ルパンと彼女

コナンは昨日、松田に阿笠博士の家に送ってもらった。勿論松田からは小言を少々貰ってたが…。
そしてそのまま博士の家で一晩過ごし、朝ニュースを見、ルパンの仲間である次元大介を発見した後、その足で毛利探偵事務所の下にある喫茶店ポアロに来ていた。そして何か知らないかと組織に潜入している公安警察である安室のもとにやってきたのだ。
安室こと降谷は先程からじーと見てくるコナンに居心地悪そうにしながらも彼の為にコーヒーを入れる。
そしてコーヒーをコトンと置き、コナンが一口飲んだあとにようやく口を開く。

「…ねぇ安室さん」
「なんだい?」
「ルパンに関して何か知らない?」
「、知らないなー」
「…嘘だね、一瞬間があったよ」

安室は"ルパン"と聞いて一瞬、本当に一瞬だけ眉をピクリと動かしてしまった。常人では気づかない程些細な動きだったが、そこに気づくのがこのコナンという少年だ。瞬時に何か知っていると気づいた時点でズイッと身体を前にやり、話をする体制に身体を整える。
それを横目で確認した安室は内心めんどくさいことになった、と溜息を吐きたくなった。

「……(言わない限りずっといそうだな…)コナンくんだから言うが、組織内で最近有名になった鉱石があるんだ」
「…鉱石?」
「あぁその鉱石はとある国でしかとることができない上、その国はその鉱石を必死に守っているらしい」
「…それって、まさかヴェスパニア鉱石?」

安室ですら数日前にベルモットから聞いた情報だというのに、何故コナンは知っているんだ…そう思ったのが表に出てたのか、コナンは「前ちょっと関わって」と苦笑交じりにいう。

「まぁ…そのヴェスパニア鉱石をルパンが狙っているという情報が公安に入ってきていてな。それだけじゃなくてもルパンの存在は国家に影響を及ぼすからね…今色々と動いているところなんだ」
「成程…そうなんだ」

この時降谷は一つだけ真実を隠した。
それはルパンがチェリーサファイアという宝石を狙っているということだ。宝石としての価値はあまりないチェリーサファイア…わざわざそれを狙うには必ず意味があるはずだ…否、時としておふざけがあるらしいが…。今回のルパンの行動全ての鍵を握っているのはこの宝石であろうと…。
それともう一つ、ICPOの銭形が来ているということはただの伝え忘れだ。
丁度話に区切りがついた時、コナンの携帯が着信を知らせる。見れば幼馴染の蘭からで、ご飯ができたから帰ってきなさい、という内容だった。コナンは電話を切ると安室に礼をいってポアロを後にすべくレジに向かう。

「あ、そうだ安室さん」
「ん?」
「沢田さんって鳥みたいなの飼ってる?白くてオレンジ色の瞳をして、その信じられないけど顔が犬みたいな翼を持った…」
「……いや、飼ってはいないな、だがそんな生き物いるのかい?」

コナンはその言葉を聞くと何かを考え「そっかー、僕の見間違いかもね。一瞬その瞳が沢田さんの目と似ていたから…ほら飼い主によく似るって言うでしょ?」と言って今度こそ「さよならー」と言ってポアロを出ていった。

「……飼ってはいないが、持ってはいるな」

誰もいなくなったレジ前で安室はそうボソッと呟いて、接客に戻った。
だが疑問が残る。コナンが言っていたのは確実に彼女の匣兵器ライファーンのことだ。何故彼女はあのコナンに対して匣兵器を見せたのだ?ましてやライファーンなど…この世にいない生き物など…。
安室は丁度休憩に入った為、スマホから彼女のスマホへと電話を掛ける。
自分に隠し事をしている三雲にはたっぷり説教を与えねばならない…勿論それを伝えなかった我が幼馴染の親友も…。
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ーピリリリ…

「おーい三雲ちゃーん、電話なってるぞー」
「はーい…げ」

ルパンの仮のアジトでお茶を入れていた彼女は電話相手を見て嫌な顔をする。ルパンはそんな様子が面白かったのかニヤニヤしながら電話の主を見ようとする。だがその前に彼女は部屋を出てしまったので確認出来ず仕舞いに終わった。

「なぁ、誰だと思う?」
「恐らく、降谷…/8ゼロでしょうね…」

茶菓子を準備していた天野は溜息を吐きながらそう呟く。それに対してルパンは素早く反応し、まさか、と呟く。

「まさかと思うけど…今回こっち側ってこと伝えてないノ?」
「…えぇ、知ると口うるさく突っ込んで、めんどくさくなるって…まぁそれは事実なんですが…」
「めんd……それってやばくない」
「……やばいでしょうね」

苦笑した天野の言葉の後に「ご、ごめんなさーいぃ!!」と大きな彼女の声が聞こえ、ルパン…否天野だけが最後に訪れるだろう我が幼馴染の…降谷の小言という名の説教がねちねちと長くなることを覚悟したのであった。
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ちなみに電話内容は…

「も、もしもし?」
『あぁ、三雲ですか?今どちらに?』
「うぇっと…今?」

ーあ、怒っている

瞬時に声だけでそれを感じ取った三雲は本来ならば出てこない、声が出てしまった。勿論それだけで彼女が答えを言ったようなものだ。「今はぁ〜…」と言い訳を考えている彼女の姿が電話越しでも見えたのだろう。降谷の眉間に皺がより、口角が上がる。いわゆる笑っているのに目が笑っていない状態だ。

『えぇ、今です。今、誰と、どこにいるんです?何を企んでいるんです?
あぁ、そうだそう言えば昨夜、あの怪盗キッドに扮したルパン三世がダイアを間違えて…いや、おふざけで盗すみ、コナン君遭遇した、と警視庁からも本人からも報告を受けています。
あぁ、その時白くて顔が犬で、瞳がオレンジの鳥を見たと教えてくれましたよ。コナン君が。
いや、何かの間違いだと思いましたよ、まさかレートならまだしも、この世にいないライファーンを一般市民に使ったなんて…きっとコナン君の見間違いで、僕の聞き間違いですよね?
まさかと思いますが今、昨夜怪盗キッドに扮したあの大怪盗、ルパン三世と一緒に行動を共にしているなんて…まさかと思いますが違いますよね?』
「うぁ…ご、ごめんなさーいぃ!!」

安室として動いている今だからこそ、口調は丁寧だが、それが逆に怖く、三雲はここが隠家だと分かっているが思わず大声で謝ったのだ。
そのあとブツッと音を立てて充電切れとなったスマホに三雲は冷や汗を流しながら見ていた。

ースマホを持つ手が震えていたなんて知らない…。それを見て天野さんとおじさまが憐みの目で見ていたなんて知らない…。

一方ポアロでは、突然電話を切られ、その後も連絡するがつながらない彼女に「そんなに説教してほしいのですね…いいでしょう」そう呟いた降谷がいたとか…。