
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「ICPO?」

降谷は己の古巣である警察庁警備局警備企画課のとある一室で部下である風見からこれまでの報告を受けていた。

「えぇ、ICPOの中でもただ一人ルパン三世捜査官の銭形警部が近日中に来日し、日本の警察官の力を借りたいと…」
「…ルパンが?」

降谷がそう呟いた時だった。バタンと部屋の扉が開かれ、風見の部下が血相を変えてやってくるではないか。

「どうした?」
「たたた、大変ですっこれっ!!」

男が差し出した紙には今回の月島川で行われた作戦とその結果が書かれていた。降谷は瞬時にそれを読むと眉間に皺を寄せる。

「…今までキッドが銃を発砲したことはなかった…まさかルパン三世?」

降谷がボソッと呟いた言葉は見事に的中していたということは、次の日に届いた警視庁宛の手紙で分かったのだ。